コラム

日本で今、一番“泡”に詳しいソムリエは? 参加者86人の頂点が決まる[ポメリー・ソムリエ コンクール2017]

   

シャンパーニュをはじめとするスパークリングワインの知識やサービス技術を競う「ポメリー・ソムリエ コンクール2017」。その公開決勝戦が2017年10月30日、東京・赤坂で開催された。

9年ぶりに開催されることになった同コンクール。優勝者には100万円の賞金、フランスでの研修のほか、その後1年間にわたって「ポメリー・アンバサダー」としてヴランケン ポメリーがかかわるイベントに参加することになる。

予選に参加したソムリエは、シャンパーニュ、スパークリングワインのテイスティングやサービスに自信を持つ86名。その中から予選を勝ち抜いてきた12名が東京・赤坂の会場へ足を踏み入れることを許された。

この日の午前には、まずは決勝に進むソムリエ5名を選抜するため、ブラインドテイスティング、筆記試験、サービスの実技試験を課題とする準決勝が行われた。

どれも難問だったが、高いハードルを乗り越えてきた5名が、決勝へ駒を進めることになった。

スパークリングを知り尽くすトップ・ソムリエは誰?

決勝の審査は、まず1人20分ずつの個人審査。6つの課題に対して、約200名のプレス関係者や参列者の前で答えていく。審査委員長は日本ソムリエ協会常務理事の森覚氏、審査委員は日本ソムリエ協会副会長など3名だ。

1次審査:英語/フランス語でのフル・テイスティング・コメント

1次審査は、英語またはフランス語でのフル・テイスティング・コメントだった。グラスに入った液体を、外観、香り、味わいといった表現で次々と言葉にしていく。

与えられた時間は3分。その中でぶどうの品種、今後の熟成の可能性や、料理とのマリアージュについて言及する。

銘柄を当てることは必須ではないが、具体的な銘柄を述べて当たったら、その分、高い評価を受ける。

全員が豊富な語彙をもって外観やアロマ、味わいの表現を続けたが、あまりに表現を盛り込み過ぎ、3分の時間内に収まらない場面もあった。

2次審査:黒いグラスに入った液体は何?

2次審査では、中身の見えない黒いグラスに入った3種類の液体が用意されていた。これらの産地、国、セパージュ(ぶどうとは限らないが品種名)、製法を答える試験だ。外観が分からないので、ブラインドテイスティングよりもさらに難しい課題と言える。

スパークリングワインは世界的に種類も多く、泡の印象が最初に来る。スティルワインよりも品種を当てにくい。

ちなみに、2次審査に向けて用意されていた「中身の見えない黒いグラスに入った3種類」の中身は、1杯目はイタリア・ヴェネト州のプロセッコ、2杯目はオーストリアのゼクト、3杯目は日本・山梨県の日本酒、七賢のスパークリングだった。

3杯目の日本酒スパークリングについては正解する者が多かったが、そのほかの2杯について、回答は大きく割れる結果となった。

3次審査:どう機転を利かせるか。サービス実技

次に、サービスのテクニックを試す実技試験が、3次審査として待ち構えていた。

設定は、外国人の男女をお客様に見立て、注文されたシャンパーニュをサービスする。しかし、お客様が注文したポメリーは十分に冷えていない。ワインクーラーには冷えたモノポール・エドシックという別銘柄がある。

このような場面で、どういった代替案をどのようにプレゼンテーションするか。ソムリエの機転が問われる審査と言える。使用する言語は英語かフランス語だ。

ポメリーをデカンタに移し、話しながら冷やす。モノポール・エドシックを出すにしても、有料にする。5人それぞれの提案方法は、ソムリエ1人1人の姿勢をよく表していたように感じられた。

4次審査:高い営業力も必要。プレゼンテーション実技

4次審査は、プレゼンテーション実技だった。このコンクールの勝者は「ポメリー・アンバサダー」として1年間の活躍が期待される。4次審査では、自分が「ポメリー・アンバサダー」になったと想定し、ホテルやレストランでの販促プランをプレゼンする能力が試された。

この審査のみ、事前にテーマの通知があった。短い時間ではあるが、考える時間が与えられたという。

5次審査:四季を彩る4本でコース料理を組み立て

ポメリーには季節のコレクションとして販売している「シーズナル」という4本のシャンパンがある。これらをコース料理に合わせるのが5次審査の課題だ。シャンパンに合わせる料理は、すべて違う国の料理という条件がついていた。

ポメリーの「シーズナル」には、辛口ロゼの「スプリングタイム」、シャルドネのキリッとした辛口が特徴の「サマータイム」、やはりシャルドネのみを使うがよりクリーミーな「フォールタイム」、黒ぶどうのみを使った「ウィンタータイム」の4種類がある。

決勝進出者の全員が、キレのあるドライ目な味わいのシャンパーニュからコクのあるシャンパーニュへと流れをつくった。合わせる料理の提案はバラエティに富み、南米のセビーチェから懐石料理まで、さまざまな提案がなされた。

6次審査:超難関! シャンパーニュとポメリーに関する知識を問う写真クイズ

審査の中でも最難関となったのが6次審査だ。次々と画面上に表示される人物や畑の写真を見ながら、名前や内容を答えていく写真クイズだった。

出された問題は、クロ・ポンパドールというポメリーの畑、シャンパーニュ地方・ランスの大聖堂内部、ポメリーの醸造責任者、過去のポスターなど。写真の内容を正確に答えていくのは非常に困難だったと思う。ほとんどのソムリエが、一部の問題しか正解できない結果に終わった。

難易度の高い問題ばかりだったが、出題された畑や醸造責任者などは、いずれもポメリーにとっては重要なもの。「ポメリー・アンバサダー」を任せられる人物かと、決勝進出者の資質が問われているように感じられた。

集合審査 問われるスピードと正確さ

最後に、全員そろっての審査は実技となった。課題はマグナムボトルに入ったポメリーを、15個のグラスへ均等に注ぐというもの。ただし制限時間が2分と短く、1度注いだグラスには戻れないという厳しい条件付きだ。

決勝進出者全員が一斉にグラスを一列に並べて抜栓し、きっちり100mlずつ注いでいく様は圧巻だった。

ちなみにこちらの審査では、きっちり100mlの高さまで注がれたグラスの数をカウントして点数に換算した。少なくても多くても点数にはならない。

2分という短い時間に注ぎきれない者も多く、どんな環境でも安定したサービスを迅速に提供できるかが試されていた。

優勝はホテル・ニュー・オータニの野坂昭彦氏!

厳しい審査を経て、優勝はホテル・ニュー・オータニ トゥール・ダルジャンの野坂昭彦氏、準優勝はパレスホテル東京の瀧田昌孝氏、第3位には、Clos Yの中西祐介氏が選ばれた。

野坂氏は全体において点数が高く、特に4次審査のプレゼンテーションを高く評価された。レストラン、バンケット、客室におけるそれぞれのキャンペーンを提案し、具体的な販売数を出しながら説得力のある販売促進プランを展開。取材していても、非常に完成度の高いプレゼンだと感じられた。

総合点1位で優勝した野坂氏は、「このコンクールに参加したことにより、シャンパーニュやスパークリングワインの深い世界を知ることができた。学び経験したものを今後、お客様に還元していきたい」とコメントしていた。

来年もぜひ、このハイレベルなコンクールが開催されることを期待したい。

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About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身