コラム

ブルゴーニュの至宝、ルロワ【ボージョレのつくり手】

毎年11月の第3木曜日に解禁され、ワイン市場に華を添える、ボージョレ・ヌーボー。

今や、季節のイベントの1つとして日本でもすっかり定着しており、解禁日にはさまざまなボージョレ・ヌーボーが市場に出回る。今回は、そのつくり手の中から、ルロワ(LEROY)を紹介する。

ネゴシアンとドメーヌの両方で“一流”に

“ブルゴーニュの至宝”と評されるほど、ブルゴーニュ地方の名門として名高いルロワ。

初代のフランソワ・ルロワ氏は、白ワインの銘醸地として有名なムルソーに隣接するオーセイ・デュレスに、1868年にネゴシアンであるメゾン・ルロワを設立した。その跡を継いだ息子ジョセフ・ルロワ氏と妻のルイーズ・カテリー氏は、ネゴシアン業を拡大させていった。

1919年から加わった3代目のアンリ・ルロワ氏は、輸出業などで事業を多様化し、さらに発展させていく。1942年には、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の株式を取得。友人のエドモンド・ゴーダン・ド・ヴィレーヌ氏と共同経営を行い、フィロキセラの被害に遭ったDRCを再建した。

現在は、アンリ氏の娘であるラルー・ビーズ・ルロワ氏が当主を務める。同氏はメゾン・ルロワとDRCの経営を引き継いだが、買い付けるワインの質に納得のいくものが少なくなっていると感じていた。そこで、1988年にドメーヌ・ルロワを設立。メゾン・ルロワでのネゴシアン事業だけでなく、自身のドメーヌを持つことで、ぶどう栽培からワインづくりに携わるようになった。今では約21haもの自社畑を持ち、9つのグラン・クリュ(特級畑)を所有している。

1992年にはDRCの共同経営から退き、メゾン・ルロワとドメーヌ・ルロワに専念することに。業界から“マダム・ルロワ”として一目置かれ、ワインづくりへの並々ならぬこだわりと才能によって、両社の名声をさらに高めていった。その結果、ブルゴーニュ地方でDRCとも肩を並べるほどの“一流”の評価を得るまでになった。

メゾン・ルロワとドメーヌ・ルロワのワイン

ルロワのワインは、メゾン・ルロワとドメーヌ・ルロワの2種類に分かれる。

白いキャップが目印のメゾン・ルロワのワインは、マダム・ルロワがグラン・クリュからAOCブルゴーニュまで、幅広い契約農家から買い付けている。試飲して納得したクオリティのワインのみをルロワのセラーで熟成させ、飲み頃のタイミングで出荷する。バックヴィンテージは約200万本と、ブルゴーニュワイン最大規模だ。

飲み頃まで熟成させるため、深い味わいを楽しむトラディショナルなスタイルが特徴だ。また、希少性から価格が高くなるドメーヌ・ルロワのワインより、メゾン・ルロワの方が手頃な価格設定になっている。

一方、赤と黄色のキャップが目印のドメーヌ・ルロワのワインは、全て自社畑でぶどうを栽培し、収穫、醸造、瓶詰めまで行う。清澄やろ過をしないため色調が濃く、フルーティーでありながら、しっかりとした骨格を感じるのが特徴だ。

マダム・ルロワは、人間と同じように、土壌、敷地、植物、動物などあらゆるものが生きているという信念の下、ドメーヌ設立後すぐに、化学肥料や除草剤、殺虫剤、農薬の使用を中止。ブルゴーニュではいち早く、ビオディナミ農法を導入した。天体の動きに合わせて農作業をし、土壌を根本的に改良してテロワールの個性を存分に引き出すことに成功している。

低収量にもこだわり、ぶどうの質を厳選しているため、最高品質のワインを生み出すことができるのだ。

ルロワを超一流へと導いた、マダム・ルロワの才能とは

マダム・ルロワは、ブルゴーニュ随一とも評される、天才的なテイスティング能力の持ち主でもある。

テロワールの特徴を的確に捉えられるその実力は、ワイン評論家のロバート・パーカー氏が、ルロワのワイン3本に同時に100点を付けたエピソードからもうかがえる。

1日に50~100種のテイスティングを行っているというマダム・ルロワ。ボージョレ・ヌーボーにもこだわり、1日30種以上を試飲しているという。

ルロワのワインは全て、その厳しいチェックをクリアした精鋭ばかりだ。

ルロワのおすすめワイン

メゾン・ルロワ ボージョレ ヴィラージュ プリムール 2021

メゾン・ルロワのボージョレ・ヌーボー。「プリムール」とは、ブルゴーニュでは「ヌーボー」と同じ新酒という意味だ。イチゴやカシスのような甘酸っぱい酸味と、濃厚な果実味があふれ、バランスの取れた繊細な味わいになっている。

メゾン・ルロワ ブルゴーニュ・ルージュ

高品質なピノ・ノワールの魅力を存分に引き出した、メゾン・ルロワの赤ワイン。ACブルゴーニュとしては突出したレベルを誇り、マダム・ルロワが「名刺代わり」としている看板ワインだ。凝縮したベリー系の果実味と、きめ細やかなタンニンを感じる味わい。

ドメーヌ・ルロワ コトー・ブルギニヨン・ブラン

ドメーヌ・ルロワの自社畑の若樹から収穫したシャルドネを使用した白ワイン。果実味、酸味、ミネラルが主張しすぎることなく絶妙なバランスで、ルロワならではのエレガントな気品が感じられる。

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About the author /  大江 有起
大江 有起

コピーライター、雑誌の編集者などを色々経てフリーライターに。文章を書くことと、赤玉スイートワインや貴腐ワインのような甘いワインが好きです。 ワインバザールさんにてワインに興味を持ち、一般社団法人日本ソムリエ協会ワイン検定シルバー取得しました