コラム

フランス国内でブームの兆し? サヴォワワインの魅力をご紹介

2019年9月5日、サヴォワワインのマスタークラスがフランス大使館で開講された。

読者の皆さんのなかで、サヴォワのワインを飲んだことがある方はどのくらいいるだろうか。山岳地帯のサヴォワ地方だが、谷間の丘陵地でぶどうが栽培されており、年間約1,600万本のワインを産出する。しかし、その95%がフランス国内で消費され、輸出されるのはたったの5%。日本に輸入されている銘柄はごく少ない。

しかし、土着品種を使用したワインが世界中で注目される昨今、サヴォワワインへの注目度も上昇している。サヴォワならではの独特の味わいを持つワインは、フランスの星付きレストランのワインリストに採用されるものも多く、品質が非常に高い。

今回は、魅力溢れるサヴォワワインについてご紹介していこう。

サヴォワ地方の気候

サヴォワの平均標高は1,500m。そして3,500m級の山を36も有する高山地方だ。とはいえ、ぶどうの栽培地は谷間のため、標高250mから500m。十分な日照時間も確保できる土地だ。昼間は陽光が差し暖かいが、夕方には高地から冷たい風が吹き、その寒暖差が白ぶどうの生育に適している。

また、複数の気候が混じり合い、多様な地勢も手伝って複雑な気候が生まれている。土壌も同様に多様で、それぞれに適したぶどうが植えられている。

サヴォワ特有の品種

サヴォワには、サヴォワにしか存在しない品種がある。それらを含め、全体で23種のぶどうが栽培されている。特徴的なぶどうを紹介しよう。

白ぶどう

・ジャケール:サヴォワの主要品種の一つ。洗練された透明感のあるタイプか、リッチな熟成型か、どちらにも仕立てることができる。
・アルテス:ぶどうが熟すにしたがい、ゴールデンピンクから鈍い赤(rousse)に変色することから、ルーセットという別名を持つ。繊細な果実味を持ち、フレンチアルプスで最も有名な品種だ。
・シャスラ:スイスの主要品種だが、サヴォワでも使用される。豊富なミネラル感を特徴とする。
・ルーサンヌ:ベルジュロンとも呼ばれる晩熟の白品種。
他に、シャルドネ、グランジェ、モレットなども使われる。

黒ぶどう

・モンドゥーズ:シラーとつながりのある、サヴォワ赤のシンボルとも言える品種。サヴォワにおいて、最も重要な品種とも言われる。
他に、ガメイ、ピノ・ノワール、ペルサンなども使われる。

サヴォワ地方のAOP

サヴォワ地方には、4つのAOP(原産地呼称保護)が存在する。

ヴァン・ド・サヴォワ

サヴォワ地方のAOPのなかでは、多様なぶどうが使われる。1248年のグラニエ山の崩落により、泥と石灰石で構成される混沌とした土壌のエリアでは、多くのぶどうが収穫される。

ルーセット・ド・サヴォワ

白ワインのみ作られるAOP。アルテス品種が使われる。

セイセル

サヴォワ地方で最初にAOP(AOC)認定を取得した。白および発泡ワインのみ作られる。使われる品種はアルテスとモレットの2種類。

ビュジェイ

2009年、新たにAOPに昇格した。赤ワイン、白ワイン、発泡性ワインを産する。

クレマン・ド・サヴォワ

フランス国内でクレマンを名乗れる発泡ワイン産地は8つあるが、一番最近、2015年9月に認定されたのがこのクレマン・ド・サヴォワだ。サヴォワ地方では伝統的にスパークリングワインが作られてきたが、近年クレマンの仕様に則った瓶内二次発酵の発泡ワインが多く作られるようになり、ついにクレマンの仲間入りを果たした。この認定は、サヴォワワインの今後の発展に大きく寄与すると考えられている。

サヴォワワインの歴史

サヴォワでは、紀元前1世紀にはぶどうづくりが行われていたとされる。中世には品質向上のため様々な試みがなされ、16世紀以降は、ぶどう畑を海抜1000mくらいまでの険しい山岳地帯へ広げた時期もあったが、その後、平原へ戻っていった。19世紀後半には他のヨーロッパの国々と同様、フィロキセラによる大きな被害を受けるが、アメリカの台木を接ぎ木し再興する。

サヴォワ地方のワイナリーには5代、6代と長年続いているところが多く、若い当主は銘醸地へ修業に行き、サヴォワへ戻ると家業を継ぐ。ぶどうは今もサヴォワを代表する農作物として、大切に育てられている。また、サヴォワ地方では苗木の育苗業が非常に盛んだ。一時期は多くのエリアに広がった畑も、今は効率よく良質のぶどうが採れる場所に集約されるようになった。

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About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身