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ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)は2024年4月18日、B to Bのブルゴーニュワイン試飲会「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」を開催した。
ハイアットリージェンシー東京(東京都新宿区)で開催した同試飲会では、12社のワイン生産者と23社のインポーターの合わせて35社が製品の魅力をアピールした。
会場には多くの業界関係者が集まり、ブルゴーニュワインに対する注目度の高さがうかがえた。日本ではまだあまり知られていないアペラシオンを紹介するという目的を持つこの会では、新たなワインとの出会いが多数生まれた。
ブルゴーニュワイン委員会とは
BIVBは、選出された代表者によって運営されている団体だ。創設は1901年で、120年以上もブルゴーニュワインの歴史と権益を守り続けている。
現在、3504のドメーヌと316のネゴシアン企業、16の協同組合で構成している。ブルゴーニュAOCにおいて、ドメーヌやネゴシアン、協同組合など全ての業種を取りまとめるのが主な役割で、ワインづくりのノウハウや伝統技術の保護、ブルゴーニュワインの普及などを目的としている。
BIVBは、次の4つの部門によって構成されている。
・ワイン市場においてプロ向けに技術支援を行う「技術品質部」
・フランス国内外での商業戦略方針を決定するための調査を行う「市場開発部」
・協会の運営を管理する「総務財務部」
・フランス国内外におけるブルゴーニュワインの宣伝活動を通じて、ワイン販売を支援・促進するためのキャンペーン企画や発信を行う「マーケティング広報部」
マーケティング広報部では、酒販店や飲食店、輸入業者などの購入決定者に対してブルゴーニュワインの知識を広め、消費者が必要とする情報を提供している。今回のイベント「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」もその1つだ。
「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」の意義とは
生産者たちが、ボトル1本1本に丹念に物語を詰め込んでつくり上げる、ブルゴーニュワイン。そうした生産者の思いや情熱について、BIVBを代表して来日した、アンヌ・モロー氏がインタビューに応じてくれた。
モロー氏は、1814年から続くシャブリの老舗ドメーヌであり、ブルゴーニュ地方のワイン市場をけん引している、ドメーヌ・ルイ・モロー(Domaine Louis Moreau)でPRを担当しつつ、日本、香港、シンガポール、オーストラリア、アメリカ、ブラジル、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、スペイン、イタリアなど、複数の市場を管理している。取材では、「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」の趣旨やブルゴーニュワインの魅力、特徴について、熱い思いを語っていただいた。
映画製作とワインづくりの共通点とは!?
――「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」が、どういった目的・テーマで開催されたか教えてください。
第1の目的として、この会を通じて、ワイン業界の方や消費者の皆さんに、映画製作とワイン製造の間には絆があるということ、その同一性を伝えたいという思いがあります。
映画づくりと同じように、ワインづくりにもさまざまな事前の準備が必要になります。ワインづくりは土壌を耕し、ぶどうを育てることから始まりますよね。収穫してからも樽での熟成など、数多くの工程と労力を要します。畑やカーヴ(貯蔵庫)などでの作業から販売に至るまで、実にたくさんの人が関わっています。
映画も、製作に入る前から企画やシナリオづくりなど、数え切れないくらいのステップがあります。人についても、監督やプロデューサー、照明、カメラ担当など、非常に多くの人が関わってつくられていますよね。
数々の工程とたくさんの人の手を経て、初めて1つのクリエイティブな作品が生まれる。そういう点が、映画業界とワイン業界に共通するのではないかと思います。
今回紹介するブルゴーニュワインも、映画作品と同じように、1つ1つ丹念な思いや情熱を込めてつくられているということを伝えたいと思い、この会を開催しました。
まだ知られていないアペラシオンをアピールしていきたい
「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」を開催した2番目の目的として、ブルゴーニュワインのあまり知られていない銘柄をアピールする狙いがあります。
――ブルゴーニュワインと言えば、日本ではロマネ・コンティなどが知られていますが、その他にもまだまだ知られていない、おすすめのアペラシオンがあるということでしょうか。
例えば、コート・シャロネーズにリュリーという村がありますが、赤と白の両方とも素晴らしいワインを生産しています。あとは、サン・トーバン、ヴィレ・クレッセなど。ヴィレ・クレッセは白ワインの産地です。他にも、北部のイランシーという村では、ピノ・ノワールを使用した良質な赤ワインを生産しています。
これらは全てブルゴーニュ・ヴィラージュ(村名ブルゴーニュ)ですが、まずは村名を強く推していきたいと考えています。その他にも、地域名(レジョナル)アペラシオンが13地域、マコンの補助的地理名称が27と本当に数多くありますが、入門編としてこれからブルゴーニュワインを知りたいという人は、まずはヴィラージュワインから始めることをおすすめします。
ブルゴーニュワインの特徴・魅力とは
――ブルゴーニュワインの特徴、魅力をアピールするとしたら?
ブルゴーニュワインの一番大きな魅力は、エレガンスさと繊細さを持ち、フィネスを感じる点でしょうか。それは白と赤の両方に通じる特徴です。アロマもとても繊細で、幅が広いといいますか、多様さを持つ素晴らしいものです。
また、テンションがある、つまり張りがあり、引き締まった味わいも特徴ですね。フレッシュさも感じることができます。
――モノポールであることもブルゴーニュワインの特徴ですか。
もちろん、モノポール、単一区画という面もありますが、ブルゴーニュワインの特徴をもたらす要素はテロワールなんです。ブルゴーニュでは、クリマのことを話すときに空は見ず、下を見ます。つまり、天気を気にするのではなくテロワールを、土を見るんです。
フランス語で「クリマ(Climat)」というと、天気のことを指します。そのため、フランス国内では普通クリマといえば空のことを気にしますが、ブルゴーニュでは皆が土壌について考えます。これは、ブルゴーニュ独特の風習ですね。ちなみに「ブルゴーニュのクリマ」は、2015年にユネスコの世界文化遺産に登録されています。
ちょっと話し過ぎているかもしれませんね(笑)。ブルゴーニュワインの魅力を語り出すと、つい止まらなくなってしまうのが、自分でも分かるんです。
“隠された秘宝”との出会いを楽しんでほしい
――ブルゴーニュワインは“ワインの王様”とも呼ばれていますが、それについてどのように思っていますか。
近年、世界中でブルゴーニュワインの人気と需要がより高まっているため、“ワインの王様”と称されていることは意識しています。ただ、そう呼んでいただけているということは、常に品質の良いワインをつくり続けなければならないということにつながると思います。
消費者やさまざまな業界関係者の期待に応えるためにも、その名声を守り続けていかなければなりません。そのため、これまでのクオリティの高さをキープしつつ、さらにより良いワインをつくり続けなければ、という気負いはありますね。
――素晴らしいブルゴーニュワインに出会いたいと考えている日本人に向けて、何かメッセージがありましたらお願いします。
ワインのラベルに「ブルゴーニュ」と書いてあったら、もし知らない、有名ではないヴィラージュのものであったとしても、ぜひ手に取り、試していただきたいと思います。どれも醸造家や生産者など、つくり手たちが最大限の努力をして製造しているものなので、ラベルにブルゴーニュワインと記載されている時点で品質が約束されています。
知らない地名の飲んだことがないワインだったとしても、口に含んだその瞬間、日本にいながらブルゴーニュ地方へと一歩足を踏み入れたようなものです。
ぜひ、ワインを味わうことでブルゴーニュの世界に入り、未知のワインともたくさん出会って、あなただけの“隠された秘宝”を発見していただけたらと思います。
モロー氏へのインタビューから、「Bourgogne: The Winemakers’ Cut」を通じて、ブルゴーニュワインをさらに身近に感じてほしいという真摯な思いが伝わってきた。
次回以降は、同試飲会に出展したドメーヌの中から、いくつかピックアップして紹介する。