コラム

ワインのプロ“メルシャンおもてなしガイド”がご案内! 見学もテイスティングも楽しめるワイナリーツアーとは

「シャトー・メルシャン」と言えば、誰もが知っている日本の大手ワインメーカーだ。高品質の日本ワインなどを手掛けており、アジアワインに特化した品質評価サイト「Asian Wine Review(アジア・ワイン・レビュー)」では、2016年・2019年に「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。

ワイナリーのある山梨県、長野県だけではなく、秋田県や福島県で栽培したぶどうでワインづくりを行っているが、山梨県勝沼はシャトー・メルシャンの源流である大日本山梨葡萄酒会社が設立された土地。創業の地にある「勝沼ワイナリー」では、2018年6月よりワイナリーツアーの内容を刷新し、「勝沼スタンダードコース ~体験!シャトー・メルシャン~」「勝沼プレミアムコース ~探求!シャトー・メルシャン~」の2つのコースをスタートした。

今回は、1日6人限定のプレミアムコースを紹介したい。

5カ所のツアー限定公開場所を巡る「勝沼プレミアムコース」

勝沼プレミアムコースは、土日・祝日を中心に1日1回、14時から開催されているコースとなる。ツアー定員も6人と少なく、ガイドにも気軽に質問がしやすい雰囲気だ。コミュニケーションを取りながら、シャトー・メルシャンのこだわりや魅力を知ることができる。

開催時間:13:00~14:30(土日祝、一部平日も開催)
*開催日時の詳細は、1カ月前よりHP(http://www.chateaumercian.com/winery/index.html)で公開される。
所要時間:約90分
定員:6人
予約:必要
参加費:3000円(税込)

ガイドを務めるのはMOGのメンバー

ワイナリーツアーのガイドを担当してくれるのは、メルシャンで醸造や営業のキャリアを積んだ「MOG」と呼ばれるメンバーだ。長年、メルシャンのワインづくりに関わっているため、説明も細部にわたっていて分かりやすく、経験に基づいた興味深いエピソードを聞くことができる。

この日ガイドをしてくれたのは、ビジターセンターの上田敦史さん

MOGとは、「メルシャンおもてなしガイド(Mercian O・mo・te・na・shi Guides)」の略だが、メンバーが男性ばかりなので、社内では「メルシャンおっさん軍団じゃないか」と言われるそうだ。9月21日オープンの椀子ワイナリーでは、女性のMOGも活躍するという。

メンバーはワイン関連資格を持つプロ集団だが、それぞれ違った経験を積んだ人たちなので、同じコースでも、ガイドによってまた違う発見が得られるのではないかと感じられた。

ビジターセンターからスタート

ツアーは、受付場所でもあるビジターセンターからスタート。

一見、工事中のように見えるが、実は狙ったデザインなのだそうだ

まずは、ビデオでシャトー・メルシャンの歴史やビジョンについて学ぶ。その後、ツアー限定公開の地下セラー(樽庫)へと進む。以前はガラス越しにしか見られなかった場所だが、現在は中まで入ることができる。

樽が保存されている環境を、香りなど五感を使って体験しながら、樽に使われているオークについて、樽が味にどんな影響を及ぼすのか、なぜ樽の外にワインの染みが付くのかなどを学ぶ。

プレミアムコース限定公開の醸造所施設へ

次に立ち寄るのが、プレミアムコース限定公開の醸造所施設だ。

選果が行われるレセプション(仕込み場)

レセプションには少し高い位置に見学台が設置されており、仕込み作業の邪魔にならず安全に選果の様子を見学することができる。

さまざまな大きさのタンクが並ぶセラーには、AセラーとBセラーがある。一言にタンクと言っても、形状や大きさ、材質が異なっている

その後の2つのセラー見学を通して、シャトー・メルシャンのこだわりだけではなく、ワインがつくられる過程を、現場で説明を聞きながら知ることができる。

シャトー・メルシャンでは、「シュール・リー製法」を甲州種に取り入れて、“辛口の甲州”の歴史をスタートさせた。シュール・リー製法は、フランスのロワール地方でミュスカデ種に使われていた製法で、発酵後に澱(おり)引きをせずに、澱のうま味成分をワインに与えるのが特徴だ。

さらにシャトー・メルシャンは、そのノウハウを近隣のワイナリーに公開し、勝沼のワイン産業の発展に貢献したそうだ。「近隣のワイナリーから、“お人よしのメルシャン”と呼ばれることがある」というエピソードは、MOGからではないとなかなか聞けない話だろう。

ヴィンヤードを抜ける風を体感

続いて訪れるのは、ツアー限定公開の祝村ヴィンヤードだ。ここで栽培されたぶどうからは、年間約200本のワインがつくられ、ワインギャラリーで限定販売されている。ビジターセンターや醸造所がある場所よりも少し高台にあることを、途中の急な坂で実感できるのも楽しい。

祝村ヴィンヤードは、ヨーロッパでは一般的だが、湿気の多い日本ではあまり行われていない垣根栽培をしている。午後になると、爽やかな風が吹き込むのが特徴とのこと。その風も体感できた。

6種類のワインをテイスティング

祝村ヴィンヤードを見学した後には、隣接するワインギャラリーへ。ここでは6種類のワインテイスティングが待っている。

筆者が訪れた2019年6月には、下記の6種類がテイスティングで提供されていた。

・シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ(白)
・シャトー・メルシャン 甲州グリ・ド・グリ(白)
・シャトー・メルシャン 長野シャルドネ アンウッデッド(白)
・シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RGC 千曲川左岸収穫(白)
・シャトー・メルシャン 穂坂マスカット・ベーリーA(赤)
・シャトー・メルシャン 椀子メルロー(赤)

色・香り・味わいの楽しみ方、産地の特徴やこだわりポイントをじっくりと解説してもらえる。また、1人1台タブレットが支給され、おすすめ料理や産地の詳細などを確認することも可能だ。

ワインは1本2000円代~7000円代のものが用意されている。プレミアムコースはスタンダードコースよりも参加費が高いが、この6種類を飲み比べられるのは、なかなかのぜいたくだ。

また、テイスティングワイン「甲州きいろ香 キュヴェ・ウエノ」の名前の由来にもなっている元工場長の上野昇氏も、MOGとしてガイドをすることがあるという。ワインを誕生させた本人から、話を聞けるかもしれない。

テイスティングを行うワインギャラリーには、ショップとカフェが併設されている。店内だけではなく、屋外のテーブルも利用でき、思い思いの場所でワインに合うおつまみや軽食と共に、ワインの飲み比べセット(有料)などを楽しむことができる。

「スタンダードコース」との違い

ワイナリーツアーには、約60分の勝沼スタンダードコースも設定されている。

開催時間:10:30~11:30(定休日・休業日を除く毎日)
13:00~14:00(土日祝)
*開催日時の詳細は、1カ月前よりHP(http://www.chateaumercian.com/winery/index.html)で公開される。
所要時間:約60分
定員:10人
予約:必要
参加費:1000円(税込)

プレミアムコースとの大きな違いは、醸造所施設の見学は含まれていないところだ。また、テイスティングも下記の3種類となる。

・シャトー・メルシャン 萌黄(白)
・シャトー・メルシャン ももいろ(ロゼ)
・シャトー・メルシャン 藍茜(赤)

ワインギャラリーで気軽に楽しむことも

もしワイナリー見学に申し込めなかったとしても、予約不要で楽しめるのが、ショップとカフェを併設したワインギャラリーだ。

敷地内には無料のワイン資料館があり、9:30~16:30までの間なら自由に見学できる。建物はかつて宮崎第二醸造所として使われていたもので、現存する日本最古の木造ワイン醸造所だ。山梨県指定有形文化財や経済産業省近代化産業遺産に指定されている。

昔の醸造器具やラベル、ボトルが時代によってどう変わってきたかを見ることができ、地下の貯蔵庫では、ひんやりとした涼しさを体感できる。

シャトー・メルシャンの勝沼ワイナリーを訪れてからは、「大企業メルシャンのワイナリーが勝沼にある」というイメージから、「勝沼のワイナリーが大きく成長した」というイメージに変わった。

ほんの少しでも「シャトー・メルシャンのワインが好きだな」と感じている人は、ぜひワイナリー、そして勝沼に足を運んでほしい。今までよりも、もっとシャトー・メルシャンのワインが愛おしく思えるようになるはずだ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ