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ワイン新興国・オーストラリアの中で、知っておきたいワインのつくり手を紹介する本シリーズ。今回は、オーストラリア赤ワインの傑作を産み出す天才、トルブレックについてご紹介していこう。
トルブレックのエピソード
トルブレックを代表するワイン「ラン・リグ」は、全てのヴィンテージでパーカーポイント(PP)95点以上を獲得している。ラン・リグには、南オーストラリアのバロッサ・ヴァレーで栽培される古樹の熟した果実が使用され、ロワール地方のワインに感じる繊細さとエレガントさを兼ね備えている。
トルブレックのワインは、手頃な「トルブレック ウッドカッターズ シラーズ」でさえ、「高級赤ワインに匹敵する」と評されている。
トルブレックの歴史
元きこりが立ち上げたワイナリー
「トルブレック」というワイナリーの名前は、スコットランドの森の名前に由来する。ワインづくりをする以前、創業者であるデイヴィッド・パウエル氏は、スコットランドできこりをしていた。その時に働いていたのが、トルブレックという名前の森だったという。
デイヴィッド・パウエル氏は、ローヌ地方の名ワイナリーであるポール・ジャブレ・エネが産するエルミタージュ・ラ・シャペルと、シャーヴが産するエルミタージュに感銘を受けた。それを機に、ワインづくりの道を志すようになった。
枯れかけの古樹からのスタート
デイヴィッド・パウエル氏は、すべて独学でワインづくりを学んだ。そして南オーストラリアのワイナリー、ロックフォードで働いていた1992年に、ほとんど枯れかけている古樹が植えられた古い畑を見つけ、手入れを始めた。その結果、シラーズの古樹を生き返らせ、高品質のぶどうを収穫することに成功した。そして、その畑で共同栽培を始めることで、バロッサ・ヴァレーの最良の畑からぶどうを入手できるようになった。
1994年に自身のワイナリー「トルブレック」を設立。1995年にはマラナンガにある12haの自社畑で採れた3tのぶどうからワインをつくり、「トルブレック」と名付けた。そして、瞬く間にデイヴィッド・パウエル氏は、ローヌの影響を受けたオーストラリアの赤ワインの傑作を生み出す天才として知られるようになった。
オーナーの交代
設立以来、デイヴィッド・パウエル氏は、素晴らしいワインつくり続けていたが、経営手腕はあまり良くなかったようだ。そのため、常に資金問題を抱えていた。
2006年にピーター・ナイト氏にオーナーを譲り、デイヴィッド・パウエル氏は契約パートナーとしてワインづくりに参加していたが、2013年にナイト氏が契約を打ち切った。その結果、デイヴィッド・パウエル氏は、トルブレックを去ることとなった。しかし、その技術は受け継がれており、同氏が去った後もトルブレックは、素晴らしいワインを産出している。
トルブレックのワインづくり
創業者のデイヴィット・パウエル氏は、オーストラリアで古樹の素晴しさに着目した最初の人物と言っても過言ではない。そして、大昔に枯れてしまった樹を生き返らせてきた。そのため、トルブレックで使用するぶどうの中には、樹齢150年を超えるものも少なくない。
収穫量が少ない古樹はもとより、若い樹も収量制限をかけて収量を抑えている。そのため、質の高いぶどうが育ち、その結果、高品質のワインがつくられている。
トルブレックのおすすめワイン
ラン・リグ
トルブレックを代表するワイン。樹齢150年以上のぶどうを使用し、シラーズにヴィオニエを3%加えてつくられる。シラーズとヴィオニエを別々に仕込み、あとでブレンドすることで豊かな香りを引き出している。フレンチオーク樽で30カ月熟成した後、清澄も濾過もせずに瓶詰めする。
トルブレック デシェンダント
シラーズの古樹の凝縮された果汁92%とヴィオニエ8%のブレンドでつくられる。
トルブレック ウッドカッターズ シラーズ
バロッサ地区の若樹から採れたシラーズを使用している。手摘みした果実をフレンチオーク樽で12カ月熟成する。「高級ワインに匹敵する」と評されるワイン。