コラム

ボルドーワイン2020年ヴィンテージ:ぶどうの出来は良好

ボルドーワイン委員会(CIVB)は2020年10月29日、2020年ヴィンテージのぶどうの品質について発表した。新型コロナウイルス感染症の流行により、ワイン生産者の環境は例年とは異なった。しかし、ぶどう栽培においては新型コロナウイルス感染症の影響は少なく、非常に品質の高いぶどうができたという。

収穫量は少なめだが品質は良好:「偉大なヴィンテージの条件」をクリア!

2020年ヴィンテージのぶどうは、ボルドー大学醸造学部が定義した「偉大なヴィンテージの条件」を2つクリアしている。

1つ目は、「開花時期が早く、受粉から結実が迅速かつ均質に進むこと」という条件。2020年のぶどうの開花時期は、例年よりおよそ2週間早かった。開花後も好天が続き、ぶどうの成長が申し分ないペースで進んだ。

2つ目は、「色付きの期間に水分ストレスがかかること」という条件。2020年のボルドーは、1959年以来最も雨の少ない夏となり、6月末から色付きが終わる8月上旬までの期間、ほとんど雨が降らなかった。つまり、ぶどうに水分ストレスをかけるには十分過ぎる環境だった。

このように、偉大なヴィンテージの条件を2つクリアし、品質は申し分ないのだが、収穫量はやや少なかった。その結果、ワイン生産量はおよそ500万hlと過去10年の平均を下回りそうだという。

収穫量が減った大きな原因は2つあり、1つはベト病の被害が出たためだ。5月前半と6月に雨が降り続いたため、ベト病が発生。しかし、降雨が開花や色付きの時期とずれていたため、悪くなった房を切り落とすだけで済んだ。結果としてぶどうの収穫量は減ったものの、品質には影響がなかった。

もう1つは、夏に雨が極端に少なかったことと、8月末から9月前半にかけて高温になったことで、ぶどうの実が小粒になったためだ。これも確かに、収穫量が減った原因といえるが、うま味が凝縮され、品質には良い影響を与えた。

2020年のワインはまだ醸造途中であり、「素晴らしいヴィンテージ」と言い切ることはできないが、生産者達は大きな期待を持っているという。

ぶどう品質が良好な理由

理由1:新型コロナの影響は少なかった

前述した通り、2020年ヴィンテージはぶどう品質が高く、ワインにも大きな期待がかかる。ぶどう品質が良好だった理由として、まずは新型コロナウイルス感染症の影響が少なかったことが挙げられる。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が、ぶどう栽培や収穫作業に影響を及ぼしたことは事実だが、品質や収穫量に影響が出るようなものではなかった。春先には、フランス全土で外出制限が実施されたが、畑での農作業は必須の営みとして、例外的に許可されていた。そのため、ぶどうの栽培作業や管理が滞ることはなかった。

ぶどうの収穫は、感染を防ぐために社会的距離を取る必要があり、例年とは異なる形態で行われた。しかし、入念な準備のおかげで、円滑かつ順調に作業が進んだという。

理由2:天候に恵まれた

2020年のボルドー地方は、ぶどうの生育期間中、さまざまな天候被害に見舞われたものの、ぶどう育成の重要な時期から外れていたり、被害地域が限定的だったりした。総合的に見ると、ぶどう栽培に適した気温、降水量、日照時間などの条件がそろった、天候に恵まれた年だったといえる。

今年、ボルドー地方では暖冬の影響で、平年より2週間早い3月末に芽吹いた。4月には雹(ひょう)やあられを伴う雷雨、5月には大雨によるベト病の被害が出たものの、いずれも限定的だった。6月末から8月上旬までは、雨がほとんど降らなかった上に、高温の日が続いた。それにより、ぶどうに水分ストレスが加わり、風味成分がしっかりと凝縮された。また、暑いだけでなく昼夜の寒暖差が十分にあり、さらに育成期間が早く推移したことで、収穫時期が例年よりも早まった。そのため、十分に熟成しつつも新鮮さを失っていない、素晴らしいぶどうが実った。

ボルドー地方では、8月15日頃から、スパークリングワインであるクレマン用のぶどうと、白ぶどうの収穫を開始。下旬にはロゼワイン用の黒ぶどうの収穫を開始した。赤ワイン用品種の収穫は、早熟のメルローが9月5日頃から、カベルネ・フランとカベルネ・ソーヴィニヨンは14日頃から始まり、月末までには生産者の大半が収穫を終えた。

2020年の黒ぶどうは、どの品種も果皮が厚めになった。その結果、豊かな濃い色調としっかりしたタンニンを持った、力強い赤ワインが生まれそうだという。また、赤白ともにアルコールと酸のバランスが素晴らしく、2020年ヴィンテージのワインの出来に期待が高まっている。

<関連リンク>
ボルドーワイン「2020ヴィンテージ」速報!

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  ワインバザール編集部
ワインバザール編集部

世界各国のワインに関するニュースやコラムなどを配信していきます。