コラム

チリのワイン産業に大きな影響を与えたミゲル・トーレス・チリ~ 解説:チリ名門ワイナリー

   

チリの名門ワイナリーを紹介する本シリーズ。今回は、スペインの老舗ワイナリーであるトーレスがチリに設立した「ミゲル・トーレス・チリ」について、ご紹介していこう。

Restaurante Miguel Torres in Santiago, Chile

ミゲル・トーレス・チリのエピソード

チリのワイン産業において、歴史的に需要な日が3日あり、「チリワインの歴史における重要な3日間」と呼ばれている。まずは、1548年にフランシスコ・カラバンテス氏がぶどうの樹をチリにもたらしたこと。次に、1851年にシルベストレ・オチャガビア氏がフランス原産種のぶどうを導入したこと。そして、1979年にスペインの老舗ワイナリー「トーレス」がチリに進出し、ミゲル・トーレス・チリを設立したことだと言われている。

トーレスは、「ミゲル・トーレス・チリ」に、最新の醸造設備を導入し、ステンレスタンクでの発酵など、チリで近代的なワインづくりを始めた。そのミゲル・トーレス・チリに牽引されて、チリのワイン産業の技術と質は飛躍的に向上した。

ミゲル・トーレス・チリが産するワインは、ヨーロッパ諸国でも高く評価され、数々の権威ある賞を獲得。その結果、チリがワインの産地として優れていることを世に知らしめ、新世界ワインの人気も向上した。

ミゲル・トーレス・チリの歴史

IMGA0321

スペインの老舗ワイナリー「トーレス」の社長を務めていたミゲル・A・トーレス氏が、1979年に「ミゲル・トーレス・チリ」を設立した。

アンデス山脈にそって南北に細長く伸びたチリの中で、緯度30~50度のエリアは、ぶどう栽培に非常に適した気候となっている。昼と夜の温度差が大きく、雨の多い冬以外は乾燥した気候が続く。乾燥した気候と、太平洋とアンデス山脈に囲まれ害虫が入りにくい地形によって、ヨーロッパを襲った害虫「フィロキセラ」の被害を受けていない。そのため、チリには樹齢100年を越えながら接ぎ木をしていないぶどうの樹も存在する。

トーレス氏は、そんなチリに惚れ込み、セントラル・ヴァレー地方に100haのぶどう畑を購入。ヨーロッパのワイナリーとして初めてチリに進出した。

スペインのバルセロナ近郊ペネデス地方で、140年以上に渡りワインをつくり続けているトーレス。早くから国際品種のワインづくりやステンレスタンクの使用など革新的なワインづくりに取り組み、スペインワイン界のリーダーとも称されている。そのトーレスの流れを汲み「ミゲル・トーレス・チリ」でも最新の技術を使ってワインが産出され、現在でもチリのワイン界を牽引し続けている。

ミゲル・トーレス・チリのワインづくり

「量より質」のワインづくり

IMGA0303

スペインのトーレスと同様に、ミゲル・トーレス・チリでも「量より質」を重視してワインがつくられている。質の高いワインをつくるために、毎日ぶどうの生育状況を分析し、良質なぶどうが収穫できるようにしている。さらに、ぶどうの個性を引き出すために、温度管理された醸造機器を使うなどトーレスが培ったワインの醸造技術や熟成技術がミゲル・トーレス・チリに伝授され、高品質のワインが産出されている。

環境にやさしいワインづくり

IMGA0341

ミゲル・トーレス・チリでは、ぶどうの栽培とワインの醸造において、環境保全のために様々な取り組みがなされている。ぶどう栽培においては、殺虫剤や除草剤などの化学薬品を使用せず、畑の土壌や周辺環境を保護する対策を取っている。さらに、自然環境を守るため、利益の一部を保全活動に寄付している。

ワインの醸造においても、軽量ボトルの採用や、代替エネルギーの使用、ラベルに再生紙を使用するなど、環境に配慮した取り組みがなされている。

フェアトレードを実践し人への敬意も忘れないワインづくり

IMGA0180

ミゲル・トーレス・チリは、自然に対してだけでなく、人に対しても敬意を払っている。チリで最大規模と評されるフェアトレードを実践していて、ぶどう栽培農家と公正に取引きし、マーケットよりも高く買い取ることを約束している。

さらに、労働環境を向上させるために、差別や児童労働の撤廃、法令の徹底順守、公正な給与形態など多くの取り組みを行っている。

ミゲル・トーレス・チリは、チリの自然とそこに暮らす人々や働く人々へ敬意を払い、その環境を大切にしている。それと同時に、「量より質」をモットーに高い品質を追求し、妥協を許さない姿勢で、高品質のワインを世に送り出している。

ミゲル・トーレス・チリのおすすめワイン

サンタ・ディグナシリーズ

Santa Digna

「サンタ・ディグナ」は、ミゲル・トーレス・チリのスタンダードシリーズ。1000円台で楽しめる。同シリーズはフェアトレード認証を取得しており、これはワインづくりに携わる人々を大切にする取り組みが評価されたものだ。ラインナップは7種類。なかでもサンタ・ディグナ・カベルネ・ソーヴィニヨン・レゼルヴァとサンタ・ディグナ・カベルネ・ソーヴィニヨン・ロゼ・レゼルヴァは、コンクールや専門誌で高く評価されている。

コルディエラシリーズ

Restaurante Miguel Torres in Santiago, Chile

「コルディエラ」は、スペイン語で山脈を意味する。シリーズ名のようにアンデス山脈のテロワールを最大限に表しているワインと評される。品種ごとに最適な土地で栽培したぶどうを使用し、こだわりを持って醸造した少量生産の上質なワイン。

特にスパークリングワインのミゲル・トーレス・コルディエラ・ブリュット・ピノ・ノワールは世界各国で多くの賞を受賞し、高い評価を得ている。世界中のスパークリングを集めてフランスで年1回開催される「泡の祭典」で世界のベスト・スパークトップ10に選ばれたこともある。

シングル・ヴィンヤードシリーズ

Mas-La-Plana-daytime

「シングル・ヴィンヤード(単一畑)」シリーズは、チリワインの最高峰を目指してつくられたシリーズ。最高の畑で栽培されたぶどうだけを使用。トーレスから伝授された栽培技術と醸造技術をつぎ込んだ、チリを代表する高品質なワインと評されている。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  ワインバザール編集部
ワインバザール編集部

世界各国のワインに関するニュースやコラムなどを配信していきます。