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いよいよクリスマスが間近に迫ってきた。先週、“ハートのワイン”の代表格として、シャトー・カロン・セギュールを紹介した。今週も引き続き、“ハートのワイン”のつくり手を紹介したい。
シャトー・カロン・セギュールが赤ワインだったので、今回は別タイプのワイン、シャンパーニュの中からジャニソン・バラドンの「ヴァンドヴィル」を取り上げてみよう。
ジャニソン・バラドンのエピソード
“家族愛” を表すハートのマーク
ジャニソン・バラドンが手掛ける「ヴァンドヴィル(Vendeville)」の由来となったのは、5代目当主であるシリル・ジャニソン氏の祖母の名前だ。ヴィオレット・ヴァンドヴィル(Violette Vendeville)にちなんで「ヴァンドヴィル」という名前を付けた。
祖母を大好きだったというシリル氏。「家族愛こそが大切」という思いを込めて、ハート型のエチケットを採用したそうだ。
シャンパーニュの未来を担う若手ヴィニュロン8人に選ばれる
ジャニソン・バラドンの5代目シリル氏は、2004年に弟のマクサンス氏とともにジャニソン・バラドンを継いだ。
ブルゴーニュで6年間修行し、ワインづくりについて学んできたシリル氏。ブルゴーニュの手法をシャンパーニュに採り入れ、近年、ジャニソン・バラドンに対する注目は増してきている。
フランスのワイン専門誌「l’amateur de Bordeaux」がシャンパーニュの特集を組んだとき、シリル氏を「シャンパーニュの未来を担う若手ヴィニュロン(=ぶどう栽培からワイン醸造までを手掛けるつくり手)」8人のうちの1人として紹介したこともある。
ジャニソン・バラドンの歴史
ジャニソン家とバラドン家が結び付いて「ジャニソン・バラドン」に
ジャニソン・バラドンが誕生したのは1922年のこと。ジャニソン家とバラドン家が結婚したことがきっかけだった。メゾンを創業したのはジョルジュ・バラドン氏と義理の息子モーリス・ジャニソン氏。ジョルジュ・バラドン氏の名前は、ネゴシアン・マニピュランとして他の農家から仕入れたぶどうを使ってつくるワインの名称に使われている。
ランスの近くにあるエペルネに本拠を構え、畑はエペルネの西側にある丘陵地帯に広がる。畑面積は約9haで、毎年7万本前後のシャンパーニュを生産している。
ジャニソン・バラドンのワインづくりの特徴
ブルゴーニュの手法をシャンパーニュに採り入れる
前述のとおり、シリル氏はブルゴーニュでワインづくりを修行してきた経験から、ブルゴーニュで広まっているワインづくりの手法を採用している。
ブルゴーニュから影響を受けた点として、30年以上の古樹から採れるぶどうへのこだわり、単一品種・単一区画・単一ミレジム(ヴィンテージ)ワインのリリース、小樽を使った発酵・熟成などが挙げられる。
新たな試みをいち早く導入
ジャニソン・バラドンは、ブルゴーニュから学ぶだけでなく、最先端のワインづくりの手法を採り入れてもいる。
まずぶどう栽培については、1999年から完全無農薬による栽培に。2004年からは化学物質を使わず、天敵によって害虫を排除するリュット・アンテグレ(総合防除農法)に移行した。
シャンパーニュでは一般的なドザージュ(加糖)にはMCR(濃縮ぶどう果汁)を使用。ドザージュを行わない「ノン・ドゼ」もいち早く販売した。他にも、セメント製の卵型をした装置を発酵に用いるなど、変化を恐れないつくり手だ。
ジャニソン・バラドンのおすすめワイン
ヴァンドヴィル
冒頭で触れたように、“家族愛”を表すハートのマークのシャンパーニュ。樹齢35~40年のぶどう樹から採れたピノ・ノワール(50%)、シャルドネ(40%)、ピノ・ムニエ(10%)を使用してつくった。
トゥレット
シンプルに「トゥレット(Toulette)」と書かれたラベルが印象に残るシャンパーニュ。エペルネの「トゥレット」という畑で育った樹齢55年以上のぶどう樹から採れたシャルドネを100%使用して醸造した。
同じように「コンジュ(Conges)」とシンプルに書かれたピノ・ムニエ100%のワインも手掛けている。
セット・セ(7C)
シャンパーニュに使用することが認められた7種類のぶどう品種、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ、プティ・メリエ、アルバンヌ、フロマントー、ピノ・ブランを同程度ずつブレンドした。2017年にリリースされたばかり。
ノン・ドゼ
ドザージュを行っていない辛口ワイン。使うのは樹齢30~35年のぶどうから取ったテット・ド・キュヴェ(一番搾り果汁)のみ。ピノ・ノワールを50%、シャルドネを50%ブレンドしている。
ブリュット・ロゼ
2016年にリリースしたシャルドネ45%、ピノ・ノワール40%、ピノ・ムニエ15%を使用したロゼ。側面が12面体になっているボトルが特徴的。