コラム

フランス|書籍『ワインの世界地図』(パイ インターナショナル)より

本記事は、発売元のパイ インターナショナルから許諾を得て、フランスでベストセラーの「読む」ワイン地図『ワインの世界地図-56カ国92地域のワイン産地の歴史と現在-』の一部をご紹介するものです。

『ワインの世界地図』は、ワイン誕生の歴史から、現在の生産状況までを地図を使って解説した「読む」地図帳。ワインが生まれた紀元前6千年の黒海沿岸地域の歴史から、現在生産されている品種までを時代と地域別に解説します。

今回は『ワインの世界地図』の中から、「フランス」について記したページをご紹介します。


フランスワインの歴史は川の流れに沿って綴られていった。

それぞれの産地で生まれた神酒は、この地を流れる河川によってルティア、ローマ、イングランドへと運ばれていった。フランスは世界中でワイン王国と称えられている。
土壌と気候の多様性から、多彩なテロワールのモザイクが形成されている。

歴史 ~ キリスト教に守られてきたフランスワイン

フランス人の大半は、ジョージア人やエジプト人が自分たちよりもはるか前にワインを造っていた事実に驚くことだろう。ブドウ樹は紀元前600年頃にギリシャ人によって、マルセイユ地域に植えられた。しかし、フランスの畑のほぼ全てを開墾したのはローマ人であった。ローマの兵士たちはアルザス地方のリースリングに酔いしれ、シャトーヌフ・デュ・パプに居を構えた教皇や司祭はローヌ地方のワインに惚れ込み、バチカンへ戻ることを拒んだという。フランスワインの発展は、キリスト教と密接に関係している。10世紀末には、各教会にブドウ畑があり、戦士や十字軍が平野を焼け野原にしている傍らで、修道士たちはワイン造りの伝統を守ってきた。

19世紀中葉、フィロキセラの大群がフランスの畑を襲った。この小さなアブラムシの襲来で、フランス全土のブドウ畑が壊滅状態に陥った。そのため、より抵抗力のあるアメリカ原産の株を接ぎ木として導入する打開策が選ばれた。こうして新たな畑が生まれたのである。

現代 ~ フランス語のテロワールに相応する訳語はいかなる言語にも存在しない

フランスはミクロ・テロワールが存在することで知られている。例を挙げるならば、ブルゴーニュ地方の原産地統制呼称(AOC)に認定されている地区の数は、世界第3位の生産国であるスペイン全土の地区の総数よりも多い。また、テロワールという概念は、他の言語に訳しきれないものである。

各産地の伝統と技術を守るために1936年に実施された原産地統制呼称(AOC)制度が、ワイン産業全体をより高い水準へと引き上げた。今フランスは、新興市場に適応しながら、世界のリーダーとしての地位を維持するにはどうすべきかという課題に迫られている。ワイン産地が観光地としても賑わっているフランスは、ヨーロッパのワインツーリズムのパイオニアと見なされている。

主な栽培品種

カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、ピノ・ノワール(Pinot Noir)、ガメ(Gamay)、メルロ(Merlot)、グルナッシュ(Grenache)、シラー(Syrah)

シャルドネ(Chardonnay)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc)、シュナン・ブラン(Chenin Blanc)、ユニ・ブラン(Ugni Blanc)
※土着品種


『ワインの世界地図- 56カ国92地域のワイン産地の歴史と現在-』

著:ジュール・ゴベール‐テュルパン
ワイン、ガストロノミー、文化遺産を紹介する地図とガイドブックの作成に特化した広告会社、「Atelier Plum(アトリエ・プリュム)」を2013年に設立。2014年に『ボルドーワイン地図』を発行して以来、4冊のワインガイドブック(4か国語)、92のワイン産地の地図を作成している。現在、社名を「Ces Gens-là(セ・ジョン-ラ)」に変更。本書ではライターとして概説の執筆を担当している。

地図デザイン:アドリアン・グラント・スミス・ビアンキ
グラフィックデザイナー。ジュールと共同で「Atelier Plum(アトリエ・プリュム)」(現在「Ces Gens-là(セ・ジョン-ラ)」に社名変更)を設立。
同社が発行する出版物のデザインを担当。本書でも地図のデザインを手掛けている。

訳:河 清美
広島県尾道市生まれ。東京外国語大学フランス語学科卒。翻訳家、ライター。共著書に『フランスAOCワイン事典』(三省堂)、主な訳書に『ワインは楽しい!』『コーヒーは楽しい!』『ウイスキーは楽しい!』『美しいフランス菓子の教科書』(小社刊)などがある。

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