コラム

ニコラ・フィアット、日本限定の「北斎ボトル」を発売 ~寿司や和食のためのシャンパーニュ

販売数量フランス国内第1位、世界第3位のシャンパーニュ・メゾンであるニコラ・フィアットは2020年10月1日、寿司や和食に合う日本限定のシャンパーニュ「ブリュット ブラン・ド・ブラン NV ~inspired by HOKUSAI~」(以下、北斎ボトル)を発売した。同月15日にはメディアセミナーを開催し、その魅力を紹介した。

繊細な日本の美食文化に合わせてつくられたワイン

北斎ボトルは、今年で生誕260周年を迎える浮世絵師・葛飾北斎をオマージュしてつくられたシャルドネ100%のブラン・ド・ブランだ。

セミナーでは、ニコラ・フィアットのブランドアンバサダーを務めるファビアン・フルリ氏が、「和食の職人、寿司職人、ソムリエから『和食や寿司に合う味わいの和風柄のシャンパーニュがあったらいいのに』という強い要望を受けてつくられた」と、北斎ボトル誕生のきっかけを語った。

ブランドアンバサダーを務める、ファビアン・フルリ氏

味わいについては、ニコラ・フィアットの最高醸造責任者であるギョーム・ロフィアン氏が来日して寿司や和食を実際に食べ、それらとの相性を徹底的に意識してつくり上げた。

ロフィアン氏はこのワインについて、「繊細なテロワールからつくられるシャルドネのピュアでキリッとした味わいを持つこのブラン・ド・ブランは、爽やかでミネラル感があり、グレープフルーツやユズの香りが特徴的。繊細な日本の美食文化に合うよう、特別に心を込めてつくった」と語っているという。

実際、北斎ボトルの味わいは、従来のニコラ・フィアットのものとは一線を画している。その外観は澄んだ輝きのあるレモンゴールドで、グラスを回すとシャルドネ特有のかんきつ系のアロマが強く上品に立ち上がる。口に含むと、持続性のあるきめ細かな泡によって、滑らかな口当たりが生み出される。熟成からくるしょうゆの風味に加え、白コショウやショウガの風味もほのかに感じられ、そのスパイシーなドライ感が全体の味わいを引き締める。

生臭くならないよう、緻密に計算した味わい

今回のメディアセミナーでは、北斎ボトルの誕生に一役買った、「鮨とワインのアカデミー」代表の大江弘明氏が登壇し、北斎ボトルが寿司や和食に合う理由について語ってくれた。大江氏によると、寿司や和食とワインとの相性を語る上で重要な要素は4つあるという。

1つ目は、寿司や和食とワインを合わせたときに、生臭くならないこと。和食は魚介類を多く使用する料理だ。特に寿司は生の魚介類を使うため、とりわけ生臭くなりやすい。このような魚介類を多用する寿司や和食といった食事と合わせても生臭くなりにくいように、北斎ボトルは緻密に計算されてつくられていると、大江氏は語る。

そもそも、ワインを飲んだときに生臭く感じるのは、食材に含まれる鉄分、亜鉛、酸化した油分のいずれかが、ワインが持つ鉄分と反応することが原因だ。そして、魚介類は多くの鉄分、亜鉛、酸化した油分を持つ。そのため、鉄分の含有量が多いワインと合わせてしまうと、生臭くなってしまうのだ。

そこで北斎ボトルは、鉄分の含有量を100g中0.1mg未満に抑えている。通常、白ワインの鉄分の含有量は100g中平均0.3mg、ロゼワインや赤ワインは平均0.4mgなので、北斎ボトルの鉄分の含有量はかなり低いことが分かる。100g中0.1mg未満という数値は、日本酒の鉄分の平均含有量と同じだ。日本酒を魚介類と合わせても生臭く感じないのは、鉄分の含有量が低いからに他ならない。鉄分の含有量を日本酒と同じ水準にまで抑えているからこそ、北斎ボトルは魚介類と合わせても生臭くならないのだ。

大江氏は、北斎ボトルの鉄分含有量が少ない理由として、石灰質土壌、つまりアルカリ性の土壌で育ったぶどうを使用していることを挙げる。酸性の土壌は鉄分の吸収が多くなるが、アルカリ性の土壌は鉄分の吸収が少なくなるので、そこで育ったぶどうは鉄分が低いという。また、2016年のぶどうを使用し、最低3年熟成させているので、澱(おり)との接触期間が長く、鉄分が澱に吸収されてワインの鉄分が少なくなっていると説明する。

2つ目は、寿司や和食の繊細な味をワインが消してしまわないことだ。濃さや渋さのあるワインは繊細な味わいを消してしまうので、寿司や和食には合わない。だが、北斎ボトルは滑らかな口当たりで味わいも上品なので、寿司や和食のうま味を損なうことはない。

3つ目は、寿司や和食と同調する要素を持つこと。北斎ボトルはシャルドネを100%使用しているため、ユズやスダチ、カボスのような和かんきつの香りがする。また、熟成由来のしょうゆの香りもほのかに香る。そのため、北斎ボトルの香りは寿司や和食の香りと絶妙にマッチする。

4つ目は、生臭さを包み込むマスキング効果だ。北斎ボトルには白コショウの風味があるが、その風味が魚介類の生臭さを包み隠す。また、熟成の際に澱と接触することでアミノ酸が発生するが、このアミノ酸にもマスキング効果がある。アミノ酸が多ければ多いほど、マスキング効果は高まるという。

北斎ボトルは、これら4つの重要な要素を全て併せ持っている。メディアセミナーでは、アワビやカツオのだし、エビ、カニ、イカ、タコなどの鉄分の含有量が高く、ワインと合わせると生臭くなりやすい食材でつくられた料理が振る舞われた。鉄分の多いワインやシャンパーニュを合わせると生臭くなりがちなこれらの食材も、北斎ボトルと相性が良く、おいしくいただくことができた。

北斎ボトルは2万本限定で販売され、価格は6200円(税別)。今後は、全国の郷土料理や寿司ネタとのペアリングも提案していくという。

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