飛行機に搭乗して、ワインを頼んだことはあるだろうか。仕事で出張の帰りに、あるいは海外のリゾート地へ向かうときに、機内で味わったワインはどんな味だったろうか。
実際に、フライト中にワインを飲んでみると、「いつも飲むのと同じワインでも、なんか違う」と感じる人が多いらしい。安物のワインでもおいしく感じることもあれば、せっかくの高級ワインなのに以前飲んだときほど感動できないこともあるようだ。
こうした飛行機の中で飲むワイン、高度3万フィート(約9100m)で味わうワインについて、海外ではどのように分析・評価されているのか。今回はそんな話題を取り上げてみたい。
海外メディアでは「高度3万フィートで飲むワイン」が話題に
海外のGQに掲載されたこちらの記事「The Science Behind What Makes Wine Tastes Better on a Plane」を読むと、機内で飲んだときには安物ではあっても悪くはなかった赤ワインが、地上に降りてから飲んでみると酷い味わいだったと記されている。
ニューヨークなどで人気のレストラン「Momofuku」でワイン関連のディレクターを務めるJordan Salcito氏によると、空で飲むワインの味わいは地上で飲むのと違うものになり、酷いワインでもそんなに酷くなくなるという。
もちろん、ワインの成分自体はまったく変化していない。デルタ航空のワインリスト作成に関わるマスターソムリエのAndrea Robinson氏は、「機内は非常に乾燥していて、嗅覚も乾燥する。複雑な匂いを嗅ぎ分けにくくなる。機内では空気の流れも速くなり、アロマもすぐに消えてしまう」と説明している。
THE WALL STREET JOURNALの記事「Getting On Top of Wine’s Altitude Problem」でも、機内で飲むワインの味わいの変化について取り上げている。高高度を飛び湿度が高くない機内でワインを飲むと、酸味とアルコールが強調されてしまう一方、タンニンをよりはっきりと感じられるという。
高度3万フィードでもおいしく飲めるワインを選ぶ航空会社
ワインを楽しむ搭乗客が多そうな海外の航空会社では、「機内で飲むワインの味わいがどうなるか」と考慮して、リストに載せるワインを選ぶように努めている。
例えば、シンガポール航空は高度3万フィートと同程度に減圧した試食室を設けて、その中でワインをテイスティングして搭乗客に提供するワインを選んでいるそうだ。
アメリカン航空は、マスターソムリエのBobby Stuckey氏とチームを組み、機内やラウンジなどで提供するワインを選ぶと2018年2月13日に発表。2018年の下半期以降に、Stuckey氏とともに選び抜いたワインを提供し始めるという。
就任に当たり、Stuckey氏にインタビューした内容が同社プレスリリースに掲載されているが、その中でも「高度3万フィートで飲むワインの味わいは、なぜいつもと違うのでしょうか?」とStuckey氏に質問。Stuckey氏は「3万フィート上空では酸素が少なくなり、それがワインの味わいに影響している可能性がある」と答えている。
日本では、そこまで話題にはなっていないように感じる飛行機で飲むワインの味わい。海外では時折話題になり、航空会社も味わいの変化を意識してリストに載せるワインを選んでいるようだ。
あいにく筆者は、ほとんど飛行機に乗らない生活を続けている。飛行機に乗る予定のあるワインバザール読者の皆様は、ぜひ1度、機内で提供されるワインを事前に地上で試しておいて、機内で飲んだときに感じた味わいの違いについて、編集部まで感想を教えてほしい。