2021年1月18日、メルシャンは2021年の事業方針発表記者会見をオンラインで開催した。会見では2020年の市場や同社の取り組みを振り返るとともに、2021年の事業方針、マーケティング戦略が語られた。
本記事では、2020年度のメルシャンの取り組みと、2021年度の事業方針について取り上げる。
2020年の取り組み ――CSV×付加価値で市場全体を盛り上げる
「メルシャン1社で良いワインをつくっても、地域全体でワイン産地として認められなければ、将来日本ワインの発展はない」。これは、元メルシャン藤沢工場長で“現代日本ワインの父”と呼ばれる故・浅井昭吾氏の言葉だ。
この言葉を核として、自社だけでなく日本ワイン市場全体を盛り上げることを重視してきたメルシャンでは、2020年も「CSV(共有価値の創造)」と「付加価値」を掛け合わせた、さまざまな取り組みを実施した。
2020年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、人が集まるイベントの多くが中止や延期になった。その中で、シャトー・メルシャンはインスタライブの開催(計14回)や海外ワイナリーとのメッセージ交換、コロナ禍で打撃を受けている業務用ワイン関係者に貢献するためのインスタグラム投稿キャンペーンなどを実施。全国の顧客とオンラインで交流した。
また、同年11月に開催したオンラインイベント「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーフェスティバル」は、近隣4ワイナリーとのトークショーや日本ワインのセット販売が好評で、2日間で約4900人が視聴したという。
さらに、2020年はメルシャン藤沢工場の創業100周年と同工場がある神奈川県藤沢市の市政80周年が重なったこともあり、藤沢市後援のもと「メルシャン藤沢工場 オンライン開放祭」を開催。応募多数の中から、抽選で500人が参加した。
「ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2020」日本初選出の快挙
2020年はシャトー・メルシャンにとって、これまでの取り組みが実を結んだ年でもあった。ワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリーを選出する「ワールド・ベスト・ヴィンヤード 2020」にて、シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー(長野県上田市)が世界第30位となり、ベスト・アジアにも選ばれた。ワールド・ベスト・ヴィンヤードへの選出は、日本のワイナリーとしては初となる。
この快挙について、メルシャン代表取締役社長の長林道生氏は「メルシャンにとっても、ワイン業界、日本にとっても意義のあること」とし、「上田市の方々から『地元愛、そして自信と誇りを強く持つことができた』と、CSVの観点からもうれしい言葉をいただいた」と述べた。
2021年事業方針 ――メルシャンのDNAを具現化
「日本を世界の銘醸地に」。これは浅井昭吾氏の「日本ワインの発展のためには、地域全体がワイン産地として認められることが必要」との思いを端的に表わしたフレーズで、同社が目指すものを凝縮した、メルシャンのDNAとも言える言葉だという。
長林氏は「2021年は“ワインのおいしい未来をつくる”というフレーズを具現化し、おいしいワインだけでなく、ワインを楽しむシーンや空間を提供して、ワインの持つ力で人と自然と社会をつないでいく。“CSV×付加価値”の軸をぶらすことなく、ワイン市場の課題である間口拡大を解決しながら、ブランド自体の認知と信頼、共感を上げることで、業界をけん引していきたい」とコメント。
また、2021年の販売目標について、「市場の着地を推定するのは難しい」としながらも、前年比-5%とし、メルシャンとしてはそれ以上の数字を残したいと抱負を語った。