ボルドーワイン委員会は2020年4月24日、2019年ヴィンテージの情報と、新しいシーズンが始まる2020年春の状況について発表した。
辛口白ワインの傑作がそろう、2019年ヴィンテージ
例年、「プリムール・ウィーク」と呼ばれる4月第1週には、前年の秋に収穫したぶどうからつくられたワインが食品流通業界や報道の関係者に披露される。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、2019年ヴィンテージを披露する機会は改めて設けられることとなった。
2019年に起きた出来事や事象、それらがヴィンテージに与えた影響については、ボルドー大学ぶどう・ワイン科学研究所(I.S.V.V.)がまとめた資料の中で紹介されている。
同研究所によると、2019年は「辛口白ワインは傑作ぞろい、赤ワインも香りに満ち、優美で風味たっぷりの成功年」とのことだ。
2020年春の近況
新型コロナウイルス感染症への対策
フランスでも新型コロナウイルスが猛威を振るっているが、同政府はワイン用ぶどう栽培農家をはじめとする農業従事者に対し、外出制限規制の例外措置を設けている。畑では既に生育サイクルがスタートしており、管理作業が必要だからだ。
栽培スタッフらは畑へ出ることが許されているが、スタッフ同士が距離を取るなど、感染予防対策措置の遵守が求められている。
剪定:気候変動の影響に対する調整ツールとして
ボルドーのぶどう畑では、現在、剪定の仕上げと剪定した枝を樹から外す作業を行っている。
理論上、剪定作業は落葉直後に開始するが、近年は晩期剪定を採用するヴィニュロンが増えてきているという。
晩期剪定の効果としては、萌芽を遅らせ、春の遅霜の被害から畑を守ることができる点と、フェノール成分の生成サイクルのスタートをずらし、ぶどうの成熟期をより理想的な時期(夏の暑さのピークを過ぎた頃)へと先延ばしできる点の2つが知られている。
切り落とした剪定枝は、まとめて粉砕される。枝に含まれる有機物は土壌改良剤となり、自然に還元されていく。
ボルドーの草生栽培
ここ数年で、農地や果樹園に生えた草花の根を利用して土壌を管理する、草生栽培の技術が一般的になってきた。春になると、ボルドーでも草生栽培の光景が見られる。現在では、ボルドーのぶどう畑の90%が草生栽培を採用しているという。
植物の根は土壌の空隙率を高めて、地中の微生物の増殖を促す。地表面では植物が土壌の侵食を防ぎ、生物多様性の維持に役立つ。
草生栽培に用いる植物には、ぶどう樹と競合させたり、樹勢の調整に役立てたりと、畑に適した特性を持つものが選ばれる。主にイネ科のえん麦やマメ科のクローバーなどで、これらは緑肥としても使われる。
草生栽培で育つ草や花は、景観づくりにも一役買っている。ぶどうの樹と草花が織りなす美しい景色は、住民だけでなく観光客からも好評だという。
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