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オーストラリアの名門ワイナリーを、ここまで5回にわたってご紹介してきた本シリーズ。今回は、日本でもよく見掛けるオーストラリアワインを手掛ける「ジェイコブス・クリーク」について、ご紹介していこう。
ジェイコブス・クリークのエピソード
ジェイコブス・クリークのワインは、世界で最も売れているオーストラリアワインの1つだと言われている。
2008年には国際ワインコンクールなどでの受賞数に基づき、世界ワインライター&ジャーナリスト協会による「世界ベストワイナリー100」で1位にランキングされた。世界60カ国以上で楽しまれていて、受賞数は7000を超える。
ジェイコブス・クリークのワインは、すべてが最高級のワインとは言い切れないが、みんなが楽しめる手ごろな価格のワインが多い。そしてバラエティーに富み、常に高い品質を保っている。
こうした形でワインを提供しているワイナリーは、世界でもあまり多くない。世界中で楽しまれている信頼性と安定した品質の高さは、多くワイナリーの目標になっているとも言われている。
ジェイコブス・クリークの歴史
創設者はドイツからの移民ヨハン・グランプ
ジェイコブス・クリークを設立したヨハン・グランプ氏は、ドイツのバイエルン出身。1837年、ソルウェイ号に乗船し、4カ月かけてオーストラリアにやってきた。
ヨハン・グランプ氏は1847年に妻とともにジェイコブス・クリーク沿いの土地を購入し、バロッサヴァレー初の商業用ぶどう畑を開墾。小さなワイナリーと地下のセラーも建築し、1850年に最初のワインが出来上がった。
その後、息子のグスタヴ氏によって、ワイナリーはG.Gramp&Sonsという名前で登録され、ワインづくりは代々受け継がれていった。G.Gramp&Sonsの名前はその後Gramp&Sonsに変更された。
ヨハン氏のひ孫に当たるコリン氏は、新しい技術を導入するなど、技術革新を推進。その結果、オーストラリアの白ワインのスタイルに大きな変化をもたらした。
「ジェイコブス・クリーク」の発売
1976年に「ジェイコブス・クリーク」を冠した「ジェイコブス・クリーク シラーズ カベルネ マルベック」を発表すると、市場で高い評価を獲得。ワイナリーの評価も高くなった。
現在、種類豊富な「ジェイコブス・クリーク」は、オーストラリア国内だけでなく、世界で最も売れているオーストラリアワインの1つに数えられる。
1989年にはフランスのペルノ・リカールの傘下に入り、1990年にはハンター・ヴァレー最古のウィンダム・エステートを吸収。オーストラリア最大手のワイナリーとなった。
ジェイコブス・クリークのワインづくり
天候に左右されない安定したワイン
ジェイコブス・クリークは、品質の安定したワインづくりをしている。ぶどうの出来は天候に左右されるが、天候に恵まれなった年でも高い品質を保持する努力をしている。
ぶどう栽培地を、オーストラリア南東部のバロッサ、アデレード・ヒル、クナワラの3カ所に所有することで、1カ所で栽培するよりも天候の影響を受けにくくしている。
また、苗木の植栽から収穫までを徹底管理。最新の栽培技術を導入し、散水や肥培、害虫駆除、天候管理などを行っている。
果実味の豊かさが特徴
ジェイコブス・クリークは、自然の甘味と酸味のバランスを大切にし、果実味が豊かな新鮮なワインをつくっている。
スタンダード・クラス、リザーブ・クラス、スパークリングワイン、ダブル・バレルなどがあるジェイコブス・クリークのワインは、果実味を大切にしながらも、それぞれに特色がある。
スタンダード・クラスは、熟成を必要としない新鮮な果実味を楽しめるワイン。品質が安定していて、コストパフォーマンスが高く、デイリーワインとして楽しめる。
リザーブ・クラスは、最良の栽培地域から収穫したぶどうを使用。熟成も可能で複雑味を持つ味わいを楽しめる。
スパークリングワインは、航空会社に採用された実績もあり、メディアでも高評価を獲得している。ジェイコブス・クリークの品質の高さを証明しているワインだ。
ダブル・バレルは、厳選したぶどう畑から収穫したぶどうだけを使用。オーク樽で熟成した後、ウイスキーの熟成に使用された樽を用いてさらに熟成させる。ワイン業界で初の試みとなるワイン樽とウイスキー樽の二重熟成(ダブル・バレル製法)を用いて、滑らかさや複雑味を持つワインに仕上げている。
ジェイコブス・クリークのおすすめワイン
ジェイコブス・クリーク シラーズ カベルネ
ジェイコブス・クリークを代表するワイン。シラーズとカベルネ・ソーヴィニョンでつくられていて、スパイシーな味わいのワイン。
ジェイコブス・クリーク カベルネ・ソーヴィニョン
カベルネ・ソーヴィニョン100%でつくられている。多くの賞を受賞していて、受賞回数はおよそ35回にのぼる。
ジェイコブス・クリーク マスカット ロゼ スパークリング
マスカットを使ったロゼのスパークリングワイン。アルコール度数が9%と低め。
ジェイコブス・クリーク シャルドネ
シャルドネ100%。温暖な地域と冷涼な地域のぶどうを使用している。
ジェイコブス・クリーク わ
赤ワインと白ワインがある。和食のためにつくられたワインで、銀座の寿司幸本店4代目・杉山衛氏などのプロジェクトメンバーが、オーストラリアにあるジェイコブス・クリークで、実際に和食を調理して意見交換しながら味を決めた。