コラム

テロワールと品種の個性を生かした、お手本となるアルザスのリースリング ――「アルザス&コート・デュ・ローヌワイン」試飲会レポート④

アルザスワイン委員会(CIVA)とローヌワイン委員会(INTER-RHÔNE)は2024年10月23日、東京都港区の八芳園にて、アルザスとコート・デュ・ローヌワインのセミナー&試飲商談会を開催した。

ワインビジネス従事者に向けたこの会では、ワインの知識やワインと出会う機会を提供するため、「コート・デュ・ローヌの白とアルザスの赤ワイン」「調味料から探るアルザス&コート・デュ・ローヌワインのペアリングポテンシャル」という2つのセミナーを用意し、アルザスとコート・デュ・ローヌワインの新たな楽しみ方を伝えた。

また、同時に行われた試飲商談会では、インポーター40社がそれぞれ自慢のワインを紹介し、その魅力をアピールした。

本記事では、試飲会に出品されたワインから、アルザス地方の「クリット・リースリング(Kritt Riesling)」を紹介する。

「クリット・リースリング」とは

「クリット・リースリング」は、フランス北東部の都市・ストラスブールの南西約30kmのアンドロー(Andlau)村に位置する、ドメーヌ・グレッセール(Domaine Gresser)がつくる辛口の白ワイン。

「クリット」は、ぶどうが育成されるテロワール(土壌や気候、地形などの条件)の名前に由来する。南向きの砂利質の斜面に植えた、樹齢25年のリースリング種を手摘みで収穫し、土着の酵母を用いてステンレスタンクで発酵させてつくる。

すっきりとした口当たりとフレッシュなミネラル感が特徴で、辛口でありながらしっかりした果実味が感じられるバランスの良いワインだ。

ビオディナミ農法を実践するドメーヌ・グレッセール

クリット・リースリングを生み出すドメーヌ・グレッセールは、14世紀からの長い歴史を誇る。当主のレミー・グレッセール氏は、テロワールを最もよく表現するぶどう品種の組み合わせを重視し、ぶどうの個性を引き出すワインづくりに情熱を注ぐ。また、アルザスワイン委員会の会長を2度務めるなど、アルザスワインの普及に貢献している。

ドメーヌ・グレッセールは2010年、アルザスでもいち早くビオディナミ農法を取り入れた。ビオディナミ農法とはオーガニックをさらに進化させたもので、化学肥料や農薬を使わないのはもちろん、種まきや収穫を月の満ち欠けに合わせて行うのが特徴。これにより土壌が健康になり、ぶどうの風味がより複雑で生き生きとしたものになる。長年の努力の末、ドメーヌ・グレッセールは2023年にビオディナミの認証「デメテール(DEMETER)」を取得した。

「クリット・リースリング」の味わい

インポーターである日本酒類販売、営業本部の髙橋徹氏に話を聞いた。

――「クリット・リースリング」をお薦めする理由を教えてください。

ドメーヌ・グレッセールは、私どもがもう20年ぐらいお付き合いがある生産者です。フランスの星付きレストランで提供されるアルザスワインの生産者としては、5本の指に入ります。

アルザスでは近年自然派ワインの生産が盛んですが、ドメーヌ・グレッセールはあくまでワインが持つうま味を表現したいがために、亜硫酸塩を少量ですが使用しています。また、アルザスのワインには甘口のものも多くありますが、この生産者は食事とのバランスを考えて、辛口のワインしかつくっていません。

お薦めの理由としては、万人受けする飲みやすさと、比較的手頃な値段が挙げられます。「これぞリースリング」といったペトロール香がしっかり感じられますし、お手本となるリースリングのワインだと思います。

――「クリット・リースリング」はどんな料理に合いますか?

軽やかで爽やかな味わいは、魚介類や塩気のあるハムなどによく合います。また、ピザに似たタルトフランベや、ザワークラウトなど、アルザス料理との相性も抜群です。

「クリット・リースリング 2022」

生産者:ドメーヌ・グレッセール
産地:フランス、アルザス地方
色・タイプ:白・辛口
品種:リースリング100%
参考価格:3916円(税込)


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About the author /  菅沼 佐和子
菅沼 佐和子

おもに旅行の書籍やウェブサイトの制作に携わる編集者兼ライター。世界各地を旅するうちに、ワインに出会い興味をもつ。好きなワインはポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデ。