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毎年11月の第3木曜日に解禁され、ワイン市場に華を添える、ボージョレ・ヌーボー。
今や、季節のイベントの1つとして日本でもすっかり定着しており、解禁日にはさまざまなボージョレ・ヌーボーが市場に出回る。今回は、そのつくり手の中から、ルイ・ジャド(Louis Jadot)を紹介する。
大規模ドメーヌでもある名門ネゴシアン
ブルゴーニュ有数のネゴシアンであるルイ・ジャド。1859年にルイ・アンリ・ドゥニ・ジャド氏が、ワイン産業の中心地であるボーヌに創設した。
ジャド家は由緒あるぶどう栽培家だが、同社設立後はネゴシアン業も開始し、とりわけ北ヨーロッパやアメリカ、イギリス市場の開拓に力を入れるようになる。
1962年にルイ・オーギュスト・ジャド氏が急逝し、その後任としてアンドレ・ガジェ氏が会社を託された。1992年にはガジェ氏の息子、ピエール・アンリ・ガジェ氏が社長に就任し、現在も運営している。
ルイ・ジャドは、名門ネゴシアンというだけではなく、コート・ドゥ・ニュイ地区、コート・ドゥ・ボーヌ地区、マコネ地区、ボージョレ地区など、ブルゴーニュ地方の各所にぶどう畑を所有する大規模ドメーヌでもある。
ブルゴーニュでは最大となる約240haの自社畑を持ち、そのほとんどが特級畑のグラン・クリュか、1級畑のプルミエ・クリュだ。
全てのテロワールを尊重
ルイ・ジャドのワインのラベルには、創設以来、ローマ神話の酒神バッカスが描かれている。
これは、「全てのテロワールを尊重する」という同社の信念を表したもので、同社はグラン・クリュでもAOCブルゴーニュでも、同等の価値と熱意を持ってワインを生産している。
1970年から40年以上にわたってルイ・ジャドに関わってきた醸造責任者のジャック・ラルディエール氏は、テロワールの個性を最大限に引き出すことをポリシーにワインづくりに取り組んできた。現在は、ラルディエール氏に師事していたフレデリック・バルニエ氏が醸造責任者を務めている。ルイ・ジャドは、サステナブルな取り組みとして約20年以上前から化学肥料や農薬の使用をやめ、2019年にはHVE(環境価値重視認定)の最高位となる、レベル3を取得した。さらにボーヌ周辺の一部では、ビオディナミ農法も取り入れており、長年にわたりテロワールを維持していくことに情熱を注いでいる。
1997年にボーヌに設立したラ・サブリエール醸造所では、最先端の設備を備えながらも、醸造には可能な限り手を加えず、天然酵母を使用して自然発酵に任せるなど、伝統的な製法を用いて、あくまでも「自然にテロワールを表現する」ことにこだわっている。2021年には、アメリカのワイン専門誌『ワイン&スピリッツ(Wine & Spirits)』のTOPワイナリー100に選出された。
ラ・サブリエール醸造所以外にも、コート・シャロネーズや、シャブリ、ボージョレにも醸造所を持っており、ブルゴーニュ各地で高品質なワインをつくり続けている。
ヌーボーづくりに見せるこだわり
ルイ・ジャドは、ボージョレ・ヌーボーに使用するガメイ種を収獲する村を限定し、AOCではワンランク上に格付けされるボージョレ・ヴィラージュのプリムール(ヌーボーと同様、新酒を指す)を生産している。
要望があった数量だけを少量つくり、大量生産はしない。テロワールを尊重しているルイ・ジャドならではのこだわりだ。
同社のヌーボーは、自然発生した二酸化炭素を利用する「セミ・カーボニック・マセレーション」という方法で醸造される。発酵開始温度を比較的高めにし、タンクに置く時間も長めにして二酸化炭素環境下に置くことで、ガメイ種独自の色や特徴的な香り、深い味わいを存分に引き出すことができる。こうして、フレッシュでありながらリッチでコクのある独自のヌーボーが出来上がるのだ。
ルイ・ジャドのおすすめワイン
ルイ・ジャド・ボージョレ・ヴィラージュ プリムール 2021
ルイ・ジャドならではの、ヌーボーの少量生産へのこだわりと特別な醸造法で、ガメイ種が持つ色や香りなどの個性を引き出した。ヌーボーでありながら、しっかりとした骨格とボディ、深い味わいを持つ。
ルイ・ジャド・ブルゴーニュ・シャルドネ
上質なシャルドネの味わいを堪能できる、ルイ・ジャドのスタンダード白ワイン。ステンレスタンク熟成による新鮮な果実味と、樽熟成によるまろやかさが調和した中に、心地良い酸味が加わる。
ルイ・ジャド ジュヴレ・シャンベルタン
深みのある色合いと、数種のベリー系果実が合わさった複雑な香り、しっかりとしたタンニンとリッチさが特徴の、フルボディの赤ワイン。その力強い味わいから、“ブルゴーニュワインの王様”と言われている。
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