コラム

函館で愛されて40年以上! 北海道・七飯町でワインづくりを続ける「はこだてわいん」の魅力

ワインづくりを手掛けるワイナリーは、日本各地に300者近くあるという。日本各地でワイン用ぶどうの栽培が進められる中、サッポロビールやアサヒビールなどの大手もぶどう栽培に一層の力を入れている産地が北海道だ。

北海道の函館近辺にある七飯(ななえ)町では、フランスの老舗ワイナリーであるドメーヌ・ド・モンティーユも畑を取得。外資系ワイナリーとして初めて、日本でワイン用ぶどうを栽培し、ワイン生産を始める計画だ。サッポロビールが同社最大の25.4haにも及ぶぶどう農園を造成する北斗町にも隣接している。

北海道のワイン産地としては、余市や空知などが有名だが、七飯町も注目の産地となりつつある。そんな七飯町で、1973年からワインづくりをしているワイナリーが「はこだてわいん」だ。

地域のために何かできないか。若者たちの想いからワインづくりをスタート

もともと、はこだてわいんは地元の若者たちの「地域のために何かできないか」から始まったワイナリーだという。

そんな想いを持っていた彼らが目を付けたのは、地元企業の小原商店が持っていた酒造免許。戦前、当時盛んに栽培されていたヤマブドウを使って醸造を始めたのだが、戦後に売れなくなったため醸造をやめていたのだという。

この免許を使って、1973年に駒ケ岳酒造としてワインづくりをスタート。地域振興も目的としていたため、地元の人たちから広く支えられることとなった。現在、高齢者の中には、「はこだてわいんは俺が育てた」と自負する人も少なくないそうだ。

七飯町にある畑でぶどう栽培も手掛けていたが、ワインに適した良質なぶどうを栽培するのは難しい挑戦だった。そこでぶどうづくりは栽培のプロフェッショナルに任せようと、30年ほど前に余市の農家に相談を持ち掛け、何軒かの農家から協力を得られるようになった。

現在も栽培のプロフェッショナルである農家と連携しながら、はこだてわいんはワインづくりのプロフェッショナルとして腕を磨き続けている。

現在ではその醸造技術が評価され、さまざまなコンクールで「金賞」や「部門最高賞」を受賞するまでになっている。

《近年の主な受賞歴》
2017年 さくらアワード ダブルゴールド「香り仕込みケルナーSparkling」
2018年 日本ワインコンクール 銀賞「しばれわいん ケルナー 2017」

北海道胆振東部地震の後には売上が冷え込んだものの、道外から温かいメッセージや発注が寄せられたという。はこだてわいんがファンから愛されていることがよく分かるエピソードだ。

酸化防止剤無添加、しばれづくり製法、フルーツワイン――オリジナリティあふれるはこだてわいん

ワインの原料であるぶどうの入手に苦労した経験から、はこだてわいんはオリジナリティあふれるワインを展開するようになった。

近年の健康志向から注目を集めている「酸化防止剤無添加ワイン」は、20年以上も前に生産をスタート。はこだてわいん独自の“しばれづくり製法”により醸造された高級デザートワイン「しばれわいん」や、りんごを使ったシードル、さらにはいちごやメロン、ざくろ、ハスカップなどの風味を生かしたフルーツワインづくりにも取り組んでいる。

はこだてわいんの佐藤恭介取締役は、自社ワインの魅力について、「質のいいぶどうを農家さんに作ってもらって、それを最大限に生かします。北の大地の“開拓者”として、オリジナリティあふれる多様なワインづくりを心掛けています」と語る。

ワインづくりのアイデアは、社員から提案される。大企業ではないので、社員が声を出しやすい環境なのだという。過去に何度も挑戦して失敗したこともあった。ここ数年で大きな市場に成長しつつあるノンアルコールワインについても、はこだてわいんは過去に挑戦し、撤退した経験がある。

「失敗も含めて、ノウハウがたまっているのも社内の財産」と、佐藤取締役はコメントする。

北海道産ぶどう100%も! 酸化防止剤無添加ワインへのこだわり

はこだてわいんがこだわっている酸化防止剤無添加ワインは、20年以上の歴史の中で、人から人へ技術が受け継がれてきた。

はこだてわいんの酸化防止剤無添加ワインは、輸入濃縮果汁からつくるものと北海道産の生果実からつくるものがある。生果実からつくる酸化防止剤無添加ワインは、生果実の品質に加えて高度な醸造設備や技術が求められるという。酸化防止剤無添加ワインは、市場ニーズを満たすだけではなく、醸造技術の向上を促す大切な商品なのだという。

七飯町がワイン用ぶどうの産地として注目が集まっていることもあり、はこだてわいんでは本社のすぐ近くにある自社畑(約1.7ha)でのぶどう栽培にも力を入れていくそうだ。

小学生が工場見学に来る本社工場。直営店での無料試飲も魅力

はこだてわいんの商品は、函館市内のお土産店や道南のスーパー、量販店などで手に入る。七飯町にある本社では、商品購入のほかに工場見学も可能だ。

長年にわたってワインづくりを支えてきた工場は、タンクも機械もベテランぞろい。平日には近所の小学校が工場見学に訪れることもあるそうだ。

筆者が訪れた11月下旬は静かだったが、タンクの部屋にはいい香りが立ち込めていた。9月下旬~11月上旬にはとても活気があふれているという。

ぶどうの次はりんご、そしていちごと、フルーツの収穫に合わせてにぎやかになる工場を見ることができる。

《ガイドツアー(30分:要予約)》
・夏季(4月~10月):11:00/14:00/15:30
・冬季(11月~3月):11:00/14:00

本社に隣接している直営店では、5種類以上の無料試飲や限定商品「ワインソフトクリーム(赤・白)」の2種類が楽しめる。

本社があるのは、函館から駒ケ岳の絶景や紅葉で有名な大沼国定公園に向かう途中だ。函館・大沼観光の際には、はこだてわいんを候補に入れてみてはいかがだろうか。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ