コラム

日本とは共通点がある――ブルゴーニュ・ネゴシアン連盟会長が語ったクリマの意味、ボルドーとの違い

   

「ブルゴーニュのクリマ、テロワールの究極の表現」というテイスティングイベントが2018年6月、東京都・港区の八芳園にて開催された。

プレゼンテーションに登壇したのは、ブルゴーニュ・ネゴシアン連盟(FNEB)の代表であり、ルイ・マックスの社長を務めるジャン=フランソワ・ジョリエット氏だ。

フランス語には「クリマ」という言葉がある。通常は「天候」を意味するが、ブルゴーニュではどんな意味合いを持つのだろうか。そして日本とブルゴーニュとの共通点について、ジョリエット氏が語った内容を紹介していこう。

(C) BIVB / Hisai Kobayashi

ブルゴーニュにとって「クリマ」とは

「クリマ」という言葉はブルゴーニュにおいて、「細分化されたぶどう畑の区画」という意味で使われることが多い。ブルゴーニュでは2000年前からワインがつくられ、クリマの概念は歴史的・必然的に出てきたものだという。

「ブルゴーニュに来たら、まず自転車を借りてみてください」とジョリエット氏は語る。土地の起伏を体感できて、少し自転車で走るだけでクリマが変わっていくのを実感できるそうだ。

クリマには地理的な意味合いだけではなく、「遺産」という側面もある。

ブルゴーニュの祖先たちは、長い歴史の中で修道院や道などの建造物を作り、それがすべて遺産となっている。クリマの名前には、その土地の遺産などの人間の営みにかかわるすべてのものが反映されているそうだ。その地で生きてきた人間の営みも、クリマを知る上では無視できない要因なのだ。

「風土」「気候」「土壌」など、ぶどう畑を取り巻くすべての自然環境の個性・特徴のことを指すワイン用語として「テロワール」がある。本イベントのタイトルにもなっているように、クリマは「テロワールの究極の表現」なのだとジョリエット氏は説明する。

「クリマがワインをつくっているのではなく、歴史やワインがクリマをつくり上げています」(ジョリエット氏)

(C) BIVB / Hisai Kobayashi

職人がつくり出すブルゴーニュワイン

ワインの銘醸地としてボルドーと並び称されることの多いブルゴーニュだが、ワインづくりのやり方には大きな差がある。

ボルドーワインとブルゴーニュワインの違いとして、ボルドーは複数の品種をブレンドしたワインが多い点が挙げられる。一方、ブルゴーニュは白ワインならシャルドネ、赤ワインならピノ・ノワールのみでつくられたものが多い。

またボルドーでは、シャトーのオーナーがヴィンテージごとに、自分でブレンドする品種や比率を決めていく。海外などに行っても、地域の話ではなく自分のシャトーの話をするなど、シャトーが独立してワインをつくっている。

一方のブルゴーニュでは、同じ村で同じぶどう品種を栽培し、クリマ単位で複数の生産者が一緒に仕事をすることが当たり前のことになっている。大手でも小さな生産者でも、「親の代やその前の代から一緒に畑仕事をしている隣人」という意識が強いそうだ。

ブルゴーニュにおいて、ワインの違いをつくり出すのは“人の手間暇”なのだという。「どのように醸造し、熟成していくか」と突き詰めていくブルゴーニュのワインづくりを、「職人技」とジョリエット氏は表現する。

そんな職人技で生産されるワインはごく少量。それぞれのクリマで、少量のワインをつくっているブルゴーニュは「銀行家にとっては魅力的ではない」とジョリエット氏は語る。

一方、「職人技でつくられた高級品が好きな愛好家にとっては、夢の場所です」と自信を示している。

ブルゴーニュと日本の共通点

ジョリエット氏は、ブルゴーニュと日本には共通点があると感じているそうだ。

例えば、高級なものの中に文化を見出す感覚が日本人にはあるという。また、歴史も長くて文化も豊か。長年続く伝統芸術もたくさんあり、それらを保存し、引き継ぎ、新しい世代に伝えてきた。そうしたところも日本とブルゴーニュの共通点であり、お互いに親近感を持てる点なのだという。

今回のテイスティングイベントは、日本の伝統芸術である華道とコラボしたものだ。

(C) BIVB / Hisai Kobayashi



華道はその土地や植物の与えてくれる美しさやミステリーを追求し、何世紀にもわたって豊かになってきた芸術。華道とコラボしたイベントを企画した理由として、「ワインと華道は、どちらも自然が人間のクリエーションに与える最高のものだから」とジョリエット氏は説明している。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ