記録的な猛暑と干ばつの影響で、夏のオーストラリアを襲った大規模な山火事。2020年1月に入ってからは、日本のメディアでも多く取り上げられたため、豊かな自然が火に包まれ、コアラなどの野生動物が火から逃げる姿を見て、心を痛めた人も多いだろう。
今や有数のワイン産地でもあるオーストラリア。今回の火災は、ワインにどれほどの影響を与えたのだろうか。オーストラリアの政府機関であるワインオーストラリア公社のプレスリリースから情報をまとめてみよう。
影響を受けたぶどう畑は1%以下
2020年2月11日付で更新されたプレスリリースによると、火災の影響を受けたぶどう畑は全体の1%に満たない程度だという。オーストラリアの森林火災は南東部が中心であり、オーストラリア最大のワイン産地である南オーストラリア州の被害は比較的少なかったことから、低い数字に収まったようだ。
オーストラリア全域には14万6000ha超のぶどう畑があるが、そのうち被災した地域にあったのは、2020年1月7日時点で約1500haとみられている。
南オーストラリア州の一部も火災の影響を受けたが、2020年2月3日、オーストラリア政府観光局は、同州アデレードヒルズにあるマウント・ロフティ・レンジ・ヴィンヤード(Mt Lofty Ranges Vineyard)で撮影された動画をTwitterでシェアしている。
Want to show your support for communities in affected regions?
Wine not go on a foodie road trip to @southaustralia's @adelhillswine? 🍇
(via IG/winetimedave at @mtloftyvineyard last Sunday)#seeaustralia #HolidayHereThisYear #seesouthaustralia pic.twitter.com/UF27hzSV3b
— Australia (@Australia) February 2, 2020
この動画は、2020年1月26日付で個人がInstagramで公開したものだが、動画を見る限り、撮影された場所では火災の影響はさほど大きくなかったことがうかがわれる。
煙がぶどうに与える影響
オーストラリア南東部で大規模な火災が発生したことから、2003年より煙がぶどうに与える影響についての研究が進められている。
ぶどうが煙にさらされても、煙の影響を受けるのはぶどうの皮のみで、葉や根っこ、土壌を通してぶどうに影響することはほとんどない。煙の影響を受けるのはワンシーズンのみで、翌年以降に影響はないという。
また、ぶどうが成熟しているほうが煙の影響を受けやすいことが分かっている。地域によって異なるが、オーストラリアでは主に3月~4月にぶどうの収穫時期を迎える。それまでに、火災の被害がこれ以上、広がらないことを願うばかりだ。
ワイン用ぶどうとワインの生産者団体Australian Grape & Wine最高責任者のTony Battaglene氏は、今回の火災について「直接影響を受けた生産者への救済を対応策に含める必要がある。中期的には、観光に力を入れて、人々を呼び戻さなくてはいけない」とコメントしている。
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