近年、注目を集めているオレンジワイン。このごろよく耳にするが、赤ワインや白ワインと何が違うのか分からない、という人も多いのではないだろうか。
オレンジ色の液体をしているが、かんきつ系の果物を使っているわけではなく、世界最古とも言われる伝統的な製法でつくられている、れっきとしたぶどうのワインだ。さまざまな料理とも相性の良いオレンジワインについて、分かりやすく解説していく。
オレンジワインとは?
赤、白、ロゼに続く“第4のワイン”とも呼ばれ、近年、注目が高まっているオレンジワイン。文字通り、オレンジがかった外観が特徴だ。まずは、オレンジワインの歴史や特徴を見ていこう。
オレンジワインのルーツ
オレンジワインは、ジョージアで生まれたとされている。
ジョージアは、トルコとロシアに挟まれた小さな国で、2015年まではグルジアと呼ばれていた。同国は黒海に面しており、ロシアとの国境にはコーカサス山脈が走る。2018年1月に大相撲で初優勝を果たした栃ノ心の祖国としても知名度が上がった。
ジョージアは世界最古のワイン生産地とも言われ、温暖な気候を生かしたワインづくりが今でも盛んに行われている。特徴としては、400を超えるぶどうの原種が残っていること。サペラヴィやルカツィテリといった土着品種を、昔ながらの手法でワインに醸造している。
オレンジワインの醸造方法
ジョージアではかねてより、つぶしたぶどうを素焼きの甕アンフォラ(クヴェヴリ)に詰めて土の中に埋め込み、地中で房ごと発酵させてきた。この製法は、ワイン醸造の起源とも言われる。
白ぶどうをこのように発酵させると、果皮の色が液体に移り、オレンジがかった色合いに。また、通常白ワインには感じられないタンニンやスパイスのニュアンスが加わり、独特の風味を持つ味わいとなる。
この醸造法に衝撃を受け、インスパイアされたイタリアなどの生産者たちが、自らの国でもオレンジワインをつくり始め、優れたワインが生まれるようになった。
製法としては、開放されたタンクでぶどうの皮を一緒に漬ける方法と、密閉された環境で皮の成分を抽出する方法と、大きく2つに分かれる。基本的には、黒ぶどうを使って白ワインのようにつくるロゼワインと逆で、オレンジワインは白ぶどうを使って赤ワインのようにつくる、と覚えておこう。
オレンジワインの主な産地
現在、オレンジワインの生産地として有名な場所には、ルーツのジョージアはもちろんのこと、オレンジワインのブームに火を付けたイタリアが挙げられる。
加えて、アメリカのカリフォルニア、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、日本でも多くつくられている。地中に甕を埋める伝統製法を採用しているつくり手もおり、その多くは自然派の生産者だ。
自然派ワインの生産者に広まったオレンジワイン
ワイン発祥の地とも言われるジョージアで、8000年ほど前につくられた酒がオレンジワインの起源とされている。しかし、旧ソ連の支配下にあったジョージアのワインは、国際市場に出回ることがなかった。
そんなオレンジワインが国際市場に出回るきっかけをつくったのは、イタリアのワイン生産者であるヨスコ・グラヴナー氏だと言われている。グラヴナー氏は、ジョージアの伝統的なワインづくりに感銘を受けて、1998年に初めてオレンジワインを醸造。それが高い評価を受けたことにより、イタリアをはじめフランスなどの自然派ワインの生産者たちがオレンジワインをつくるようになった。
オレンジワインが自然派ワインの生産者たちに広まったのには、理由がある。通常、白ワインには酸化防止剤と同様の作用を持つタンニンがほとんど含まれないため、ワインの酸化を防ぐために添加する酸化防止剤の量が赤ワインよりも多い。しかし、果汁を果皮や種と一緒に発酵させるオレンジワインには、タンニンが含まれているので、添加物を少なくできる。その結果、自然派ワインの生産者たちは、添加物の少ない白ぶどうのワインとして、オレンジワインを積極的につくるようになった。そして自然派ワインのブームとともに、オレンジワインが広く知られるようになったのだ。
ちなみにオレンジワインという呼び名は、2000年代に入ってからイギリスのワイン商が付けたもので、ジョージアでは「アンバーワイン」とも呼ばれている。
オレンジワインの特徴と魅力
オレンジワインと一言で言っても、その味わいは千差万別だ。さっぱりとした白ワイン寄りのものもあれば、とろりとした濃厚なものもある。
赤・白どちらの魅力も楽しめる
オレンジワインは、白ぶどうを使用して醸造するので、白ワインに分類される。しかし、原産地呼称制度の枠外にあるものが多いため、かなり自由につくられている。オレンジワイン全般に共通する特徴を挙げるとすれば、白ワインの「香り」や「酸」と、赤ワインの特徴である「タンニン」「スパイス感」「複雑味」を持ち合わせているということ。
それと同時に、独特な製法によって生まれる色合いや、豊かな深みのあるオレンジワイン特有の味わいも魅力だ。
オレンジワインと料理のマリアージュ
独特な厚みと味わいを持つオレンジワインは、「ワインとは合わない」と言われてきた料理とも相性が良い。
中でも特に、オレンジワインと相性の良い料理や食材を見ていこう。
薄赤色〜オレンジ色の食材と色合わせが基本
ワインと食事(食材)を合わせる基本中の基本は、“色を合わせる”こと。つまり、オレンジワインには、薄赤〜オレンジ色のものを合わせると間違いがない。ゆえに、ロゼワインとマリアージュ食材が似ている。
具体的には、サーモン、マグロ、カツオなどの魚や、生ハム、豚肉など。料理法は、シンプルなソテーやグリル(グリルによる焦げ目とオレンジワインのタンニンは相性が良い)でも良いし、トマトソースやバルサミコ、クリーム煮など、多少味の強さやボリュームのあるものにも合う。
フォアグラやアジア料理にも合わせやすい
他に、フォアグラのテリーヌに蜂蜜をかけたものやドライフルーツとも相性が良い。また、白ワインや赤ワインでは味のバランスが取りにくいアジア料理全般、オイスターソースや八角を使ったスパイシーな料理にも非常に合わせやすいのでおすすめだ。
中華料理にオレンジワインがピッタリ
オレンジワインは、赤ワインのような渋みと白ワインのような酸の味わいを合わせ持つ。その酸の味わいは、中国の紹興酒と似ているため、アジア料理の中でも特に中華料理との相性が良いと言われている。
おすすめのオレンジワイン10選
最後に、発祥の地であるジョージアをはじめ、イタリア、日本など世界各地のオレンジワインからおすすめを紹介する。
ベシーニ クヴェヴリ スペシャルリザーブ
ジョージアのオレンジワインの入門編として最適な1本。甕容器アンフォラの中で半年間発酵させる伝統的な製法でつくられ、ほんのりオレンジがかった色と、キンモクセイや紅茶のようなニュアンスが加わっているのが特徴だ。適度に近代的な技術も用いて、エレガントでモダンなスタイルに仕上げているため、飲みやすい。
生産国:ジョージア
参考小売価格:2970円(税込)
ヴァジアニ・カンパニー マカシヴィリ・ワイン・セラー・キシ
ジョージアの土着品種であるキシを使用し、伝統的な甕のアンフォラ(クヴェヴリ)で6カ月熟成させている。桃の香りとショウガのようなスパイシーさを持つ本格的なオレンジワイン。
生産国:ジョージア
参考小売価格:3795円(税込)
クヴェヴリ・ワイン・セラー ルカツィテリ・クヴェヴリ
ルカツィテリ種だけを使用してつくられる、年間2500本しか生産されないオレンジワイン。伝統的な竈のクヴェヴリ(アンフォラ)で果皮や種とともに4カ月ほど熟成させた後、別のクヴェヴリに移しワインだけで6カ月熟成させた一本。黄桃のように濃厚な完熟果実の香りと味わいに加え、蜂蜜やスパイスも感じられる。渋みが強い反面、口当たりはソフト。
生産国:ジョージア
参考小売価格:3300円(税別)
デナーヴォロ カタヴェラ
オレンジワインの一大ブームを引き起こした、イタリアのエミリア・ロマーニャでつくられた1本。マルヴァージア、オルトゥルゴ、マルサンヌの3品種を使用、フレッシュで飲み心地の良いスタイルに仕上げている。グレープフルーツのようなニュアンスが特徴で、揚げ物などにも合わせやすい。
生産国:イタリア
参考小売価格:2800円(税別)
ボルゴ・サヴァイアン オレンジワイン アランサット ノンフィルター
2020年、Webワイン誌『VINOWAY』にてイタリア最優秀若手エノロゴに選出された二コラ・ビアージが醸造する1本。。アプリコットやオレンジ、ナッツなど、複雑な香りと味わいを持つ。「アランサット」には辛口白ワインのフィルターバージョンもあり、どちらも高い人気を誇る。
生産国:イタリア
参考小売価格:1800円(税別)
プリモシッチ ピノ・グリージョ
減農薬農法で栽培したピノ・グリージョを使用。スミレやラズベリーの香りと余韻のミネラル感を感じる、凝縮した味わいのオレンジワイン。
生産国:イタリア
参考小売価格:4500円(税別)
フィールド・レコーディングズ・スキンズ
非常にコストパフォーマンスが良い、アメリカで一番売れているオレンジワイン。60~90日のスキンコンタクトの後、アカシア樽で6カ月熟成させたワインは、渋みと酸のバランスが良く、軽やかなのに飲みごたえ抜群。ドライピーチやネクタリンのような香りも特徴的。
生産国:アメリカ
参考小売価格:3190円(税込)
ブラインド・コーナー・オレンジ
「全日本最優秀ソムリエコンクール」「A.S.Iアジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール」で優勝経験を持つソムリエの岩田渉氏が厳選した1本。西オーストラリア州にあるマーガレット・リバーでつくられ、レモンやオレンジ、甘やかな花の香りに、かすかな蜂蜜のニュアンスを感じる。
生産国:オーストラリア
参考小売価格:3300円(税込)
ココファーム・ワイナリー 甲州F.O.S.
意欲的なワインづくりの姿勢に、熱狂的なファンも多いココファーム・ワイナリー。すっきりしたイメージの甲州種を用いて、パワフルなオレンジワインをつくり出した。はっさくや熟したカリン、干し柿 のような旨味といった様々な要素が複雑に絡み合う。はっきりとしたアタックのあるワインで、はちみつソースのスペアリブなどに ぴったりだ。
生産国:日本
参考小売価格:3300 円(税込)
丸藤葡萄酒工業 ルバイヤート甲州醸し
甲州ぶどうだけを使用してつくった日本国産のオレンジワイン。醸し発酵(マセラシオン)で果皮の色や渋みなど甲州ぶどうの特徴を引き出した、味わい深い一本だ。飲み方は、あまり冷やしすぎず15℃前後で味わうのがおすすめ。
生産国:日本
参考小売価格:2420円(税込)