コラム

フランス南西部(=シュッド・ウエスト)に注目すべし! 世界的なトレンドを追い風に、注目集まるシュッド・ウエストワイン

2018年11月27日、フランス大使館にてシュッド・ウエスト(フランス南西部)のワインをテーマとしたセミナーが催された。講師は、日本を代表するトップソムリエの石田博氏だ。

セミナーでは、世界的なワインやドリンクのトレンドに触れながら、シュッド・ウエストのワインが注目されている理由について解説された。


フランスワイン全体の前年比販売量はほぼ横ばいなのに対し、シュッド・ウエスト産のワインだけは前年比23%増と大きく伸びている。その理由はどこにあるのだろうか。

トレンドとなっているワイン業界注目のキーワード

2018年現在、ワイン業界で注目されているキーワードとして、次のようなものがある。

ロゼワイン

オレンジワイン

3年ほど前から大きな盛り上がりをみせているロゼワイン。オレンジワインも1年ほど前からよく話題に上るようになった。どちらも継続してその勢いを保っている。

ペットナット

「ペットナット」(Pet Nat)とは、ペティヤン・ナチュレルの略だ。
ペティヤン・ナチュレルは、ワインに酵母と糖を加えて栓をして、瓶内でガスを発生させる醸造方法でつくられた微発泡ワインのこと。ナチュラルで軽快、気軽に飲める発泡ワインとして注目されている。

土着品種

その土地でしか取れない土着品種のぶどうからつくったワインと郷土料理を合わせるスタイルが、定番の1つになりつつある。
中でも現在は、白ぶどうの土着品種が注目されているとのことだ。

ペアリング

ワインと料理を合わせるペアリングは、日本のみならず世界中のレストランで普及し、独自性やクオリティを競っている。
カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった定番品種以外のワインを数多くそろえることが、多彩な料理とのペアリングを可能にする。そんな理由から、多様な品種のワインが広まる一因となっている。


ワインの生産国に関しては、近年注目を集めているのはフランス・イタリア・スペインといった国々ではなく、またニューワールドと呼ばれる南米やオセアニアでもない。ジョージア・ギリシャ・ルーマニア・クロアチアなどだという。

これらの国々はワインづくりの歴史が長く、土着品種を使って伝統的な独自性の高いワインをつくっている。

これまでは自国での消費が多かったが、このところ海外への輸出量が増えている。

飲料全体に目を向けると?

次に、飲料全体のトレンド動向を把握しよう。イギリスの専門誌「The Drink Business」の発表した2018年のドリンクトレンドは、次のような内容だ。

ユニークな体験

単なる「飲む」という行為を超えて、楽しさや新たな発見が望まれる。その唯一無二の体験を、人は求めている。

ストーリーのある商品

消費者は商品に、歴史・文化・美食文化(=ガストロノミー)といった背景を求め、ストーリー性のある商品が好まれる。

クラフト

クラフトビールやクラフトジンに代表されるクラフトマンシップ、つまりは手作り感や職人気質が注目を浴びている。
こういった指向はまだまだ拡大を続けるだろう。

「オーセンティック」よりも「アクセシビリティ」

「オーセンティック」とは「正統派、王道」といった意味。これまではオーセンティックが好まれていたが、現在は「アクセシビリティ」が優先される傾向があるという。
「よりアクセスしやすい」、つまりは身近で手に入り親しみの持てるものが好まれるそうだ。

シュッド・ウエストの概要と独自性

ここまでに取り上げたトレンドを踏まえて、なぜ今、フランスの中でも南西部、シュッド・ウエストに注目が集まっているのかを検証してみよう。

シュッド・ウエストは、アメリカのワイン専門誌「ワイン・エンスージアスト」により、「ワイン・リージョン・オブ・ザ・イヤー2017」に選ばれた。ここ数年、ワインの質が非常に向上し、コストパフォーマンスの良い高品質なワインが増えたことが評価されたそうだ。

シュッド・ウエストには130もの土着品種があり、多くの農家が長年それらの品種を育て続けている。約1000軒のつくり手、約5000軒の農家があり、生産量は白が多い。ペティヤンやクレマンといった発泡ワインも多くつくられ、自然派のつくり手も年々増え続けている。

この「生物学的な多様性」(=Bio Diversity)という要素が、ワイン業界のみならず全世界の農業の大きなトレンドになっている。その多様性が生み出すバラエティ豊かなワインが、注目を集めているというわけだ。

さらに、フランス南西部には優れた郷土料理が多い。いわゆる「ビストロ料理」の6~7割は、南西部の料理をベースにしていると言われるほどだ。そのため、実に豊富なペアリングの可能性が広がっており、注目度が上がっている一因と考えられる。

このような状況から、シュッド・ウエストへの注目が高まっているようだ。

比較的安価に、高品質なワインを購入できるのもシュッド・ウエストの魅力の1つだろう。今後、シュッド・ウエストで活躍する良質なつくり手が、日本にも紹介されることを期待したい。

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About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身