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市場にはさまざまなシャンパーニュが流通しているが、その中でも「シャンパーニュの帝王」と賞されているのがクリュッグだ。クオリティはもちろんのこと、「孤高」とも言えるこだわりを持ってシャンパーニュを生み出している。
今回は、シャンパーニュを語る上で欠かせないクリュッグを取り上げたい。
クリュッグのエピソード
熱狂的ファン「世界3大クリュギスト」は堂々たるメンバー
クリュッグを熱狂的に愛する者たちは世界中にいる。彼/彼女らは「クリュギスト」と呼ばれ、独自のコミュニティーを形成している。中には「クリュッグしか飲まない」と宣言しているクリュギストも多い。
その中でも世界3大クリュギストと評されている人物がいる。
まず1人目がココ・シャネルだ。もはや説明不要。「ファッション界の女王」と呼ばれた女性だ。2人目はノーベル文学賞を受賞した文豪・ヘミングウェイ。そして3人目は伝説的オペラ歌手のマリア・カラスだ。
特にココ・シャネルは代表的な香水「No.5」に関しては、「クリュッグが放つ特徴的な香りを感じる」と噂されている。著名人たちを虜にしたクリュッグを楽しむことは、文化人たちのステータスとなっていった。
世界各地で開催されている「クリュッグフェスティバル」
世界的に愛好家の多いクリュッグをめぐり、さまざまな国でイベントが開催されている。例えば2016年秋にはイタリア・ミラノで「クリュッグ フェスティバル」が催され、クリュッグとそれに合う食事が提供された。さらにクリュッグ グランド・キュヴェからインスピレーションを受けて作曲された「Lives through a glass」が演奏された。
同じく2016年9月にはイギリス・オシー島で「クリュッグ アイランド」が開催。生演奏が行われる中、この日のために特別なレシピを基に一流シェフによる料理が振る舞われている。
6代目オリヴィエ・クリュッグと日本の縁
現在のクリュッグ家当主は、6代目のオリヴィエ・クリュッグ氏。彼は熱烈な親日家であり、数年間の日本滞在経験もある。日本語も堪能だ。
滞在中にはソムリエやワイン・コレクターらに直接クリュッグの良さを説いて回ったこともあり、日本での普及に大きな影響を与えた。また、新潟県燕市における鎚起銅器の技術に感銘を受け、日本の着物をイメージしたオリジナルボトルクーラーの製造を委託した過去もある。
クリュッグの歴史
すぐに頭角を現したクリュッグ
クリュッグの歴史は1843年、ドイツからの移民であるヨーゼル・クリュッグ氏がフランス国内でメゾンを設立したところからはじまる。一般的に著名なワインに成長するまでには時間がかかるが、クリュッグは早くから注目を集め、19世紀後半にはフランス国内はもちろん、諸外国でも取引されるようになる。特にイギリスでの評価は高く、高値で取引されるケースも珍しくなかった。
モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンと合併し、不動の地位を獲得
第二次世界大戦後、年代の異なるワインを調合し醸造する製法を確立させる。これまでにないシャンパーニュの製法として一躍脚光を浴びるようになる。
そして1999年、モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)と合併。世界的なラグジュアリーグループへと発展したものの、クリュッグ家による運営の下、伝統的な製法は守られている。
クリュッグのワインづくりの特徴
樽にまでこだわる伝統的製法
クリュッグの最大の特徴は205Lのオーク材の小樽で行われる1次発酵だ。樽は新品のものではなく、3年目の樽を使用する。その理由としては新しい樽では木材の香りや苦みがワインに入りやすいためだ。
さらにクリュッグ専門の職人が樽の製作やメンテナンスを行う。一般的なオーク材の小樽は耐久年数は10年前後と言われているが、この専門の職人たちの技術により、クリュッグで使用している樽は30~40年使用できる。
信念は「いつでも変わらないクオリティと味わい」
いつであっても、愛好者の期待を裏切ってはいけない。その思いからクリュッグでは、「いつでも変わらないクオリティと味わい」を信念とし、貫いている。常時250種類以上のベースワインを所持し、最適なものを選ぶ。さらにアッサンブラージュ(調合)する割合を決めるために1000回以上ものテイスティングを重ね、完璧なワインをつくり上げている。
クリュッグのおすすめワイン
グランド・キュヴェ
最低6年の熟成期間を経て出荷される、クリュッグの中でも最もポピュラーでスタンダードなシャンパーニュ。収穫年が異なるぶどうを調合しており、ラベルに年数が描かれていないのが特徴だ。一般的なワインでは年数が表記されていないものを「ノン・ヴィンテージ」と呼ぶが、グランド・キュヴェだけは「マルチ・ヴィンテージ」と呼ばれている。
ヴィンテージ
特別な年、いわゆる「当たり年」にしか醸造されないスペシャルなワイン。クリュッグが強い個性と特徴を表現できると確信した年にだけ醸造され、その年によってアロマもテイストもまったく異なるこだわりの逸品。クリュギストたちにとってまさに垂涎のシャンパーニュである。
ロゼ
力強い香りの中にも華やかなアロマを放つロゼのクリュッグ。アッサンブラージュ法と呼ばれるベースのワインにシャンパーニュで醸造された赤ワインを調合する方法が用いられる。辛口ながらも繊細さが残るプレシャスな味わいのシャンパーニュだ。