メルシャンは2021年5月18日、2021年のシャトー・メルシャン戦略説明会を開催した。
同社マーケティング部長の山口明彦氏と、シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャーである安蔵光弘氏により、シャトー・メルシャンの事業計画、そして「日本を世界の銘醸地に」を合言葉にした取り組みについて発表された。
今回は、安蔵ゼネラル・マネージャーが語った、日本を世界の銘醸地にするためにシャトー・メルシャンが取り組む「日本固有品種の挑戦」として、甲州ワインの新しい産地である「山形県鶴岡地区」についてまとめる。
江戸からもたらされた山形の甲州
「甲州」といえば山梨県というイメージが強いが、東北地方の山形県でも比較的多くの甲州が栽培されている。約250年前に、江戸から山形県櫛引(現・鶴岡市)に持ち込まれたとされており、山梨とは違う系統の甲州が受け継がれている可能性もあると考えられている。山梨県産と比べて、果実の粒が小さく、赤みが濃いところが鶴岡産甲州の特徴だ。
山形県鶴岡は、山梨県勝沼よりも降水量が多く、春から初夏の平均気温が低い。ぶどう生育期の日照時間はどちらも同等レベルだ。「サイドレス」と呼ばれる、上部に屋根が付いていて側面がオープンになっているハウスで栽培されている。
「鶴岡甲州」が誕生
シャトー・メルシャンでは、2020年に鶴岡の甲州を使って初めて醸造を行い、酸と果実感が調和したワイン「シャトー・メルシャン 鶴岡甲州 2020」が出来上がった。グレープフルーツなどのかんきつのニュアンス、白桃やバナナといった熟した果実の香りが感じられる仕上がりだという。
「シャトー・メルシャン 鶴岡甲州 2020」は、2021年6月1日にシャトー・メルシャンの各ワイナリー限定で発売される。
シャトー・メルシャンでは、今まで、主に秋田県の大森、福島県の新鶴、長野県、山梨県のぶどうを使用してワインを手掛けてきた。シャトー・メルシャンとして新しい県のぶどう産地に取り組むのは、約40年ぶりとなる。
山梨県の甲州は、奈良時代に行基が大善寺で薬用に栽培したものが始まりといわれているが、テロワールの異なる甲州ワインを飲み比べてみるのも面白そうだ。
「日本を世界の銘醸地に」というビジョンを掲げて進化し続けるシャトー・メルシャン。今度はどんなワインで消費者を驚かせてくれるのか、楽しみだ。