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2022年で18回目を迎える「日本ワインコンクール(Japan Wine Competition)」は、国産ぶどうを100%使用した“日本ワイン”を対象としたコンクールだ。2003年から開催されている。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、ここ2年は開催が見送られてきたが、2022年7月に3年ぶりに開催された。山梨県の会場で、25人の審査員が全国のワイナリーから出品されたワインを公平かつ厳正に審査し、同月26日に受賞ワインが発表された。
2022年は過去最多のワイナリーが参加
2022年は全国27道府県から過去最多となる108ワイナリーが参加し、全706銘柄がエントリーした。全12の部門ごとに、部門最高賞10銘柄、金賞24銘柄、銀賞71銘柄、銅賞109銘柄、奨励賞56銘柄、コストパフォーマンス賞4銘柄が選ばれた。
道府県別の受賞数は山梨県が85銘柄でトップ、続いて長野県の70銘柄、山形県の24銘柄、北海道の21銘柄となっている。
欧州系品種 赤 部門最高賞「ソラリス 千曲川 メルロー」
欧州系品種 赤部門で部門最高賞に輝いたのは、マンズワインの「ソラリス 千曲川 メルロー」だ。「ソラリス」は、“日本の風土で、世界の銘醸ワインと肩を並べるプレミアムワインをつくる”ことを目標にしたシリーズで、マンズワインが長らく培ってきた栽培、醸造技術が生かされている。
マンズワインは、長野県小諸市大里地区でいち早く欧州系ぶどうの栽培を開始した生産者だ。「ソラリス 千曲川 メルロー」には、樹齢30年以上のものを含む、自社管理畑および契約栽培畑のメルローを使用している。収穫、選果、除梗を手作業で丁寧に行い、ステンレスタンクで発酵後、樽で約20カ月間育成することで生み出される、滑らかでバランスの良い味わいが特徴の逸品だ。
欧州系品種 白 部門最高賞「菊鹿シャルドネ 樽熟成2019」
欧州系品種 白部門では、熊本県山鹿市菊鹿町にある菊鹿ワイナリーの「菊鹿シャルドネ 樽熟成2019」が部門最高賞を獲得した。盆地の山風と、昼夜の寒暖差がシャルドネに良い影響を与えるこの地域で、2018年に栽培をスタートした自社畑のぶどうを中心に、菊鹿町葡萄生産振興会の「菊鹿町産ぶどう」「山鹿市産ぶどう」でワインを醸造している。品種別に少量を仕込むため、コンパクトな設備を使用して、ぶどう栽培から瓶詰めまで、気候風土を生かしたワインづくりに取り組んでいる。
「菊鹿シャルドネ 樽熟成2019」は、果実と樽由来の深みのバランスが取れたリッチなワインだ。輝く黄金色が美しく、粘性は強めでやや熟成感がある。華やかなアロマと樽熟成由来のニュアンスを感じることができ、シルキーな酸と適度な香ばしさが融合して全体をまとめている。凝縮した果実味がゆっくりと口いっぱいに広がり、上品でエレガントな余韻を長く楽しめる。
国内改良等品種 赤 部門最高賞「NAC マスカット・ベリーA [遅摘み] 2019」
国内改良等品種 赤の部門最高賞に輝いたのは、長野県塩尻市の井筒ワインが手掛けた「NAC マスカット・ベリーA [遅摘み] 2019」。井筒ワインは、1933年(昭和8年)に信州桔梗ヶ原にワイン醸造メーカーとして創業。以来、現在まで、ぶどうの栽培、収穫から、醸造、瓶詰めまでを一貫して行い、桔梗ヶ原に根ざしたワインの質、価値を追求している。
「NAC マスカット・ベリーA [遅摘み] 2019」は、長野県原産地呼称管理委員会認定品で、塩尻市で栽培したマスカット・ベーリーAを100%使用している。果実の凝縮感を高めるため、収穫量を抑えて収穫時期を遅らせることで、より濃厚な味わいに仕上げている。
甲州 部門最高賞「シャンモリ 柑橘香 勝沼甲州 2021」
「甲州」の部門最高賞は、山梨県甲州市に位置する盛田甲州ワイナリーの「シャンモリ 柑橘香 勝沼甲州 2021」が受賞。同ワイナリーは、甲州で栽培されていたぶどうに目を付けた盛田家11代目の久左衛門が、1881年(明治14年)に尾張国知多郡小鈴谷村(現・愛知県常滑市小鈴谷)で醸造用ぶどうの植え付けを開始したことが始まりだ。現在は甲州市勝沼町に工場を構え、甲州、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのプレミアムワインを熟成、貯蔵している。
「シャンモリ 柑橘香 勝沼甲州 2021」 は、甲州市勝沼町の岩崎地区で栽培した甲州を100%使用している。品種の香りを最大限に引き出すために特別に栽培された甲州ぶどうからは、爽やかなかんきつ系の香りが醸し出され、すっきりとした飲み口と酸味が特徴だ。同ワインは金賞とコストパフォーマンス賞も受賞している。
極甘口 部門最高賞「ソラリス 信濃リースリング クリオ・エクストラクション」
欧州品種 赤部門で部門最高賞に輝いたマンズワインは、極甘口の部門最高賞受賞ワインも手掛けている。
「ソラリス 信濃リースリング クリオ・エクストラクション」は、長野県産の信濃リースリング(マンズワインがシャルドネとリースリングから交配した品種)を使用している。完熟ぶどうを凍らせ、溶けてくるところを搾る“クリオ・エクストラクション”という、手間と時間がかかる製法でつくられており、凍結によって果皮の細胞壁が破壊されて成分が抽出されやすくなるため、豊かな香りの果汁を得ることができる。通常使用する原料の3倍量をぜいたくに使用するため、濃厚で、信濃リースリング種の魅力が十分に引き出されている。
スパークリングワイン 部門最高賞「安心院スパークリングワイン」
「スパークリングワイン」の部門最高賞に輝いたのは、焼酎「いいちこ」で知られる三和酒類が運営する安心院葡萄酒工房が手掛けた「安心院スパークリングワイン」だ。大分県宇佐市安心院町は、降水量が少なく、昼夜の寒暖差の激しい盆地に位置する。安心院葡萄酒工房は、風土に適したぶどうの品種選定や新しいぶどうの品種開発、ワインをよりおいしくするための土壌改良など、さまざまな取り組みを行っている。
「安心院スパークリングワイン 」は、安心院町で収穫したシャルドネを100%使用し、国内では珍しい瓶内二次発酵を行っている。1本ずつ丁寧に澱を抜いて仕上げたワインは、艶やかで緑色を帯びた金色に輝く。かんきつに加え、花やトーストのような香りが重なり合い、口に含むとキレのある酸味とミネラルが感じられる。きめ細やかな泡立ちとさっぱりした味わいで、余韻にはかんきつ橘の香りを楽しめる。
総じてワインの品質向上が見られた2022年
今回のコンクールは、3年ぶりの開催ということもあり、2019年に醸造されたワインも上位にランクインすることとなった。注目すべき点としては、甲州部門で蒼龍葡萄酒のオレンジワイン「キュリアス タイプ OR 2021」が金賞を受賞したこと、スペインの品種として知られるアルバリーニョを使った安心院葡萄酒工房の「安心院ワイン アルバリーニョ」が同品種で初めて受賞したことなどが挙げられる。
日本ワインコンクール実行委員会会長の奥田徹氏は、「地球温暖化の影響で天候不順などもあり、ぶどう栽培が困難なこともあったが、ワイナリーのたゆまぬ努力と熱い思いにより、総じてワインの品質向上が見られた」とコメントしている。
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