2017年も残りわずか。この1年を振り返ってみて、読者の皆様にとって記憶に残るベストの1本は、どんなワインだっただろうか。
世界的な影響力のあるワイン専門誌最大手の一角、『Wine Spectator(ワインスペクテイター)』が2017年のベストワインを選んだランキング「TOP 10 OF 2017」を発表した。
1998年から毎年発表されているWine Spectatorの「TOP 10 OF 2017」。2017年は1万7000本あまりのワインがレビューされ、90点以上のスコアを獲得した上位5600本のワインを選出。そこから品質・購入価格・入手難易度に加えて「ワインづくりの背景にある心を動かす生産者のストーリー」を重要視。これら4つの観点から、2017年のワインランキングを決定した。
Wine Spectatorのサイトでは、11位以下も含めて上位100本までのランキングを公開。上位100位以内には、アメリカ、フランス、イタリアという3カ国のワインが主に入っている。中でも、Wine Spectatorがアメリカの専門誌ということもあるのか、カリフォルニア産ワインなどが多数ランクイン。100本のうち3分の1ほどを占めた。
ランクインしたフランスワインはローヌやロワール、ブルゴーニュのものが中心。イタリアからは幅広く9地域からランクインを果たしている。また、オーストラリアなどの新世界ワインも少数だがランク入りした。
なお、2017年のランキングに入ったワインの平均価格は、43ドル(約4800円)だという。
それでは、Wine Spectatorが選出した「TOP 10 OF 2017」を紹介していこう。
まずは一気に10位から6位まで。ランクインしたワイン名・ヴィンテージ・産地を取り上げていく。
10位:ブッカー オーブリー パソ・ロブレス 2014(アメリカ、カリフォルニア州)/点数:95点、価格:80ドル
9位:パルメイヤー シャルドネ ナパ・ヴァレー 2015(アメリカ、カリフォルニア州)/点数:95点、価格:75ドル
8位:メイヤー カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2014(アメリカ、カリフォルニア州)/点数:95点、価格:70ドル
7位:シャトー・カノン ラ・ガフリエール サン・テミリオン 2014(フランス、ボルドー)/点数:95点、価格:61ドル
6位:ドメーヌ・ユエ ヴーヴレ・デミ・セック ル・モン 2016(フランス、ロワール)/点数:95点、価格:44ドル
5位からは個別に取り上げていく。
5位:シャトー・ド・サン・コム ジゴンダス 2015 (フランス、ローヌ) /点数:95点、価格:43ドル
複雑さと優雅さを兼ね備えたジゴンダスの赤ワイン。グルナッシュ(70%)を主原料として、ムールヴェードル(15%)とシラー(14%)を加え、サンソーを少量ブレンドした。
全房を発酵させた後、新旧のオーク樽とコンクリートタンクで熟成する。Wine Spectatorでは2019~2030年ごろまでを飲みごろと見ている。
シャトー・ド・サン・コムによると、2015年は理想的なヴィンテージとなり、高品質なワインをつくることができたとのことだ。
4位:カサノヴァ・ディ・ネリ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2012(イタリア、トスカーナ) /点数:95点、価格:65ドル
カサノヴァ・ディ・ネリによる「白ラベル」のブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。ファーストヴィンテージは1978年にリリースされた。
フローラルなアロマに、ラズベリーやチェリーなどの小さな赤い果実やタバコのニュアンス、ミネラル感があって生き生きとしたストラクチャーが特徴の赤ワインだ。
3600~8600L容量の大樽で42カ月熟成された後、さらに瓶内で6カ月熟成される。予想される飲み頃は2020~2035年。
ジャコモ・ネリ氏によって1971年に買収され、畑はモンタルチーノの東に位置する。面積は合計155エーカー。
3位:シャトー・クーテ バルサック 2014(フランス、ボルドー)/点数:96点、価格:37ドル
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルをブレンドした甘口の白ワインが3位にランクインした。
ここ20年ほどを見ても、2014年はこれ以上ないほどに酸味とアルコールのバランスが高いレベルで取れたワインが完成したという。
パイナップルや青リンゴ、ショウガや梅のフレーバーに、力強い味わいが飲み始めからフィニッシュまで続く。最後にはハニーサックルやオレンジの花を感じさせ、リッチな味わいのバランスを整える。予想される飲み頃は2020~2035年だ。
2位:「K」 シラー ワラ・ワラ・ヴァレー パワーライン・エステート 2014(アメリカ、ワシントン州)/点数:95点、価格:45ドル
アメリカ・ワシントン州でワインをつくるチャールズ・スミス氏によるシラーを使った赤ワインが2位にランクインした。なんと、2012年にぶどうを植樹した畑からつくった初のヴィンテージがこちらとなる。
「K」はワイン評論家のロバート・パーカー氏なども非常に高く評価するワイン。パワーライン・エステートはワシントン州とオレゴン州にまたがるワラ・ワラ・ヴァレーの南、標高約365mの丘陵に広がる。畑の耕作面積は約30エーカーで、もとは河川敷だったため、土壌は丸石や砂利で覆われて水はけがいい。
2014年は天然酵母を使って発酵させた。フランス製のオーク樽を使って熟成させており、全体の53%が新樽だ。
味わいは力強いシラーの個性を引き出しつつ、ブラックベリーやローストした肉のようなアロマが漂い、滑らかで洗練されたタンニンとのバランスが取れたワインとなった。2024年ごろまでが飲み頃だ。
1位:ダックホーン メルロー ナパ・ヴァレー スリー・パームス・ヴィンヤード 2014(アメリカ/カリフォルニア州)/点数:95点、価格:98ドル
2017年の1位を飾ったのは、カリフォルニアの名醸地ナパ・ヴァレーのメルローを使った赤ワインだ。ダックホーンは、アメリカのオバマ前大統領が就任祝いのパーティーで振る舞ったワインとしても知られている。
ダックホーンは創始者のダン・ダックホーン氏により、1976年に設立された。ヴィンヤード名となる「スリー・パームス」は、谷の中央に3本の椰子(palm)が生えていたことにちなんで名付けられた。
スリー・パームスは、気候が温暖で火山性土壌。当初は、寒い土地で栽培されることが多いメルローの栽培には適さないのではないか、と懸念されていた。だが、ぶどうが地中深くに根を張った結果、凝縮された果実味にあふれる、スリー・パームスならではのメルローが出来上がったという。
赤い果実とスパイスのニュアンス、中程度のタンニンが感じられるメルローの個性を十分に表現したエレガントなワインが完成した。
なお日本では、ANAがダックホーンのメルロー(2013年ヴィンテージ)をファーストクラスでサービスするワインとして選んでいる。
あいにく、上位にランクインしたワインのうち、日本で入手しやすいワインは多くないようだ。
興味を持ってもらえたワインがあったなら、ワイン専門店で見掛けたときなどには、積極的に購入を検討してもらえると幸いだ。
※掲載している画像のうち、合致するものが見つからなかった場合には、ヴィンテージ違い、同じワイナリーの別銘柄などを掲載しております。
<関連リンク>
THE TOP 100 OF 2017