コラム

世界屈指の循環型経済モデルを確立したイタリアNo.1ワイナリー、カヴィロ ――サントリー ワイン事業サステナビリティ活動方針説明会②

サントリー ワインカンパニーは2023年3月9日、「ワイン事業サステナビリティ活動方針説明会」を開催した。

説明会では、同社取締役常務執行役員でワインカンパニー社長の吉雄敬子氏とイタリア CAVIRO(カヴィロ)代表のカルロ・ダルモンテ氏が登壇し、両社が実施しているサステナブルな取り組みや今後の展望について話があった。また、両社はサステナビリティ活動における包括連携協定を締結した。

第2回となる本記事では、カヴィロのサステナビリティ活動やカヴィログループによる循環型経済モデルを紹介する。

イタリアNo.1ワインメーカー、カヴィロ

イタリアNo.1(※)ワイナリーのカヴィロは、1966年にエミリア・ロマーニャ州の中心部ファエンツァに設立された。世界No.1(※)のイタリアワインブランド「タヴェルネッロ」のワインメーカーであり、資源再利用ビジネスを展開するCAVIRO EXTRA社を有する。
※Shanken’s IMPACT DATABANK Review and Forecast 2021

カヴィロ代表のカルロ・ダルモンテ氏

カヴィログループのワイナリー

農業協同組合からスタートしたカヴィロは、ぶどう農家やワイン生産者の支援を使命としている。イタリア7州に27ワイナリーを有し、組合員は1万2000人。3万5200haのぶどう畑からは年間66万tのぶどうが採れるが、これはイタリア全土の生産量の10%に相当するという。また、同社の「タヴェルネッロ」は世界80カ国に輸出される世界No.1ワインブランドであるほか、ワイン販売数量はイタリア最大で、かつ世界のトップ10(※)に入っている。
※Shanken’s IMPACT DATABANK Review and Forecast 2021

カヴィロのぶどう畑

循環型経済モデルを確立したパイオニア

イタリア最大規模のワインメーカーであるカヴィロを含むカヴィログループは、循環型経済のビジネスモデルを確立したパイオニアだ。

代表のカルロ・ダルモンテ氏によると、ワイン生産において“廃棄物”という概念をなくしたという。ぶどう畑で採れたぶどうはワインとなり、ワインの製造工程で生まれた残渣(ざんさ)および副産物から、天然色素やバイオマスエネルギー、肥料ができる。

あらゆる原材料を貴重な資源と捉えて加工することで、新しい天然素材へと生まれ変わり、ぶどうの始まりであるぶどう畑に戻っていくという好ましいサイクルが確立している。カヴィログループの売上約580億円のうち、再利用事業の売上は約200億円(1ユーロ140円で試算した金額)。売上構成比でいうと、ワインが65%、エタノールや天然色素などの付加価値製品が20%、バイオマスエネルギーおよび肥料が15%を占めている。

なお、持続可能性関連事業へのカヴィロの累計投資額は、この10年で140億円に上るという。

コウノトリが飛び交うプラント

カヴィログループのCAVIRO EXTRAには、再生ビジネスに特化した40haのプラントがある。プラントでは、ワインや食料品生産の過程で発生した副産物が付加価値のあるエタノール、天然色素、酒石酸、バイオマスエネルギー、天然肥料に生まれ変わっている。

CAVIRO EXTRAの循環型プラント

また、同プラントのエネルギーは、プラントから生まれた地熱やバイオメタンガスなどのエネルギーを利用し、100%自給自足している。エネルギーが余った場合は、電力線に戻したり、地域の他の企業に提供したりしているという。

CAVIRO EXTRAのプラントがクリーンで安全であることを表しているのが、コウノトリだ。プラント周辺には多くのコウノトリが巣をつくって定住しており、このことからも周辺の空気がきれいであることが分かる。

吉雄氏はイタリアの同プラントを視察した際に、コウノトリが何十羽も飛んでいるのを目にして驚いたという。同時に、サントリーが進める愛鳥活動との親和性も感じたそうだ。

プラント周辺に住むコウノトリ

3Eエクオリタス認証を取得

カヴィロは、2020年にイタリアワインのサステナブル認証団体EQUALITAS(エクオリタス)の認証を取得している。認証のロゴマーク「3E」は、「環境(Environmental)」「倫理的(Ethical)」「経済的(Economical)」を示すもので、これらの点において、カヴィロが持続可能なワイナリーであることを証明している。

また、カヴィロでは、17あるSDGs(持続可能な開発目標)のうち、健康と福祉、働きがい、安全な水、クリーンエネルギー、気候変動対策など9つの目標について、具体的に取り組んでいる。

次回の記事では、サントリー ワインカンパニーとカヴィロが共同開発した商品や新たに締結した連携協定について紹介する。

【関連記事】サントリー ワイン事業サステナビリティ活動方針説明会
①“鳥と共生するワイナリー”を目指して

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  ワインバザール編集部
ワインバザール編集部

世界各国のワインに関するニュースやコラムなどを配信していきます。