私たちがワインを飲むときに使うワイングラス、大きめのものを用意している人もいれば、小さめのものを好む人もいるだろう。
そんなワイングラスのサイズだが、昔は今よりずっと小さなグラスを使っていたことがケンブリッジ大学の研究チームによる調査から明らかになった。ワイングラスの平均的な容量は、1700年代から300年間でおよそ7倍になっていたという。ここ10年ほどに限っても、7.7%ほど増えていたようだ。
研究チームは、1700年から2017年までにイングランドで利用/販売された411種類のワイングラスを収集。容量やステム、フットなどの各部位の寸法を計測した。
次のグラフは、ワイングラスの容量(縦軸)と製造年(横軸)をプロットし、平均値(黒線)を算出してグラフ化したものだ。
同調査によると、1700年代には66mlであったワイングラスの平均容量は、2000年代にはおよそ7倍となる417mlまで増加した。さらに2016~17年には平均容量が449mlまで増えたことが分かった。
上昇傾向は1990年代以降から顕著となり、グラフでも1990年代に入ってから平均値を示す黒線の傾きが急になっている。
ワイングラス大型化の背景には、さまざまな要因があるという。例えば、1746年にはグラス税が課され、製造業者が小型のグラスを作ることになっていた。他にも18世紀後半に始まったワイングラス製造工程の機械化、17世紀後半に開発された鉛ガラスなどの技術革新も背景にあるという。さらに20世紀に入り市場規模が急速に拡大し、さまざまな種類のワインが販売され、広く親しまれるようになったことも大きな要因であると分析している。
一方、イングランドのアルコール消費量とその内訳は、社会的/経済的要因によってこの300年間で大きく変化した。
20世紀後半まではビールやスピリッツなどがアルコール消費量の大半を占め、ワインは一部の富裕層向けだった。しかし近年のワインの低価格化や、さまざまな販売会社によるマーケティングにより、ワインを取り巻く環境は大きく変化した。スーパーマーケットやデパートで手頃にワインを購入できる環境が整うにつれて、中流階級層などによるワイン消費量は飛躍的に増加した。
イングランドにおいて1960~80年までの間にワイン消費量は4倍に増加し、1980~2004年にかけてさらに倍増したという。「ワインを1度にたくさん飲みたいから容量を大きくした」とは限らず、「ワインに空気を含ませやすいように」「香りが立ちやすいように」といった理由もあってワイングラスの大型化は進んできたのだろうが、ワイン消費量の大幅な増加に関してワイングラスのデザイン、特にグラスの大きさが深く関与している可能性があるという。
なお、このデータはイングランドのみのデータであり、他の国でも同様の傾向がみられるかは不明としている。