コラム

カリフォルニアワインの“今”を感じるワイン――新世代の「ニュー・カリフォルニア」とは?

カリフォルニアワイン協会日本事務所は、カリフォルニアワインの魅力を分かりやすく伝える特別講座「カリフォルニアワインの今を知る」(全4回)を2019年2月~5月に開催した。

第1回~3回の講座では、カリフォルニアで注目を集めるワイン用ぶどう品種の特徴や、ワインづくりの歴史などを振り返ってきた。最終回となった第4回の講座では、カリフォルニアが高品質のワイン産地として世界に認識された「パリスの審判」から、カリフォルニアワインの新潮流「ニュー・カリフォルニア」について、6種類のワインのテイスティングとともに講師の松木リエさんが解説。今回は、その内容を紹介する。

禁酒法廃止から急速に復活したカリフォルニアワイン

1900年初頭には世界中に輸出されて繁栄していたアメリカワインだが、1920年にアルコール飲料の製造・販売などを禁止した禁酒法が施行されると、暗黒の時代を迎えることとなる。宗教で使用するワインやジュースのためのぶどう栽培は認められていたものの、カリフォルニアワインの生産は94% も減少した。

1933年にようやく禁酒法が廃止となり、ワインの製造や販売が再開されると、今では世界最大規模の販売数を誇る家族経営ワイナリー「E.&J. ガロ」など、多くのワイナリーが立ち上がった。

翌1934年にはワイン・インスティテュート(カリフォルニアワイン協会)が設立され、ワインをつくる環境が整えられた。また、1935年にはカリフォルニア大学バークレー校とデイビス校が再建され 、ぶどう栽培や醸造に関わる研究と教育を主導するようになった。有名なワイン産地には、必ずと言っていいほど、ぶどうに関する権威ある大学が存在しているが、カリフォルニアにも世界トップクラスの教育機関が誕生したのだ。

また、禁酒法廃止後に、カリフォルニアでは必ず耳にする著名な醸造家であり、ワインコンサルタントのアンドレ・チェリチェフ氏が、ナパ・ヴァレーの「ボーリュー・ヴィンヤーズ」に加わった。チェリチェフ氏は醸造家として名だたる賞をいくつも受賞しており、“カリフォルニアワインの父”と呼ばれる人物のひとりだ。同様に、カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィ氏にとっては、師匠のような存在だという。

そのロバート・モンダヴィ氏が、ナパ・ヴァレーにワイナリーを設立したのは1966年のこと。1960年代~70年代にかけては、「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」をはじめとする多くのワインメーカーとぶどう生産者がカリフォルニアにワイナリーを設立していった。

「パリスの審判」で認められたカリフォルニアワインの品質

白・赤ともフランスワインに圧勝

カリフォルニアワインの歴史を語る上で外せない出来事が、1976年のパリスの審判だ。当時はまだ認識されていなかったカリフォルニアワインの質の高さを、世界が知るきっかけとなった。

1976年はアメリカ建国200周年ということもあり、フランスの銘醸ワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティングが行われることとなった。この時にはまだ誰も、カリフォルニアワインが圧勝するとは思ってはいなかった。

フランスの名だたる三ツ星レストランのオーナーやシェフ、フランスを代表するワイナリーのオーナーなどが審査に加わり、ブラインドテイスティングが行われた。

その結果、白ワインで1位となったのは、カリフォルニアの「シャトー・モンテレーナ シャルドネ1973」だった。上位10位内には、6本のカリフォルニアワインが入った。

1位:Château Montelena Chardonnay 1973 アメリカ
2位:Meursault Charmes Roulot 1973 フランス
3位:Chalone Vineyard Chardonnay 1974 アメリカ
4位:Spring Mountain Chardonnay 1973 アメリカ
5位:Beaune Clos des Mouches Joseph Drouhin 1973 フランス
6位:Freemark Abbey Winery Chardonnay 1972 アメリカ
7位:Batard-Montrachet Ramonet-Prudhon 1973 フランス
8位:Puligny-Montrachet Les Pucelles Domaine Leflaive 1972 フランス
9位:Veedercrest Vineyards Chardonnay 1972 アメリカ
10位:David Bruce Winery Chardonnay 1973 アメリカ

赤ワインでは、アンドレ・チェリチェフ氏がコンサルタントをしていた「スタッグス・リープ ワインセラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン1973」が1位となり、上位10位内に6本のカリフォルニアワインが入った。

1位:Stag’s Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon 1973 アメリカ
2位:Château Mouton-Rothschild 1970 フランス
3位:Château Montrose 1970 フランス
4位:Château Haut-Brion 1970 フランス
5位:Ridge Cabernet Sauvignon Monte Bello 1971 アメリカ
6位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
7位:Mayacamas Cabernet Sauvignon 1971 アメリカ
8位:Clos Du Val Cabernet Sauvignon 1972 アメリカ
9位:Heitz Wine Cellars Cabernet Sauvignon Martha’s Vineyard 1970 アメリカ
10位:Freemark Abbey Cabernet Sauvignon 1969 アメリカ

このパリスの審判は、アメリカの『TIME』誌に取り上げられ、センセーショナルなニュースとして世界中を駆け巡った。

カリフォルニアワインに軍配が上がったリベンジマッチ

赤ワインで1位となった「スタッグス・リープ・ワイナリー」のワインは、植樹して3年目のぶどうが使用されていた。当時のカリフォルニアワインは、ほとんどが若い樹から収穫されたぶどうでつくられていた。「若い樹の方がいいぶどうをつける」という栽培家の見解や「若いワインの方がいい」「熟成させたらボルドーの方がいい」などの意見もあり、10年後の1986年にリベンジマッチが行われることに。1976年と同じヴィンテージの赤ワインを持ち寄り、熟成がうまくいっているか、将来性を備えているかが審査された。

その結果、再びカリフォルニアワインが高い評価を受けることとなった。

1位:Clos Du Val 1972 アメリカ
2位:Ridge Monte Bello 1971 アメリカ
3位:Château Montrose 1970 フランス
4位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
5位:Château Mouton Rothschild 1970 フランス
6位:Stag’s Leap Wine Cellars 1973 アメリカ
7位:Heitz Wine Cellars Martha’s Vineyard 1970 アメリカ
8位:Mayacamas Vineyards 1971 アメリカ
9位:Château Haut-Brion 1970 フランス

さらに、2006年に行われたロンドンでの再々戦でも、カリフォルニアワインが1位~5位までを占めた。

1位:Ridge Monte Bello 1971 アメリカ
2位:Stag’s Leap Wine Cellars 1973 アメリカ
3位(同率):Heitz Wine Cellars Martha’s Vineyard’ 1970 アメリカ
3位(同率):Mayacamas 1971 アメリカ
5位:Clos Du Val 1972 アメリカ
6位:Château Mouton-Rothschild 1970 フランス
7位:Château Montrose 1970 フランス
8位:Château Haut-Brion 1970 フランス
9位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
10位:Freemark Abbey 1969 アメリカ

「パーカーポイント」の影響と脱却

1990年代~2000年代にかけては、「パーカーポイント」がワインやそのつくり方にまで影響を与えるようになった。

パーカーポイントとは、1978年に『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』を創刊したワイン評論家のロバート・パーカー氏によるワインの評価方法だ。100点満点で評価されるが、パーカーポイントで優秀とされる85点を超えるワインは、全体の1%ほどだとされている。

採点基準は下記の通り。評価に値するワインに選ばれると基礎点の50点が与えられ、その他の加点との合計がそのワインのパーカーポイントとなる。

【採点基準】
基礎点50点
色調:5点
香り:15点
味わい:20点
品質/将来性:10点

採点基準に「将来性」が入っている点が、コンクールなどでの採点と大きく異なっている。コンクールではその時の味で採点されるので、1時間後や数年後は考えない。将来性を採点基準にすると、どうしても風味や香りが強く、凝縮感がある濃いワインに高い点数が付きがちだ。そのため、安易にパーカーポイントで高い点数を取ろうと考えると、新樽をより多く使い、より長く樽熟成し、より凝縮感のある果実を使う……というワインのつくり方になる。

そんなパーカーポイントを意識したワインづくりに異を唱えたのが、『サンフランシスコ・クロニクル(San Francisco Chronicle)』の元ワイン担当編集長ジョン・ボネ氏だ。“畑からテーブルへ”をスローガンに、良いぶどうをつくり、それが飲む人のテーブルに上がるようなワインをつくる、というカリフォルニアワインの原点回帰を目指す取り組みを行っている。

2013年には、『ザ・ニュー・カリフォルニア・ワイン(The New California Wine)』を刊行。よりエレガントなワインやよりナチュラル、ハンズフリーなワインづくりを目指す新しい世代の生産者を紹介している。

こうした流れを受けて、近年ではテロワールを重視しながらも、「カリフォルニアの恵まれた気候を生かしたワイン」「入植時代からの品種や古樹のぶどうからつくるワイン」「パーカー系でもニュー・カリフォルニアでもない、新たなスタイルのワイン」の3つのスタイルが誕生した。

“今”を感じる6本のカリフォルニアワイン

同講座では、カリフォルニアワインの“今”を実感できる、6本のカリフォルニアワインのテイスティングが行われた。

グロリア・フェラー ソノマ・ブリュット

品種:ピノ・ノワール91%、シャルドネ9%
アルコール度数:12.5%
AVA:ソノマ・カウンティ
参考価格:2180円(税別)

カリフォルニアのスパークリング・ワインは、何といってもコスパの良さが魅力だ。ソノマ・カウンティは、スパークリング・ワインの重要な産地のひとつ。この地では、多くがシャンパーニュと同じように瓶内二次発酵を行っている。松木講師は、「良いことがあったけど、シャンパンは高い……という時には、ぜひソノマのスパークリングを手に取ってみてほしい」と言う。

「グロリア・フェラー ソノマ・ブリュット」で使用するぶどうは、主にソノマ・カウンティの一番南にあるロス・カーネロスの自社畑で栽培されたものだ。ソノマ・カウンティはサン・パブロ湾の北側に広がるエリアで、大西洋で生まれた霧はサン・パブロ湾に引き込まれ、山脈と山脈の谷間を南から北へ駆け巡るため、南の方が冷涼となる。

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また、シャンパーニュと同様に手摘みで収穫され、茎と一緒に搾汁をしている。茎が入っていることで果汁を優しく搾れるため、皮に色が付いているピノ・ノワールを91%使用しているにもかかわらず、ピンクがかったクリアなワインとなっている。発酵の温度を15℃と低く設定することで、洋ナシや白い花のようなきれいな香りが出ているのも特徴だ。

スパークリング・ワインのボトルに打栓をする前に、少量のリキュールで甘さを加えることをドザージュと呼ぶが、このワインはドザージュが13.2g/lあり、ブリュット(辛口:12g/l±3)には入るが高めだ。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
リンゴやカリンのような花の蜜の香りが出ている。ほんのりとラズベリーのような、ピノ・ノワールらしい香りも感じられる。

澱(おり)とともに熟成させているので、爽やかさを感じられる仕上がりになっている。瓶の中で二酸化炭素を閉じ込めたまま低い温度で熟成させており、瓶の中に溶け込んだ二酸化炭素によって口の中できめ細やかなクリーミーさを感じる。それでいて、フレッシュな果物をかじったようなニュアンスもある。澱からのうま味が、ダシのような深みとコクになっている。

また、ドザージュにより、丸みを感じさせる甘さが加えられている。ぶどう自体の酸味が高いことや澱とともに熟成させたことで、ドザージュの数値が高いにもかかわらず、そこまで甘くはなっていない。フレッシュ感とのバランスが取れたワインだ。

お寿司には、ドザージュが高めのスパークリング・ワインの方が合う。このワインは、かんでいくうちに甘くなっていくシャリとの相性が良く、さらに口の中を引き締める酸味があるので、白身の魚にぴったりの1本だ。

レオ・スティーン サイーニ・ファームズ シュナン・ブラン 2016

品種:シュナン・ブラン100%
アルコール度数:12.5%
AVA:ドライ・クリーク・バレー
参考価格:3600円(税別)

ニュー・カリフォルニアスタイルのワインとして紹介された1本。生産者であるレオ・スティーン・ハンセン氏の名前が付けられたワインだが、“スティーン”とはシュナン・ブランの南アフリカでの別名。まさに、シュナン・ブランをつくるのが運命だったかのような名前だ。

デンマークでワイン・ディレクター をしていたハンセン氏は、バックパックひとつでアメリカへやって来て、ワイナリーを立ち上げた。大量生産ワインやバルクワイン用のぶどうをつくっていた畑で、生産量をあえて抑えながらぶどうを栽培している。

ソノマ・カウンティのAVAであるドライ・クリーク・バレーは、周りを湖や高い山に囲まれた多様性のある気候を特徴とする。海からの冷涼な風の影響を受けるところもあれば、湖の周辺などは暖かい熱がたまるため、温暖だ。さらに、砂利と粘土が混ざり合う土壌で、水はけが良い。ソノマの中でも温暖かつ水はけが良く、ぶどうが自然と凝縮していく条件がそろっており、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブランなどの産地として知られる。

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「レオ・スティーン サイーニ・ファームズ シュナン・ブラン 2016」では、発酵に野生酵母を使用している。熟成には、フレンチオークを80%、コンクリートエッグタンクを20%使用。エッグタンクとは名前の通り、卵型をしたタンクだ。

この形のおかげでかき回さなくても澱が対流に乗るため、手を加えずにうま味やフレッシュ感をワインに付けることができる。自然なワインづくりを目指すつくり手が採用しているタンクだ。

松木講師によると、カリフォルニアを訪問した際に、多くのつくり手がこのエッグタンクを採用していると感じたそうだ。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
華やかな香りが特徴で、果物や花の香りがグラスからあふれ出ている。バルーン型のグラスで味わいたいワインだ。アプリコットなどの香りにトーストやナッツのような香りもプラスされている。

香りのイメージと異なり、味わいは辛口。半量に対して酸味を乳酸菌の働きで乳酸に変化させるマロラクティック発酵(MLF)をしているので、フレッシュ感がありながらもクリーミーさが感じられる。醸造からくる味の複雑さを感じ、辛口で余韻も長い。

ナチュラルなつくりからくるクリーンな味わいだけではなく、複雑な味わいを感じられる1本だ。

●シュナン・ブランとは
シュナン・ブランは、フランス北西部のロワール原産のセミアロマティックな品種だ。宗教迫害でロワールから逃げた人々が南アフリカに移り住み、シュナン・ブラン(スティーン)を広めたとされている。

甘口から辛口、スパークリングなど、さまざまなスタイルのワインをつくることができる。甘口、辛口のどちらも酸味が高いのが特徴だ。

冷涼な地域でつくると、カリンのような香りやレモンやハーブのような香りが出てくる。温暖な地域では、トロピカルフルーツの香りがするほど成熟度が上がる。熟成に向いた品種でもあり、熟成によってトーストやハチミツといった華やかで甘やかな香りが出てくる。

フェイラ シャルドネ ソノマ・コースト 2014

品種:シャルドネ100%
アルコール度数:13.9%
AVA:ソノマ・コースト
参考価格:5950円(税別)

ソノマ・コーストは、ソノマ・カウンティの中でも海側の地域を中心としたAVAだ。海に面していないエリアも含めて非常に広範なため、よりテロワールの特徴を踏まえたAVAをつくろうという動きがある。

2017年には、ソノマ・コーストの南東部に位置するペタルマ・ギャップが新しいAVAとして認められた。それに続いて、より海の影響を受けている地域のみで、ウェスト・ソノマ・コーストを新しいAVAにしようという動きがある。

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「フェイラ シャルドネ ソノマ・コースト 2014」に使用されているシャルドネは、“ウェンテ・クローン”と呼ばれるもの。ウェンテ・クローンとは、禁酒法時代も教会用のワインとして生産を許可されていたウェンテ・ヴィンヤードから派生した、シャルドネの苗木のことだ。カリフォルニア州で栽培されているシャルドネの約8割が、このウェンテ・クローンに由来すると言われている。

シャルドネは個性がなく、ニュートラルなイメージがあるが、日照量の多いカリフォルニアで栽培し、熟度が上がってから収穫すると、香りが閉じ込められずに強くなる。熟成からくるナッツやハチミツのようなニュアンスが出てきて、シャルドネの個性が堪能できるワインが出来上がるそうだ。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
カリフォルニアのシャルドネらしく、黄色いモモや洋ナシなどのグリーンフルーツの円熟したニュアンスが感じられる。フルーツの香りだけで凝縮感の味わえる1本。

マロラクティック発酵(MLF)をしているため、ヨーグルトやバターのようなニュアンスもある。酸味は柔らかく、柔和。コクやうま味、樽やぶどうからくる心地よい苦味がアクセントとなり、ワインの味を底上げしている。全体的にバランスの取れたワインだ。

香りが華やかで開いていて、うま味が出ている。果実味やアルコールが高く、ボディがしっかりしているので、3~4年たっても十分に楽しめるだろう。

アイドル・ワイルド・ワインズ コルテーゼ フォックスヒル・ヴィンヤード 2015

品種:コルテーゼ100%
アルコール度数:12.4%
AVA:メンドシーノ・カウンティ
参考価格:5200円(税別)

白ぶどう品種は通常、果汁のみを発酵させるが、オレンジワインでは赤ワインのように果皮とともに漬け込んで発酵させている。ワイン発祥の地と呼ばれるジョージア(旧グルジア)で現在まで続く伝統的なつくり方だが、北イタリアなどの新たな生産者によって実践されたことで、世界的に注目が高まっている。

松木講師は、オレンジワインは単なるブームでは終わらないと考えているそうだ。イギリスのロンドンでは、既に赤・白・スパークリングとともに、オレンジワインがワインリストのカテゴリーとして登場しており、このまま世界中で定着していくであろうと感じているとのこと。

ソノマ・カウンティの北に位置するメンドシーノ・カウンティは、60%をレッドウッドの森で覆われている地域だ。1850年代に植えられたぶどうの樹もある。100軒ほどのワイナリーがあり、1万6800haの畑でワイン用ぶどうが栽培されている。

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「アイドル・ワイルド・ワインズ」は、ソムリエをしていたサム・ビルブロ氏が、イタリアのピエモンテ州のワインづくりに感銘を受けて、実家のあるメンドシーノで立ち上げたワイナリーだ。ピエモンテ系の品種を使ったワインづくりをしている。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
皮と一緒に発酵させるため、色調は明るいアンバーをしており、香りには凝縮感がある。オレンジや渋柿、柑橘系だがキンカンのような苦味を感じる果物と豊かな花の香り、ほんのりとした土や根菜のニュアンスがあるエレガントなワイン。

きれいにつくられており、オレンジワインらしい渋味やボディがあるが、全体的に優しくてしみわたるようなうま味がある。香りにあるようなフルーツ感やマーマーレードのニュアンスが余韻に現れている。

オレンジワインにはいろいろなテイストのものがあるが、このワインのように、よりぶどうの味わいが前面に出ているスタイルのオレンジワインが広がったらいいなという期待を込めてピックアップした。

ベッド・ロック オールド・ヴァイン ジンファンデル 2017

品種:ジンファンデル86%、プティ・シラー5%、カリニャン5%、その他
アルコール度数:14.4%
AVA:カリフォルニア
参考価格:5000円(税別)

オレンジワインと同様に注目を集めている、オールド・ヴァイン(古樹)を使用したニュー・カリフォルニアスタイルのワイン。

ジンファンデルの古樹で有名なのはローダイだが、ソノマにもジンファンデルの古樹が広がっており、それらから収穫したぶどうでつくられている。一番古いものでは、樹齢が120年ほどになるという。AVAはカリフォルニアとなっているが、ソノマ40%、コントラ・コスタ30%、ローダイ10%のブレンドだ。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
ジンファンデルらしい、リキュール状の甘やかなニュアンスがあり、シナモンやナツメグのような甘いスパイスのニュアンスもある。清涼感はあるが、古樹にこだわっているため、青臭さは感じられない。ぶどうは古樹になると、1本の樹になる房の数が減り、その代わりにぶどう自体が甘くなる。古樹の特徴が出ているワインだ。

バラやプラム、ボタンなどの赤い花のニュアンスとリコリスのようなスーッとするスパイスが後半に少しだけ顔を出す。味わいは、酸と渋味が低いジンファンデルにしては骨格があり、収れん性が感じられる。これは熟成にフレンチオークの新樽を10%使用している影響だろう。アルコール分が高いが、渋味や収れん性でバランスを取っている。

ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション カベルネ・ソーヴィニヨン バーボン・バレルズ 2017

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン80%、プティ・シラー10%、マルベック7%、プティ・ヴェルド3%
アルコール度数:14.5%
AVA:モントレー・カウンティ
参考価格:オープン

バーボン樽でワインを熟成させるという、最新のつくり方を取り入れたワイン。この取り組みは、これからのワインメイキングに大きな流れをつくるのではないかといわれている。蒸留酒では、ウイスキーやラムにコニャックの樽を使うなど、樽の選択肢の広がりが新たなスタイルを生み出している。

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モントレー・カウンティは、セントラル・コーストの真ん中にあるAVA。太平洋に大きく開いたモントレー湾周辺には、海からの影響を遮る丘陵がないため、海で生じた霧の影響を内陸まで受ける。冷涼な気候と雨が少ないことで、ぶどうの成熟にかかる期間は長くなる。そのため、より凝縮感のあるぶどうがつくられる地域だ。

ぶどうに香りや風味がつくまで十分に成熟させようと収穫時期を延ばすと、ぶどうの酸味が落ちてしまう。酸味が残っているうちに収穫しようとすると、ぶどうの元々持っている風味が引き出される前に収穫しなくてはならない。モントレー・カウンティでは、冷涼な気候により酸がキープされるため、十分成熟度と風味が高くなってから収穫できる地域だ。

「ロバート・モンダヴィ」は、ナパ・ヴァレーを中心としたワイナリー。しかし、ナパ・ヴァレーだけではデイリーに楽しめるワインがつくれなくなってしまったため、ローダイやセントラル・コーストなどに生産地を広めた。プライベート・セレクションは、デイリーに飲めるワインを目指して1994年にリリースされた。

【松木リエ講師のテイスティングメモ】
甘いニュアンスが、香りにも味わいにも感じられる1本。第一印象はトロっとした甘さを感じるが、途中からカベルネ・ソーヴィニヨンらしい渋味と酸味が出てきて、さらにスパイシーさが乗っかる。

アタックは甘さを感じるが、最後は引き締まり、ローストコーヒーの香りが余韻に残る。溶け込んだバーボン樽のニュアンスが出ているワインだ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ