渋谷の真ん中にワインバーが出現
2019年5月31日から6月2日までの3日間、渋谷の街中にポップアップバーが出現した。これは「ドイツワインをカジュアルに楽しむ」をコンセプトに、Wines of Germany日本オフィスが仕掛けたもの。渋谷MODI(旧マルイシティ渋谷)正面入り口という視認性の高い場所に、ベルリンの壁のグラフィティペイントを模したブースを作り上げた。
ポップアップバーの名前は「ベルリン・ワインバー」。ワイン試飲のためのバーカウンターやDJブースがあり、高テーブルもいくつか並ぶ。16種類のワインとドイツ風ピザを注文できるカウンターは、興味を持って入ってきたお客で長蛇の列。メディア関係者も数多く訪れ、大きな賑わいを見せていた。
温暖化とドイツワインの変化
今回の「ベルリン・ワインバー」に出品されたワインは、女性のワイン専門家がブラインドテイスティングで審査を行う「サクラ・アワード2019」で高く評価されたドイツワインを中心にセレクト。辛口の白、すっきりとした赤がメインだった。
この「辛口の白」「すっきりした赤」という表現は、かつて、ドイツワインにはあまり使われなかった。20年ほど前まで、ドイツのワインといえば甘口の白が定番。数字を見てみると、1985年ごろまでは白ワインは辛口より甘口の方が多く生産されていた(辛口45%、甘口55%。German Wine Institute調べ)。1990年頃より逆転し、2017年には、やや辛口・辛口の割合が全生産量の約68%を占めるまでになった。
ではなぜ、このような変化が起きたのだろうか。
多くの消費者が辛口ワインを支持するから、という事実もあるが、もっと大きな原因は地球温暖化だ。
ドイツはワインを生産できる地域の北限にあり、冷涼な地域が多いため、栽培できるぶどう品種に限りがあった。しかし、過去40年のうちに平均気温が1.4度上昇。それにより、かつてより多くのぶどう品種を栽培できるようになったのだ。特に栽培地域が増えたのが、ピノ種。ピノ・ノワール、ピノ・ブラン、ピノ・グリはいずれも栽培面積を増やし、収穫量が上がっている。中でも良質なピノ・ノワールが栽培できるようになったことは、ドイツワイン界に大きな革命をもたらし、ドイツ=白ワインという図式が根本から覆されようとしている。
また、それまでリースリング種などがメインだった白ワイン市場にも変化が起きた。ピノ・グリやピノ・ブランはリースリングに比べ酸が穏やかなため、ボディにボリュームを持たせ、より料理にフィットする味わいが作りやすい。
このように、温暖化がもたらす影響はあるものの、ドイツが他の国の産地より北にあることには変わりなく、繊細でエレガントなワインができる。
若手生産者たちの起こした革命
ドイツには、「ジェネレーション・リースリング」という団体がある。この団体に所属できるのは35歳までの若手醸造家。2006年の結成時に25名ほどだったメンバーは、現在500名をゆうに超えている。
コンセプトは「モダン」「高品質」そして「ダイナミックなワイン造り」。世界各地の銘醸地でワイン造りを学んできた者も多い。
彼らの作るワインは、軽やかで繊細、エレガント。その品質の良さが認められ、ドイツワインのイメージは徐々に変わってきた。質実剛健なドイツのイメージとは異なる、ポップなラベルも多く見られるようになった。気軽に飲めるというイメージ戦略も含め、”今のドイツワイン”の魅力を多くの人に知らしめるのが、今回のベルリン・ワインバーだ。ドイツの中でも若者の芸術文化が花開いている都市・ベルリンをイメージした会場では、友達と楽しむワイン、ゆっくりしたい日のワインなどが紹介された。
さらなる魅力を伝えるドイツワイン大使
Wines of Germany日本オフィスは、ドイツワインの魅力をさらに伝えるため、「ドイツワイン・スペシャルアンバサダー・コンテスト」を開催している。これは、ドイツワイン好きを自負する女性インフルエンサーからアンバサダーを3名任命し、ドイツに飛んでもらい、現地からドイツワインの魅力をアピールしてもらうというもの。ベルリン・ワインバーでは、一次審査を通過した8人のファイナリストが紹介された。決勝は6月18日に銀座SIXで行われる。
加えて、6月30日まで、都内70の酒販店や飲食店で「ドイツワインキャンペーン」を実施(内容は店舗により異なる)。ワイン業界の中で、注目度がじわじわ上がってきているドイツワイン。多様な広報活動が功を奏し、2019年後半から2020年にかけて、さらに注目を集めそうだ。