コラム

超一流と比べても「私の心はここにある」。“ハートのワイン”をつくるシャトー・カロン・セギュール ~ 解説:ボルドー一押しワイナリー

   

あと2週間でクリスマス。「大事な人と過ごすひとときを、どう演出しようか」とソワソワし始めた男性読者もいらっしゃると思う。

どうしようもなくベタだが、クリスマスの晩餐には、ハートの描かれたラベルのワインを用意しておくという手もある。

「ハートラベルのワイン」はいくつかあるが、最も有名なのはシャトー・カロン・セギュールのワインだろう。シャトー・カロン・セギュールは、なぜハートマークをラベルにあしらうようになったのだろうか。クリスマスのウンチクとして用意しておきたいシャトー・カロン・セギュールの歴史・エピソードを紹介していこう。

シャトー・カロン・セギュールのエピソード

ラフィットでもラトゥールでもワインはつくっている。だが私の心はカロンにある

シャトー・カロン・セギュールのラベルには、なぜハートマークが描かれているのだろうか。その理由は、シャトー・カロン・セギュールにとって全盛期とも言える18世紀に、所有者であるニコラ=アレクサンドル・ド・セギュール侯爵が残したこの一言にあるという。

セギュール侯爵は、シャトー・カロン・セギュールの他に、あのボルドー5大シャトーに数えられるシャトー・ラトゥールやシャトー・ラフィット・ロートシルトをも保有していた。

それでもセギュール侯爵は、「どの畑のワインを愛しているか」と問われて「私の心はカロンにある」と回答。このエピソードから、ハートラベルのワインが誕生したと言われている。


「サン・テステフにおけるシャトー・マルゴー」

シャトー・カロン・セギュールの味わいは、元オーナーのドゥニーズ・ガスクトン夫人が「カロン・セギュールは、サン・テステフにおけるシャトー・マルゴー」と称したほどだ。

ガスクトン夫人は1995年からシャトー・カロン・セギュールの舵取りを任され、2006年に醸造責任者としてシャトー・マルゴーのヴァンサン・ミレ氏を招き入れた。ミレ氏はフィネスを最重視してシャトー・カロン・セギュールのスタイルを刷新。その結果、前述のガスクトン夫人による「サン・テステフにおけるシャトー・マルゴー」という評価につながることになった。

実際、ここ数年のシャトー・カロン・セギュールに対するワイン専門誌の評価は、5大シャトーと比べても勝るとも劣らない点数になっている。

カロン・セギュール(Calon Segur)がこだわるカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)

シャトー・カロン・セギュールの名前を冠したファーストラベルには、カベルネ・ソーヴィニヨンが56%、メルローが35%、カベルネ・フランが7%、プティ・ヴェルドが2%ブレンドされている。

奇しくも、骨格を形作るカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)とカロン・セギュール(Calon Segur)はイニシャルが同じ「C.S」。シャトー・カロン・セギュールとしても、カベルネ・ソーヴィニヨンには常ならぬ思い入れがあるようだ。

前述の醸造責任者を務めるミレ氏は、今後さらに、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率を高めて2028年までに畑の70%にまで増やしていく考えだという。

シャトー・カロン・セギュールの歴史

シャトー・カロン・セギュールは、世界でもトップクラスのワインの銘醸地、ボルドー・メドック地区の中でも最も長い歴史を持つワイナリーの1つだ。

「カロン」という名前は、ボルドーを流れるジロンド河で使われていた小型輸送船「カロンヌ」にちなんだもの。12世紀には既にワインをつくっていたという記録が残っているという。

1855年のメドック格付けで第3級と評価されるものの、第1級と遜色ないほどの人気ブランドとなり、ファーストラベルは1万5000円以上、セカンドラベルも5000円前後と高値で販売されている。

1894年にはガクストン家がシャトー・カロン・セギュールを有するようになり、2012年まで経営に当たった。現在は銀行家のジャン=ピエール・ドゥニ氏が率いるアルケア相互銀行グループの子会社、シュラヴニールが運営。共同経営者としてヴィドロ・グループが名前を連ねている。

シャトー・カロン・セギュールのワインづくりの特徴

シャトー・カロン・セギュールのぶどう畑は、メドック格付けが実施された1855年の55haのまま、今も面積は変わらない。

ぶどう畑の周囲は石垣で囲われ、サン・テステフの中心部付近にまとまっている。公式サイトによると、「(地質学的に)類似する畑は、他にはほとんど見当たりません」という。土壌の表層には砂利の厚い層が広がり、その下に粘土質の地層がある。ぶどう樹は砂利の層を突き抜けて粘土質の層にまで根を広げ、高品質なぶどうの実をつける。



この自慢の畑を1年間にわたって休まず手入れして、伝統的な手法で土を耕し、ぶどうの収穫を迎えるまでは摘葉や房の間引きなどを続け、ぶどうの実が完熟したら手摘みで収穫する。

収穫されたぶどうは十分な力強さを備えていることから、醸造に当たってはフィネス(=英語のfine。洗練・繊細・上質といった意味がある)を最も重要視する。新樽を100%使って18~20カ月熟成させ、濁りを取り除くために昔ながらのやり方で卵白を使って清澄する。

シャトー・カロン・セギュールのおすすめワイン

シャトー・カロン・セギュールの手掛ける主なワインは次のとおりだ。

シャトー・カロン・セギュール

同シャトーのファーストラベル。しなやかさと凝縮感の両方を自然に感じられる。

ル・マルキ・ド・カロン・セギュール

ファーストラベルがカベルネ・ソーヴィニヨンメインなのに対して、セカンドラベルの「ル・マルキ・ド・カロン・セギュール」はメルロー主体。まろやかで凝縮感のある果実味を感じられる。


サンテステフ・ド・カロン・セギュール

最近まで「ラ・シャペル・ド・カロン」と呼ばれていたサードラベル。樹齢の若いぶどう樹から採れたぶどうを使用してつくる。

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なお、ここまでのファースト~サードラベルまで、どのワインにもラベルにはハートのマークが描かれている。

シャトー・カプベルン

2012年までは元オーナーのガスクトン家にちなみ、「シャトー・カプベルン・ガスクトン」と呼ばれていたワイン。シャトー・カロン・セギュールが保有するシャトー・カプベルンが生み出すワインで、こちらはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローがほぼ半々となっている。

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