ワイン好きな読者の中には、「今、評価されているワイン」が気になる人も多いだろう。そんな人たちに向けて、2016年のアワードをいくつか紹介していきたい。
今回取り上げるのは、「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA)」だ。1975年に創刊したイギリスの権威あるワイン雑誌『デキャンター』が2004年から毎年主催し、世界最大級のアワードとして注目されている。
審査は瓶の口まで袋を被せたワインを使用。完全なブラインド方式となっており、審査員はいずれもスペシャリストばかりだ。ブラインドテストであるため、無名のつくり手が受賞することも多い。
そんなデキャンター・ワールド・ワイン・アワードには2016年度、1万6000本ものワインがエントリーした。受賞ワインリストの中から、気になった傾向を紹介していこう。
スティルワインの最高得点は、カロッビオのキャンティ・クラシコ
2016年のアワードでは、31のワインが「プラチナメダル:ベストワイン(PB)」に選ばれた。ポイントは次のとおり。受賞結果は本記事の最後にまとめておいた。
・ フランスワインが9本、チリワインが6本受賞。
・ 最高スコアを記録したのは、ブランディのヴェルデホ。スティルワインとしての最高スコアは、カロッビオのキャンティ・クラシコだった
・ 価格が15ポンド以上のピノ・ノワール部門では、オレゴン産ピノ・ノワールを使ったドメーヌ・セリーヌの「ワイナリー・ヒル・ヴィンヤード・ピノ・ノワール 2012」がフランスのグランクリュ、プルミエ・クリュの強豪を抑えて受賞した
・ スペインや南米、オセアニアでは有名生産者が選ばれた一方、フランスでは比較的小規模な生産者も健闘した
・ 発泡ワインでは唯一、名門シャンパーニュのパイパー・エドシックによる「レア・ブリュット」が受賞した
・ スイスやクロアチアのワインもベストワインに輝いた
山梨のグレイスワインから2本がプラチナメダルを受賞!
次に、PBに続く賞「プラチナメダル(P)」を取り上げよう。なんと受賞ワイン130本の中に、山梨の中央葡萄酒が運営するグレイスワイナリーが手掛けたワインから「グレイス エクストラ ブリュット 2011」と「グレイス甲州プライベートリザーブ 2015(グレイス甲州EU輸出ラベル)」の2本が選ばれた。デキャンターの公式サイトでも、「サプライズウィナー」としてグレイスワイナリーの名前が挙げられている。
他にはオリンピック・イヤーであることもあってか、「ワイン後進国」と思われていたブラジルからも2本が受賞した。
受賞リストをご覧いただければ、驚くほどさまざまな国からのワインが、プラチナメダルを受賞していることが確認できる。イギリス、チェコ、イスラエル、ブラジル、スロヴェニア、ボリビアなど、各国のワイン醸造の実力が垣間見られる結果となった。
さらに多角化・多様化を続けるワインの世界。各国のつくり手も国際的な競争力のある良質なワインを醸造するため、しのぎを削っている。この流れは2017年、さらに加速化することになるだろう。日本でも、ワインインポーターの選定眼が試されるところだ。