コラム

世界的に入手困難! ワイン界の寵児が率いるグレッツァー・ワインズ ~解説:オーストラリアのワイナリー

フランスやイタリアなどのワイン伝統国に対し、ニューワールド(新世界)に位置づけられるオーストラリア。ヨーロッパの生産地に比べると歴史は浅いが、今や世界各地で人気の高いワインを生み出している。

さまざまなぶどう品種が栽培され、数多くの生産者がしのぎを削るオーストラリアで、手掛けるワインが世界的に入手困難となっている人気のつくり手、グレッツァー・ワインズ(Glaetzer Wines)を紹介する。

グレッツァー・ワインズとは

グレッツァー・ワインズは、南オーストラリア州のバロッサ・バレーに位置する家族経営のワイナリーだ。“パーカーポイントで連続満点”という偉業を成し遂げた、醸造家ベン・グレッツァー氏がワインづくりを手掛ける。

ワイン界の若き天才醸造家ベン・グレッツァー

今やオーストラリアを代表するワインメーカーとなったベン氏は、グレッツァー・ワインズの他に、ミトロ、ハート&ソイルでもワインづくりに関わっている。

ベン氏が手掛けた「グレッツァー・アモンラ・シラーズ」「ミトロ・GAM・シラーズ」は、パーカーポイントで満点を獲得。また、彼自身も「2004 カンタス/ワインマガジン ヤング・ワイン・メーカー・オブ・ザ・イヤー(Qantas Young Winemaker of the Year)」や、『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』誌の「ワイン・パーソナリティズ・オブ・ザ・イヤー(Robert M. Parker Jnr’s Wine Personality of the Year) 2005」に選出されるなど、ワイン界の寵児、若き天才醸造家として名をはせている。

グレッツァー・ワインズの歴史

グレッツァー家のバロッサ・バレーでの歴史は、ベン氏の祖父の代にさかのぼる。ドイツのブランデンベルグからバロッサ・バレーに移住してきた祖父は、初期のぶどう栽培農家の1人として、1888年からぶどう栽培に取り組んだ。

ベン氏の父コリン・グレッツァー氏は、オーストラリア初の農業大学ローズワーシー大学で学んでいる。卒業後は、オーストラリアで最も古いワイナリーの1つであるセペルトなどでワインメーカーとして働き、さまざまな業績を残した。

ベン氏も父が学んだローズワーシー大学を卒業。世界各地のワイン産地で働いた後、父コリン氏とワインづくりを始めた。

ベン氏の祖父がオーストラリアに移住して1世紀以上がたった1995年、コリン氏は妻とベン氏を含む3人の息子とともに、生産量を限定した最高品質のバロッサ・バレー産ワインをつくるため、ファミリーワイナリーのグレッツァー・ワインズを設立した。

「ワインはぶどう畑からつくられる」という信念を掲げ、バロッサ・バレーの最高級区画エベニーザーで古樹を大切に管理し、質の良いぶどうをつくっている。その最高品質のぶどうを使用してグレッツァー・ワインズが産出するワインは、独特かつエレガント。ワイン評論家から絶賛され続けており、入手が困難となっている。

ワインづくりに対する姿勢

グレッツァー・ワインズでは、フランスのテロワールの概念とオーストラリアでのぶどう栽培で培った知識を融合させたぶどう栽培を行っている。エベニーザーという最高級区画の古樹から収穫されるぶどうは1ha当たりの収量が決められており、非常に品質が高い。

また、ワインづくりにおいては、「余計な手を加えず、ぶどう本来の風味を大切にする」というこだわりから、厳選した発酵用酵母を使用している。

このように、強い信念とこだわりから生まれるグレッツァー・ワインズのワインは、エレガントで独創的な最高峰のワインであるとともに、バロッサ地区の古典的かつ典型的なワインと評されている。ワイン界に大きな影響を及ぼすパーカーポイントの高得点を何度も獲得しており、今や世界的に人気の高い入手困難なワインとなっている。

グレッツァー・ワインズのおすすめワイン3選

その人気ぶりから、希少性も高いグレッツァー・ワインズのワイン。その中から、おすすめのワイン3種を紹介する。

グレッツァー・アモンラ・シラーズ

グレッツァー・ワインズおよびベン・グレッツァー氏を代表する、シラーズ100%の最高級ワイン。エベニーザー地区の樹齢80~120年の樹から収穫したぶどうを使用している。収量は0.6~2.4t/ha。1~2tの開放樽で発酵させ、1日に3回、タンク上部に浮いてくる果帽(果皮や果肉、種子)を果汁に沈めて漬け込む作業(ピジャージュ)を行う。ぶどう本来の風味を残すために澱(おり)の上で熟成させた後、フィルターを通さずに瓶詰めしている。

濃厚なガーネット色と、ベリーやプラム、スパイスが幾重にも重なっているような香りを持つ。タンニンのバランスが非常に良く、余韻が長く続く。

このワインは、どのヴィンテージも非常に高い評価を獲得している。著名なワイン評論家ロバート・パーカーJr.氏も「求められるシラーズの特徴が全て完璧に表現され、途方もない密度と複雑さを兼ね備えたワインである。このワインはどんなに苦労してでも、探し出して味わう価値がある」と絶賛。非常に入手が困難で、アメリカでは1500ドル(約19万円)の値が付いたこともある。

品種:シラーズ
味わい:辛口、フルボディ
参考小売価格: 1万1008円(税込)

グレッツァー・ビショップ

エベニーザー地区の樹齢35~120年の古樹から収穫されたぶどうを使用。収量は3t/ha。収穫後すぐに発酵させて、14~16カ月ほど樽熟成する。使用する樽の90%がフレンチオーク、10%がアメリカンオークとなっている。

ブラックベリーやカシスの香りの中にオークの香りをわずかに感じる。果実の味わいと香り、タンニンや酸のバランスが非常に良い。熟成させても、若いうちに飲んでも楽しめるワイン。

品種:シラーズ
味わい:辛口、フルボディ
参考小売価格:5728円(税込)

グレッツァー・ワラス

エベニーザー地区の樹齢45~130年の古樹から収穫されたシラーズと樹齢75年の古樹から収穫されたグルナッシュを使用し、フレンチオークおよびアメリカンオーク樽で16カ月熟成させている。収量は3.5t/ha。

ブラックベリーやラズベリーのフルーツ香を持ち、その中にスパイスの香りも感じる。シラーズの力強さとグルナッシュの果実味が上手く調和し、重厚なワインになっている。

グレッツァー・ワインズが産出するワインシリーズの中で最も安価でありながら、品質が非常に高く、コストパフォーマンスに優れている。パーカー氏はこのワインを飲んで、「ベン・グレッツァーのつくるワインの素晴らしさには脱帽するばかりだ」と評した。

品種:シラーズ、グルナッシュ
味わい:辛口、フルボディ
参考小売価格:3168円(税込)

天才醸造家と名高いベン氏が手掛けるワインは、非常に入手困難な“カルトワイン”となっている。チャンスを逃さず、ぜひ味わってみてほしい。

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