サントリーは2024年5月14日、TKPガーデンシティPREMIUM京橋（東京都中央区）において、2024年の日本ワイン方針・戦略についての説明会を開催した。
当日は、同社常務執行役員ワイン本部長の吉雄敬子氏、サントリー登美の丘ワイナリー（以下、登美の丘ワイナリー）栽培技師長の大山弘平氏が登壇。世界と肩を並べる日本ワインをつくるための取り組み、日本らしさを大事にした持続可能なワインづくりなどについて話があった。
第2回となる本記事では、同社の日本ワイン戦略のうち、ワインを進化させるための「甲州」強化の取り組みについて紹介する。
ものづくりのゴールに向けた着実な歩み
同社は、「日本でつくる、日本ならではのオリジナリティがあるワイン」かつ「世界と肩を並べられるレベルのワイン」を目指して、日本ワインをつくっている。そのゴールは、「日本ワインを日本と世界のお客様に愛していただくこと」だと吉雄氏は言う。
「甲州」の魅力
世界に認められる高品質な日本ワインをつくるため、同社では日本固有のぶどう品種であり、日本の風土に合う甲州に力を入れている。
甲州から素晴らしいワインがつくられるのはもちろんのこと、甲州ワインは和食や日本のさまざまな食材に合う。土地の風土や食とのマリアージュがワインと深く関係していることを考えると、甲州の進化は日本ワインの進化につながっていると言える。
前回の記事でも紹介したように、同社の甲州ワインは「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード（Decanter World Wine Awards：DWWA）2023」にて、「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 甲州 2021」が最高位のプラチナ賞を、「同 ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち 2021」が金賞を獲得するなど、世界的にも高い評価を受けている。
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収穫量を拡大し、山梨県内最大規模へ
日本国内だけでなく、世界に高品質な甲州ワインを届けるには、品質の良い甲州を増やす必要がある。同社では、山梨県内の自園、自社管理畑の甲州収穫量を2022年は33t（トン）、2023年は49t、2024年は52t見込みと、着実に増やしてきた。2030年には、2023年比6倍超の297tに拡大する計画だ。到達した場合は、甲州生産量日本一の山梨県において最大規模の収穫量になる。
甲州の良さを生かしつつ、糖度をアップ
甲州は果皮が厚いぶどうで、病気に強い。また、クリーンな味わいと、きれいなかんきつ香が感じられるものの、欧州系品種と比べると糖度が上がりにくいという特徴がある。
この糖度の上がりにくさを克服し、凝縮感のある密度の高いワインをつくるべく、同社は長年にわたって挑戦を続けてきた。目指すのは、かねてからの念願である「登美」ブランドにふさわしい甲州だ。
斜面の向きや水はけ、日当たりなど、目指す甲州に適した圃場を選定し、最も高い糖度が得られる系統を選んで植え、適した栽培方法で育てる。大山氏によると、畑選びからぶどうづくりを設計した結果、糖度が年々高まり、近年では糖度18度を安定して超えられるようになったという。
サントリー登美の丘ワイナリー栽培技師長の大山弘平氏
待ちわびた「登美 甲州」が完成
同社の日本ワイン最高峰に位置付けられる「登美」「岩垂原（いわだれはら）」ブランドは、同社のフラッグシップワインだ。
吉雄氏によると、特に「登美」は同社にとって非常に思い入れがあるブランドだけに、現場では「登美」の甲州ワインを出したい思いと、これぞという品質に達するまでは出せないという葛藤があったという。吉雄氏自身、ワイン部門のトップに就任して以来、何度か「登美の甲州はいつ出せるのか」と現場に尋ねたそうだ。
自信のある甲州で「登美」をつくり出す。2024年、いよいよその願いが叶う。同社は同年9月10日、「登美」ブランド初の甲州ワイン「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」を発売する。
「SUNTORY FROM FARM 登美 甲州 2022」
ぶどう品種：甲州100％
タイプ：白・辛口
参考小売価格：1万2000円（税別）
※ワイナリーやオンライン、一部流通での限定発売
和かんきつを思わせる豊かな香りと、果実味あふれる凝縮した味わい、程よい余韻が感じられる。登美の丘のテロワールを表現した、凝縮感と気品を併せ持つ、これまでの「甲州」とは一線を画すワインに仕上がった。
次回の記事では、同社が注力するもう1つのぶどう品種、プティ・ヴェルドの品質向上と、その個性を生かした「登美 赤」の新ヴィンテージについて紹介する。
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①「FROM FARM」がもたらした、ものづくりの成果
