コラム

「ミュスカ」「モスカート・ビアンコ」「モスカテル」――地域によって呼び名の異なるぶどう品種 ~白ぶどう編

同じぶどうでも言語が違えば呼び名は違う。当たり前のことではあるが、ワインの世界で厄介なのは、同じ言語圏でも地方によって呼び名が変わってくることだ。

今日は、名前は違うが実は同じ品種を指している白ぶどう品種の名前を挙げていこう。フランスでよく使われる白ぶどう品種を中心に紹介していくが、これできっとラベルを見て疑問に思うことも少なくなるはずだ。

Chardonnay

「シャルドネ」と「ムロン・ダルボワ」

白ぶどうの王様であり、世界各国で栽培されている「シャルドネ」。フランス以外にもシャルドネの名産地は多く、イタリアやカリフォルニア、オーストラリア、南米、日本でも「シャルドネ」の名称でワインがつくられている。果実味と酸味のバランスが良いぶどう品種だ。
そんなシャルドネが、ジュラ地方では「ムロン・ダルボワ(Melon d’Arbois)」という名称で呼ばれている。アルボア(Arbois)とはジュラ地方のワイン一大産地である街の名だ。

「シュナン・ブラン」と「スティーン」

ロワール地方で多く栽培され、甘口・辛口ワインの両方に使用される「シュナン・ブラン」。花の香りと蜜のようなニュアンスのある、華やかなワインとなる。

このシュナン・ブランは、ロワールにて「ピノー・ド・ラ・ロワール」という別名を持つ。

また、南アフリカでは最大の栽培面積を誇るこのぶどう品種は、現地で「スティーン」という名前で呼ばれる。ただし、国際市場を視野に入れラベルにはシュナン・ブランと表記されることも多い。

2009 Loire vintage

「コロンバール」と「フレンチ・コロンバード」

フランスのコニャック・アルマニャック地方で多く栽培される「コロンバール」だが、アメリカや南アフリカ、オーストラリアで見られる「フレンチ・コロンバード」と同一品種だ。

フランスではコニャックやアルマニャックの原料となるほか、AOCボルドーでブレンドに使われたり、ガスコーニュ地方の地酒に使われたりする。

カリフォルニアでは単一品種で爽やかな味わいのワインもつくられている。

「ミュスカ」と「マスカット・オブ・アレキサンドリア」「モスカテル」「モスカート・ビアンコ」

フランス南部や各地で「ミュスカ」と呼ばれるぶどうは、アルザス地方では「ミュスカ・ダルザス」、イタリアでは「モスカート・ビアンコ」、英語圏では「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、スペイン語圏では「モスカテル」とさまざまな名称に変わる。

食用のマスカットと同系種であり、香り高く品の良い果実味を生かしたフレッシュな辛口〜中甘口のワインに仕立てられることが多い。

Moscatel

「ユニ・ブラン」と「トレッビアーノ」

フランスの白ぶどう栽培面積ナンバーワンの品種「ユニ・ブラン」。同国内では主にコニャックやアルマニャックの原料として使用され、コニャック地方などでは「サンテミリオン・デ・シャラント」という名称でも呼ばれる。

一方、イタリアでは「トレッビアーノ」と名前を変え、爽やかな風味が特徴の若飲みタイプのワインが出来上がる。イタリアでも白ぶどうの中で、トップの栽培面積を誇る。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身