コラム

ドイツの“ワイン女王”コンテスト、シリアからの難民女性が地方代表に選ばれ話題に

ドイツのワイン産地であるモーゼル地方で、「ワイン女王」が決定した。

本来なら地元で育った若い女性が選ばれるところだが、今回選ばれたのは3年前にシリアからやってきた難民の女性、ニノルタ・バーノさん(26)だ。

1930年代から始まった歴史あるワイン女王の地方代表の座を、難民が得たのは初めて。海外では数多くのメディアが、彼女について報じているのでまとめたい。

Mosel

ワイン女王にふさわしい女性

人口の10%はキリスト教徒だったシリア。バーノさんもキリスト教徒の家庭で育ったという。

3年前に戦火を逃れてドイツにやってきたバーノさんは、ワインづくりの短期集中コースを受講した。つまり、ワインに関する知識は十分持っているのだ。

また、好きなワインを聞かれた彼女は、モーゼル地方の特産である「甘口のリースリング」と答えている。

Riesling a la Rectoria

ワイン女王にかける意気込み

バーノさんは、難民としてほかの国で暮らすことについてこう語っている。

「最初にその地の法律や伝統などを学ばなくてはいけない。学んだことを実行に移すために、ドイツと難民を結ぶ大使になりたいの」

また、「ドイツは親切で、難民への差別をなくすために活動している国だということを示したい」と地元テレビ局のインタビューで答えている。

他の難民たちも彼女の栄冠をお祝いし、故郷であるシリアのワインについて話をしてくれるのだという。

今後1年間、モーゼル地方のお祭りやイベントに参加し、地域のワインづくりを広める活動をするバーノさん。ワイン女王として地域のワインを、そしてシリアのワインをアピールしたいそうだ。

Little Flower of the Mosel (211/365)

ドイツの難民事情

2015年にドイツにやってきた移民は110万人以上。現在でも、1日1万人の難民・移民がドイツにやってきているという。

9月30日に頂点が決定

今回バーノさんが選ばれたのは、ワイン女王の地方代表だ。各地で合わせて13人が選出されており、9月30日に頂点が決定するそうだ。その様子はテレビ中継されるという。

もともとはワイン農家の娘を対象としたコンテストだったが、1999年以降はワインづくりの経験がある女性にまで対象が広げられた。

長年続く行事に新しい風が吹き込む形となったワイン女王コンテスト。バーノさんのおかげで、今までになく注目を集めているそうだ。

1994 - Zeller Schwarze Katz (Mosel)

【参考記事】
Germany Took in the Entire Population of Houston Last Year
Syrian refugee crowned wine queen in Germany
Syrian refugee Ninorta Bahno crowned ‘wine queen’ in Germany
ドイツで初、シリア難民が地方のワイン女王に 9月に全国大会

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ