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サントリーは2024年5月14日、TKPガーデンシティPREMIUM京橋(東京都中央区)において、2024年の日本ワイン方針・戦略についての説明会を開催した。
当日は、同社常務執行役員ワイン本部長の吉雄敬子氏、サントリー登美の丘ワイナリー(以下、登美の丘ワイナリー)栽培技師長の大山弘平氏が登壇。世界と肩を並べる日本ワインをつくるための取り組み、日本らしさを大事にした持続可能なワインづくりなどについて話があった。
第3回となる本記事では、同社が注力するもう1つのぶどう品種ブティ・ヴェルドの品質向上と、その個性を生かした「登美 赤」の新ヴィンテージについて紹介する。
「登美 赤」で増してきた、プティ・ヴェルドの存在感
同社日本ワインの最高峰に位置付けられる、フラッグシップワイン「登美 赤」は、1982年のファーストヴィンテージ以来、目指す品質に合わせて時代ごとに品種構成を調整してきた。これまで、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを主体としてきたが、2010年頃から存在感を増してきたのが、プティ・ヴェルドだ。
プティ・ヴェルドは、フランス南西部原産の赤ワイン用ぶどう品種だ。ボルドーなどでは、補助品種として少量の割合でブレンドされることが多い。同社は長年の研究の結果、登美の丘のテロワールに適したプティ・ヴェルドに大きな可能性を見いだした。
荒々しさを和らげる、登美の丘のテロワール
プティ・ヴェルドがもともと持っている強い個性は、時に荒々しさや、あか抜けない香りにつながってしまう。登美の丘のプティ・ヴェルドは、当地のテロワールによって、力強さを残しつつも柔らかさや上品さが感じられるぶどうに育つ。
さらに、収穫期を糖や酸の生成量ではなく、フェノール化合物の成熟に注目して設定することで、より高品質なプティ・ヴェルドが得られる。ただし、フェノール化合物の成熟を待つ期間は、台風や病気が発生しやすい時期でもあるため、同社では非常に細やかな栽培管理を行っている。
醸造プロセスの改善で、さらに品質を向上
そのこだわりは、ぶどう栽培だけにとどまらない。2022年には、無破砕仕込み法と垂直型圧搾機を導入。良質なプティ・ヴェルドのポテンシャルをさらに引き出すため、醸造プロセスの改善を図った。
無破砕仕込みによって、ぶどうを傷付けることなく発酵タンクへ運び、果皮や種からの渋みを軽減。上から優しく圧搾することで、醪(もろみ:ぶどうの果汁や皮、果肉、種の混合物)を崩さず、豊潤な果実味が得られるようにした。
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プティ・ヴェルドを主品種にした「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」
2024年9月10日に発売予定のフラッグシップワイン「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」は、プティ・ヴェルドの品質向上や、醸造プロセスの改善など数々の挑戦が実を結んだものだ。
「SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020」
ぶどう品種:プティ・ヴェルド54%、カベルネ・ソーヴィニヨン46%
タイプ:赤・フルボディ
参考小売価格:2万円(税別)
※ワイナリーやオンライン、一部流通での限定発売
果実の完熟を追求し、黒系果実の印象と滑らかで気品のある味わいが魅力のワイン。世界品質とテロワールの個性を、高いレベルで両立することを目指しているという。
次回の記事では、登美の丘ワイナリーのテロワールを生かす取り組みや、新たに建設される醸造棟、同社のサステナブルなワインづくりについて紹介する。
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