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毎年11月の第3木曜日に解禁され、ワイン市場に華を添える、ボージョレ・ヌーボー。
今や、季節のイベントの1つとして日本でもすっかり定着しており、解禁日にはさまざまなボージョレ・ヌーボーが市場に出回る。今回は、そのつくり手の中から、アルベール・ビショー(Albert Bichot)を紹介する。
ブルゴーニュの歴史ある名門ネゴシアン
アルベール・ビショーは、フランス・ブルゴーニュ地方のコート・ド・ボーヌ地区に本拠地を置く、1831年創立の歴史ある名門ネゴシアンだ。6世代にわたる家族経営で伝統を受け継ぎ、現当主はアルベリック・ビショー氏が務める。
「ぶどう(その土地の味)」「人(ワインづくりに関わる人々)」「自然環境(環境の永続性)」を尊重することをワインづくりの信念として掲げるアルベール・ビショーは、現在シャブリ地区、コート・ド・ニュイ地区、コート・ド・ボーヌ地区、コート・シャロネーズ地区、ボージョレ地区といった主要産地に計100ha以上の畑と6つのドメーヌを所有している。
その中の1つ、ボージョレ地区の中でも名高いムーラン・ナ・ヴァンの中心地に位置する「ドメーヌ・ド・ロシュグレ」では、理想的な環境でボージョレ・ヌーボーをつくっている。
アルベール・ビショーのワインづくりを統括しているのは、チーフワインメーカーのアラン・セルヴォー氏だ。
セルヴォー氏は、2004年と2017年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(International Wine Challenge:IWC)」において、最高の赤ワインメーカーに贈られる「レッド・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に2度選ばれている実力者だ。さらに、2011年には「ホワイト・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」も受賞している。
ドメーヌごとに個性のある味わい
アルベール・ビショーは、契約栽培農家を「パートナー」と呼び、栽培指導などを行っている。また、6つのドメーヌでは、それぞれの地域の特性を知り尽くしたスペシャリストたちが栽培や醸造を行い、テロワールの個性を生かしたワインづくりをしている。
「自然環境(環境の永続性)」の尊重という信念の通り、ビオロジック栽培にも力を入れており、2012年には認証プロセスを開始した。コート・ドール地区とコート・シャロネーズ地区の自社畑の全てがビオロジックの認証を受けている。
アルベール・ビショーのワインは、ピノ・ノワール100%でつくられるものが多いが、各ドメーヌのテロワールの特徴により、異なる味わいのワインができる。
また、シャブリ地区の「ドメーヌ・ロン・デパキ」は、シャブリのつくり手の中で最も多くグラン・クリュ(特級畑)を所有している。その中でもモノポール(独占所有畑)の「ムトンヌ」のワインは、2.35haの畑から年間1万5000本しか生産されないため、希少性の高いものとなっている。
さらにボージョレ地区では、ボージョレ・ヌーボーに代表される、ガメイを使った赤ワインがつくられている。
各ドメーヌが織り成すワインの違いを楽しめることも、アルベール・ビショーの特徴だ。
ボージョレ・ヌーボー唯一のコンクールで大金賞を受賞
2010年11月には、ボージョレ・ヌーボー唯一のコンクールである「トロフィー・リヨン・ボージョレ・ヌーヴォー(Trophée Lyon Beaujolais Nouveau)」にて、アルベール・ビショーの「ボージョレ・ヌーヴォー 神の雫ラベル 2010」が、最高賞にあたる「Grande Medaille d’Or(大金賞)」を受賞した。同コンクールでは、360品のうち、大金賞を獲得したのは8品のみだった。
「ボージョレ・ヌーヴォー 神の雫ラベル 2010」は、樹齢25年以上のぶどうのみからつくられている。同ワインは、ワインを題材とした漫画『神の雫』(講談社)とコラボレーションしたアートラベルを使用したことも話題になった。
アルベール・ビショーのおすすめワイン
アルベール・ビショー ボージョレ・ヌーヴォー 2021
ストロベリー、ラズベリーを思わせる、華やかで芳醇な香りと爽やかな酸味、エレガントな味わいが特徴。
アルベール・ビショー マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー 2021
シャルドネを100%使用した白ワイン。洋ナシやアプリコットを思わせるフルーティーな香りと、軽やかな味わいが楽しめる。
ドメーヌ・デュ・パヴィヨン コルトン・グラン・クリュ クロ・デ・マレショード
コート・ド・ボーヌ地区のドメーヌ・デュ・パヴィヨンが単独所有するコルトン・グラン・クリュ、「クロ・デ・マレショード」。1950年代の初めに植えられた樹から採れたぶどうのみを使用している。ラズベリーのような豊かな果実香に、熟したタンニン、パワフルながら繊細さも感じられる。