ポルトガル

ポルトガルワインの特徴とは ~おすすめワイン、ぶどう品種、当たり年ヴィンテージなど、基本の基礎知識~

   

イベリア半島に位置し、スペインと国境を接するポルトガル。農業や水産業が盛んで、1人当たりの米の消費量はヨーロッパ最多。ぶどう栽培に関しては20世紀前半のサラザール独裁体制による影響で、250種にもおよぶ固有品種が発展したという特異な歴史を持つ。

ロワールも多様なため、国土全体で非常にバラエティのある多種多様なワインがつくられている。

主なワイン生産地はドウロ、ヴィーニョ・ヴェルデ、ダン、マデイラの4つの地域。ドウロ川地域・ポルトのポートワイン、マデイラ島のマデイラは、スペインのシェリーとあわせて、世界三大酒精強化ワインと呼ばれている。

2012年時点でぶどう耕作面積は約24万haで世界第7位、海外輸出量は世界10位だ。

単独品種によってつくられたワインは少なく、何種類かのぶどう品種をブレンドしたものがメインだ。約65%が日常消費用ワインである。

The Douro Valley

各地域で地域独自の品種を用いることもあり、地域ごとに個性的なワインが生産されている。固有品種は、代表的な熟成タイプのトウリガナショナルをはじめ、赤ではティンタ・ロリス、トウリガ・フランカ、ティンタ・バロッカ、白ではアルヴァリーニョ、ロウレイロ、トラジャドウラ、アザル・ブランコ、アリントなど多数ある。

ポルトガルは高温多湿で降雨量が多いが、太陽に恵まれ昼夜の温度差が大きく、自国品種を主として良質のぶどうが栽培されている。土壌は変化に富んでおり、北部と内陸部では主に花崗岩等、南部と海沿いでは石灰質や粘土、砂質土壌となる。そのほか沖積土や大理石土壌の場所もある。

アメリン&ウィンクラー博士によるワイン産地の気候区分によると、ポルトガルの最大の生産地ドウロはリージョン4に属し、日本の甲府やオーストラリアのアデレード、アルゼンチンのメンドーサなどと同じ区分である。

おすすめのポルトガルワイン

ポルトガルワインで押さえておきたいおすすめワイン/ワインジャンルは次のとおりだ。

・ポートワイン/北部デュリエンセ
ポートワインと一口に言ってもその内容はさまざま。大きく分けるとルビー・ポートとトウニー・ポート、ホワイト・ポートに分けられる。
ルビーは3年の樽熟成後に瓶詰される若いポート。瓶詰されてから長期間熟成されるヴィンテージ・ポートも含まれる。
トウニー・ポートは小さい樽で熟成させて化の進んだ状態で瓶詰めする。色が黄褐色=トウニーなのが特徴だ。
ホワイト・ポートは白ぶどうを低温発酵させ、長い発酵期間を経てスピリッツを追加し、アルコール度数を上げた辛口のポートワインだ。

・マデイラ/マデイラ諸島
ぶどうを収穫したあと、破砕し発酵させるタイミングでスピリッツを添加し酒精強化されたワイン。熟成過程では、カンテイロという太陽熱を利用した加熱熟成(主に長期熟成用)や、エストゥファという人工加熱方法(主に短期熟成用)が用いられる。
これらの酸化熟成工程を経たマデイラ酒は、その後の酸化が進まないため、風味が劣化しにくく長い間楽しむことができる。

・ドウロ/北部ドウロ
ポルトガル国内で最大のぶどう栽培面積を誇る生産地。この地はドウロ川の恩恵を得て涼しい風が吹き、優れた品質のぶどうを収穫できる。幻のポルトガルワインと言われる赤ワイン、バルカ・ヴェーリャもこの地方でつくられる。

・ヴィーニョ・ヴェルデ/北部ミーニョ
ヴィーニョ・ヴェルデ(緑のワイン)とは、若々しくさわやかなといったイメージの意味を持ち、有名なのは微発泡でアルコール度数の低い白ワインだ。
そのほか、このDOPではスパークリングワイン、しっかりした白、ロゼ、赤ワインまでいろいろなワインがつくられている。

Vineyard Sunset, Criacao Velha, Pico

注目のワイナリー

・レアル・コンパーニャ・ヴェーリャ
ポルトガル国内で最も歴史のあるつくり手。ドウロで最高の畑を持ち、ロイヤル・オポルトという名のポートのほかに、通常のスティルワインもつくっている。その歴史は260年以上にも及ぶが、度重なる技術革新、経営努力により、手掛けたワインがワイン・スペクテイター誌のランキング「Wine Spectator Top 100」2016年版で50位にランクインした。

・キンタ・ド・ポルタル
ドウロのつくり手で、今や最も注目され観光客も集まるワイナリーとなった。ボルドー出身の醸造家、パスカル・シャトネ氏の指導の下、世界的なコンクールで受賞を果たすワインを数多く生み出すようになった。モスカテルを使用したワインが有名。

・ソアリェイロ
アルヴァリーニョのトップ生産者として、ポルトガル中に名をとどろかせる生産者。その実力はワイン評論家のロバート・パーカー氏も認めるところであり、ポルトガルのベスト・ワイン&ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに輝いたこともある。サステイナブルな有機農法にこだわるつくり手でもある。

・アンセルモ・メンデス・ヴィーニョス
ヴィーニョ・ヴェルデの最先端のつくり手。ポルトガル最高のつくり手の1人とも称される。近代的な設備を積極的に採用し、革新的な醸造方法を試し続けている。ロウレイロやアルヴァリーニョを使用し、洗練とエレガンスが同居する味わいをつくり出す。

・ラモス・ピント
ポートワインのトップ生産者としてしばしば挙げられるラモス・ピント。設立は1880年と古く、ポートワイン醸造の礎を築いたと言われている。
現在はシャンパンメーカーのルイ・ロデレールがオーナーとなり、最新設備を導入して安定した生産を続けている。

Vinho Madeira - Ilha da Madeira - Portugal

主なぶどう品種

・ティンタ・ロリス(アラゴネス、テンプラニーリョ)(赤ワイン用/約1.8万ha)
・トウリガ・フランカ(赤ワイン用/約1.5万ha)
・カステラォン(赤ワイン用/約1.3万ha)
・フェルナォンピレス(マリア・ゴメス)(白ワイン用/約1.3万ha)
・トウリガ・ナショナル(赤ワイン用/約1.2万ha)
・トリンカデイラ(赤ワイン用/約1万ha)

Barco Rebelo

当たり年/ヴィンテージ

ロバート・パーカーのヴィンテージチャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは次のとおり。
北部 > ヴィンテージ・ポート2011年、2007年
(総評)
スコアの出ているヴィンテージ自体が少ないが、2000年代以降のほとんどの年が80点台後半~90点台前半という高評価を得ている。

Vinho Verde

格付け

ポルトガルは、世界で初の原産地呼称管理法を制定した国である。ポートについては1756年にすでに原産地呼称が制度化されていた。1986年以降はEUに加盟し、原産地呼称制度によって現在はDOP(原産地呼称ワイン)、IGP(地理的原産地表示ワイン)とその他のヴィーニョ・デ・メサ(テーブルワイン)に区分されている。
その他、伝統的表現として、諸条件を果たした場合「Reserva」との表記が可能だ。

#1

ワインの歴史

ポルトガルは、ヨーロッパでも最も長いワイン生産の歴史を持つ国の一つである。ワインの歴史は紀元前6世紀頃まで遡る。フェニキア人によってブドウ栽培が始められ、ローマ時代にはローマへワインを輸出していた。

8世紀から11世紀まではイスラム支配により一時停滞するが、キリスト教徒が領土を回復してから再びワイン造りが復興した。

12世紀にスペインから独立してからもワイン造りは行われ、イギリスに多く輸出される。伝統的な栽培法や醸造法をもとに近代的醸造技術を採り入れ、銘酒ポルトや緑のワインと呼ばれるヴィーニョ・ヴェルデなど、ポルトガル固有のワインをつくりあげてきた。

ポルトガルワインは日本との関わりが深く、16世紀の半ばに戦国時代の武将も珍重したと言われる日本に初めて伝えられた葡萄酒「珍陀酒」(ちんたしゅ)もポルトガルの赤ワインで、赤を意味する「ティント」が「珍陀」と伝わったという説がある。

Cantina e Casa Strapazzon

17世紀にはマデイラワイン、その後、ポートワインが登場。イギリスとフランスの戦争状態により、より多くのワインがイギリスに輸出され、ポートはイギリスのワインと呼ばれるようにすらなったという。19世紀の後半には、フィロキセラの被害から逃れてきたボルドーの醸造家によって、さらにポルトガルのワイン生産は発展した。彼らが訪れたダン地方は、現在も主要生産地に数えられる。

1932年よりアントニオ・サラザールによる独裁体制が始まり、ポルトガルは鎖国に近い状態となった。それまで多く輸出されていたワインは国内用となり、生産量も落ち、生産技術も他国より劣るようになった。反面、この時期に外国品種が持ち込まれなかったため、多くの固有品種が生き残り、今のポルトガルワインの多様さに結びついている。

1986年のEU加盟後、ワイン産業は急速な投資等を受け、品質が急上昇した。また、ワイン生産にちなんだ二つの世界遺産(「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」と「ピコ島のぶどう畑文化の景観」)を持つ。

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