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世界中の優れたワイナリーを審査する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード(World’s Best Vineyards) 2020」において、2019年に続き、2年連続で1位に輝いたアルゼンチンのズッカルディ・ヴァレ・ド・ウコ(Zuccardi Valle de Uco、ズッカルディ)。今回、ベスト南アメリカも同時受賞し、ますます世界中から注目されている同ワイナリーには、どのような特徴があるのだろうか。
灌漑設備メーカーからアルゼンチンの有力ワイナリーへ
オーナーであるズッカルディ家は、1963年の創業以来、家族でワイナリーを経営している。元々は灌漑(かんがい)設備のメーカーだったが、その後ぶどうの栽培とワイン製造へ事業を転換。最新の醸造機器や醸造技術を積極的に導入し、ぶどうの品質向上に成功した。現在は、約600haもの自社畑を所有している。
また、現在3代目当主を務めるセバスチャン・ズッカルディ氏が、「南米No.1ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー2019」を受賞するなど、アルゼンチンを代表するワイナリーへと発展を遂げた。現在のワイナリーは、ウコ・ヴァレーと呼ばれる標高が高いアンデス山脈の麓に、2016年3月に建設したものとなる。
高地の特性を生かした多様なワインづくり
ズッカルディは、アルゼンチンの中央に位置するメンドーサ州にある。同州は、フランスのボルドーやアメリカのナパ・バレーなどと並ぶ世界10大ワイン首都の1つで、アルゼンチン国内の約8割のワインが製造されている。銘醸地となった理由は、同州のテロワールにある。
メンドーサ州は平均標高900mという高地にあり、昼夜の温度差が激しく日照時間が長いこと、山脈の雪解け水を使用した灌漑設備が発達していることなどから、ぶどう栽培に適している。土壌は豊富にミネラルを含んだ花崗岩とミネラルの少ない砂岩が混じっており、数m離して植えたぶどうが全く異なる育ち方をするほどの多様性を持つ。
ズッカルディはこの土地を充分に研究し、マルベック、カベルネ・フラン、ボナルダ、テンプラニーリョなど、さまざまな種類のぶどう品種を、土壌に合わせて数mごとに植えている。また、病原菌が活動しにくい、標高の高い場所に畑があることから、使用する農薬も少ないため、近年は有機栽培にも力を入れている。
こだわりのコンクリート製エッグタンク
ズッカルディが注力しているのは、ぶどうの栽培だけではない。ワイナリーの内部には、国内初となる卵型のコンクリートタンク「エッグタンク」を設置した。それらのタンクはエポキシ樹脂を用いずにつくられている。
コンクリートのタンクは、ステンレス製よりも外部との断熱性に優れており、卵型の形状により気圧の変化で内部の液体が対流し、自然に澱(おり)との撹拌(かくはん)が進行するため、酸化リスクが減るメリットがある。また、コンクリートタンクで熟成させたワインは、香りが移る木製樽よりもぶどう本来の味が楽しめるそうだ。
ズッカルディでは、ぶどうを全て手摘みで収穫し、丁寧なワインづくりをしている。その後も徹底した品質管理を行うことで、ワインの味を損なうことなく高い品質を保っている。
ズッカルディは土壌を研究し尽くしたぶどう栽培と、繊細なワインづくりに加え、独自の品質管理により、「ワールド・ベスト・ヴィンヤード」の受賞理由の1つである「素晴らしい高地ワイン」を生産しているのだ。
絶景レストランで締めくくるワイナリーツアー
ズッカルディがワールド・ベスト・ヴィンヤードに選出された理由の2つ目が「併設レストランの素晴らしさ」だ。同ワイナリーの設立とともに2016年にオープンしたレストラン「Piedra Infinita Cocina」では、雄大なアンデス山脈や広大なぶどう園を望む絶景のもと、地元で採れた季節の食材を使用した料理とズッカルディのワインとの絶妙なマリアージュを楽しめる。
ワイナリーツアーでは、まずぶどう園を訪れ、専門のガイドからテロワールや収穫作業についての説明を受ける。次にワイナリーを見学し、周囲の素晴らしい自然風景に溶け込むように建てられた美しい建物の中で、建物の構造やワインづくりの工程の話を聞く。テイスティングをした後は、ツアーの締めくくりとして、レストランでワインと食事のペアリングを堪能できる。
ズッカルディのおすすめワイン
ホセ・ズッカルディ
ズッカルディのフラッグシップワインで、2代目当主の名前が付いている。高品質なのに低価格で入手しやすいなどの理由から、2020年にアメリカのワイン専門誌『ワインスペクテイター(Wine Spectator)』のトップ100にも選ばれている。熟した赤系果実の味わいと、しっかりとしたタンニンとが見事に調和している。
ズッカルディ・キュウ・マルベック
厳選された高品質のぶどうでつくる、クオリティワイン。アルゼンチンを代表するマルベック品種が使われている。1997年に最初のヴィンテージがリリースされてから最も名を広めたワインの1つで、カシスやレーズン、ブルーベリーなどの香りに、スパイシーな香辛料や樽由来のタバコのニュアンスが感じられる。
ヴィダ・オーガニカ シャルドネ
有機栽培に取り組むズッカルディの有機栽培ぶどうを100%使用した白ワイン。オーガニック認証機関の認証も取得している。かんきつ系のフルーツやはちみつの香り、滑らかな後味が心地よいワインだ。