コラム

カルメネール100%の型破りなワインを生み出す「シャトー・ルクーニュ」 ~ボルドーワイン委員会ウェビナー

ボルドーワイン委員会(CIVB)は2020年12月2日、ウェビナー「ボルドーの赤ワイン~正統派だけじゃない、モダンで型にはまらないスタイルも~」を開催した。

ウェビナーでは、3人の若手生産者が、これまでの伝統にとらわれない新しいスタイルのキュヴェをライブテイスティングで披露した。今回は、ボルドー右岸に位置するシャトー・ルクーニュを紹介する。

伝統と革新を追求する、シャトー・ルクーニュ

シャトー・ルクーニュは、ボルドー地方の東部に位置するポムロール、フロンサック、サン・テミリオンの3地区を中心に7つのシャトーを所有する、ミラード社のシャトーの1つ。ミラード社のシャトーの中で最も古い歴史を持つという。ウェビナーには、4代目当主のマルク・ミラド氏がゲストスピーカーとして参加した。

4代目当主のマルク・ミラド氏(写真右)

現在、シャトー・ルクーニュでは、メルローを主要品種として、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、カルメネールといった黒ぶどうのほか、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、セミヨンといった白ぶどう品種も栽培している。

カルメネール100%のキュヴェ

マルク氏が紹介してくれたのは、カルメネール100%の「シャトー・ルクーニュ・キュヴェ・カルメネール」。マルク氏は、このワインを「ボルドーの正統派ワインとは異なり、最新のトレンドを意識して新しいスタイルを追求した型破りなワイン」と表現した。

栽培が難しいカルメネール100%のキュヴェを始めた理由

そもそも、ボルドーワインの多くがメルローを主要品種としているなか、なぜカルメネール100%のワインに挑戦したのか。

始まりは、マルク氏の父であるグザビエ・ミラド氏が、サン・テミリオン郊外で、1850年代のフィロキセラ危機を乗り越えた希少なカルメネールの樹を発見したことだった。以来、グザビエ氏は試行錯誤を繰り返し、2000年にカルメネールの古株セレクションを構成。よりバラエティに富んだアッサンブラージュを提供するうちに、カルメネール100%のキュヴェというアイデアに至ったという。

また、マルク氏によると、近年の気候変動や気温上昇をグザビエ氏はいち早く予想していたという。そのため、アルコール度数が低いワインに仕上がるカルメネールの特性に、早くから注目していたそうだ。

カルメネールについてマルク氏は、「収量性が低く、最適な熟度や収穫時期の見極めが難しいぶどう品種」と表現した。しかし、こうした難しい品種にあえて挑戦することで、ボルドーのワイン生産にイノベーションを起こし、次世代のワイン生産者に勇気を与えたいと意欲を見せた。

温暖化に対応したぶどう栽培

マルク氏は、ワイン生産のサステナビリティについても言及した。周知の通り、地球温暖化に伴ってぶどうの糖度が上がり、産地全体でワインのアルコール度数が高まっている。

マルク氏のシャトーでは、ワインのアルコール度数を管理するための対策を実施しているという。例えば、「除葉を控えめにすることでぶどうに当てる日光を調整し、糖分の凝縮を抑える」「収穫時期を以前よりも早めて、気温の低い朝の時間帯に収穫する」「冬の間に行う剪定の時期を先延ばしして、ぶどうの完熟期を遅らせる」「ぶどうが根を深く生やし、地下深くの涼しさを享受できるように畑を管理する」などが挙げられた。

また、地球環境に配慮したサステナビリティについては、シャトー・ルクーニュが環境価値重視認定(HVE)を取得しているほか、ミラド社としても、ボルドーが組織的に取り組む環境対策活動に参加していることを明かした。

心地よく続くアロマの余韻

「シャトー・ルクーニュ キュヴェ・カルメネール」には、「カルメネールの特徴であるスパイスの香りに、メルローとはまた違う、黒ぶどう特有のアロマがある」とマルク氏。こうしたカルメネール本来のアロマを引き出すため、このワインは製造工程で木樽を使用せず、全てステンレスタンク内で育成・熟成しているそうだ。

味わいは、果実本来のはつらつとした風味とみずみずしさ、しなやかさ、滑らかさが特徴的。ストラクチャーに丸みがあり、酸味は控えめで、アロマの余韻が心地よく続くとのこと。

おすすめの飲み方やペアリングについては、「総酸度が低いワインなので、若いうち(マックス10年程度)においしく味わってほしい。ペアリングは、アペリティフや寿司、刺身、天ぷらなどがおすすめ。若い世代の方にもカジュアルに楽しんでもらいたい」と話した。

カルメネール100%の、みずみずしく滑らかな味わいを堪能できる「シャトー・ルクーニュ・キュヴェ・カルメネール」。力強く重厚なボルドーワインのイメージを軽やかに飛び越える1本だ。

シャトー・ルクーニュ キュヴェ・カルメネール

品種:カルメネール100%
AOC:ボルドー・シューペリウール
ヴィンテージ:2014
認定:HVE 3認証取得
ボディ:フルボディ
アルコール度数:12%
受賞履歴:リヨン国際ワインコンクール2014 ゴールド

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About the author /  原田さつき
原田さつき

広告制作会社でコピーライターとしてワイン・ビールの販売促進に携わったのち、フリーランスに。WEBメディア・取材記事・機関紙など、幅広く活動。得意分野は酒・食・ペット。