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2019年4月24日、東京都港区にある「ザ・ストリングス表参道」で、「バリューボルドー2019」のプレス向け発表会および試飲会が開催された。発表会では、選出に当たったナビゲーターやボルドーワイン委員会会長がコメントを発表。その内容を紹介する。
「バリューボルドー」とは?
「バリューボルドー」は、フランスのボルドーワイン委員会が提案する、“価値ある手頃な価格帯のボルドーワイン”のラインアップだ。ボルドーワインには、高価で権威的なイメージの高級ワインもあるが、一方で、良質かつ日常的に楽しめる価格帯のワインも多くある。ボルドーワイン委員会では、そうしたコストパフォーマンスに優れたボルドーワインを広く知ってもらうため、世界各国でバリューボルドーを選出している。
日本では今年、ワイン界で活躍する4人のナビゲーターが490本のボルドーワインを試飲し、その中から100本のバリューボルドーを選出した。
間違いのない4人が選んだ、間違いのないワイン
「バリューボルドー」選出を担当したナビゲーター
・ 大越基裕氏:「Divin Clos」ワインテイスター/ソムリエ
・ 小久保尊氏:「COQ DINER」「COQ DINER 離」オーナーソムリエ兼シェフ、『図解ワイン一年生』著者
・ 瀬川あずさ氏:「アカデミー・デュ・ヴァン」主任講師、「食レコ」代表取締役
・ 藤森真氏:「シャルパンテ」代表取締役/オーナーソムリエ、「ワインスクール・シャルパンテ・カレッジ」理事長兼学長、「コマンドゥール・ド・ボルドー」(ボルドーワイン騎士団)
(※発表会には、小久保氏、瀬川氏、藤森氏が参加)
ジャンルの入り口にふさわしいワイン
小久保氏:バリューボルドーに選ばれたワインは、そのジャンルを知るための入り口としてふさわしいワインが多いように感じた。
ボルドーには、赤、白、ロゼ、泡といった全てのジャンルがある。今回、バリューボルドーに選ばれたワインは、ボルドーのそれぞれの特徴をよく表したものばかり。間違いのない4人が選んだ、間違いのないワイン。気負わずにがぶがぶと飲んでほしい。
ムード・フレンドリーで軽やかなワイン
瀬川氏:試飲した印象では、爽やかで清涼感のあるワインが多いように感じた。赤は果実味あふれるワイン、白やロゼは樽香をあまり効かせない軽やかなものが主流。ムード・フレンドリーというか、さまざまなシーンに合わせやすい。食事のトレンドも年々軽やかになってきており、その動向ともよく合うと思う。
日常的に楽しめる、質の高いワイン
藤森氏:従来のボルドーは重厚なイメージが強かったが、今回490本ものワインを試飲し、その多様性に驚かされた。例えば、友人とバーベキューなどをする際に持っていきたいようなワインが多かった。日常的に楽しめる、質の高いものばかりなので、ぜひ多くの方に飲んでもらいたい。
良質なボルドーワインを日本の皆さんに――ボルドーワイン委員会会長アラン・シシェル氏
日本におけるフランスワインの販売動向
日本は、フランスのボルドーワイン業界にとって、とても大きな存在だ。常にボルドーワインをサポートしてくれていることに、感謝を述べたい。
ワインは、フランスから日本へ輸出される全ての物品の中で、輸出額がトップとなる。そして、そのうちの半分をボルドーワインが占めている。認知度も非常に高く、ワイン市場においてはリーダー格ともいえる。2018年は売り上げに少々陰りが見られた。これは、2019年2月発効の日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)によるワイン関税撤廃の影響と考えており、今後売り上げはまた上昇すると信じている。
新しい消費者の獲得とオケージョン拡大を目指す
バリューボルドーの対象になるワインは、小売価格が1000~4000円未満のものだ。日本の市場動向をよく知る4人に、セレクトを依頼している。これは他国においても同様で、その国の市場を知る人にセレクトしてもらうことに意味があると考えている。
私たちは現在、「若い、新しい消費者を獲得する」、そして「ボルドーワインを楽しむオケージョンを広げる」という2つのベクトルを持っている。オケージョンについては、日本の食文化と合うワインも多いことを知ってもらう必要がある。
また、日本の皆さんに良質なボルドーワインを知ってもらうため、私たちが力を入れているのは、「CHR」スタッフへの教育活動だ。CHRとは、「カフェ」「ホテル」「レストラン」のこと。彼らにボルドーワインの知識と魅力を知ってもらい、良い反応を得ている。今後も、そういった活動を続けていきたい。
“きっちりかっちり”の枠を抜け、幅が広く
ここ数年、ワイン全体の中で占める種類別の比率が変わってきている。具体的には、ロゼの比率が上がっているのと、クレマンも増えている。
このバリューボルドーを通じ、世の中のトレンドをキャッチできるのは素晴らしいことだ。「ボルドーは、きっちりかっちりしたワイン」というそれまでの枠から抜け、フルーティーなもの、飲みやすいもの、手の届きやすいものというように、幅が広くなってきている。
エントリーワインとは異なる、ボルドーの魅力
日本ではチリワインの販売量が多いが、私たちはチリワインと競うつもりはない。ボルドーワインは、世界のワイン生産量のたった2%しか占めていない。まずは魅力的なワインをもっと増やし、ワインが好きな消費者にボルドーワインの本来の魅力を知ってもらうことに注力したい。
仮に、1000円以下のワインをつくるとすると、質の高いものはつくれるのだろうか。天候などの不安定要因がある中で、そのワインづくりは持続できるのだろうか。そういった部分に疑問が残る。
ボルドーワインはお手頃ではあるが、エントリーワインとは異なる。現在、チリや南米のワインを楽しんでいる皆さんが、ボルドーワインも試してくれたら、とてもうれしく思う。