スパークリングワインと言えば、ドンペリニヨンをはじめとするシャンパン(シャンパーニュ)を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、日本でもワインを飲む人が増え、カヴァやスプマンテなど、シャンパン以外のスパークリングワインの存在を知った人も少なくないだろう。そしてシャンパンと同等、あるいはそれ以上の品質を持ち合わせており、シャンパンとは違う魅力を持つカヴァやスプマンテなどのスパークリングワインを目にする機会も増えてきた。
そこで今回は、シャンパンと並び、世界三大スパークリングワインの1つに称されるカヴァ(スペイン語読みでは「カバ」)について紹介する。
そもそもカヴァとは?
世界三大スパークリングワインと称される「シャンパン」「プロセッコ」「カバ」。
その中で、今回紹介するカヴァは、シャンパンと同様に瓶内二次発酵を採用しているスペイン産のスパークリングワインだ。スパークリングワインの中では、シャンパンやプロセッコに次ぐ販売本数を誇り、世界で年間およそ2億5000万本が販売されている。日本ではカヴァとも表記されるが、その名前はワインを熟成させるのに利用していた洞窟を表すカタルーニャ語の「cava」に由来する。
ワイン法で定められた製法と産地は?
先にも記した通り、カヴァはシャンパンと同じく、瓶内で二次発酵する伝統的な製法を用いてつくられる。瓶内二次発酵製法とは、醸造したワインを瓶詰めして糖分と酵母を加えた後、ゆっくりと時間をかけて発酵・熟成させる製法だ。トラディショナル方式やシャンパーニュ方式とも呼ばれ、コストと手間がかかる。
ワイン法によると、カヴァと名乗るためには、製法に加えて種類によって、単一畑のぶどうの使用や瓶内熟成期間など細かく規定されている。
カヴァの規定が定められた当初、生産地の規定はなく、製法で規定されていた。そのためカヴァは、カタルーニャ地方だけでなく、ヴァレンシアやバスクなどスペインのさまざまな地域で生産されてきた。現在では、カヴァと名乗れる指定原産地(D.O.)が指定されており、スペインの7地域の160自治体が含まれているといわれている。中でも、カヴァを代表する生産者のフレシネとコドーニュが拠点を置くバルセロナを含むカタルーニャ地方では、全生産量の90%以上が生産されている。
使用できるぶどう品種はチャレッロ、マカベオなど
カヴァに使用できるぶどう品種は、バルセロナ含むカタルーニャ地方の固有品種を含む9品種が認められている。白ふどうは、チャレッロ、マカベオ(マカブー)、パレリャーダ、シャルドネ、スビラ・パレン(スビラット・パレント、マルバシア)の5品種。黒ぶどうはガルナッチャ(グルナッシュ)、モナストレル、トレパ、ピノ・ノワールの4品種だ。
その中でも、バルセロナ近郊カタルーニャの固有品種であるのチャレッロ、マカベオ、パレリャーダがカヴァの主要品種となっている。マカベオはフルーティーな爽やかさ、チャレッロは力強い酸味、パレリャーダはアロマティックな味わいが特徴だ。
カタルーニャの固有品種を使用したカヴァは、酸味が少ないのでシャンパンよりも飲みやすい半面、土や焼けたゴムのような独特のアロマの香りは好き嫌いが分かれる傾向にある。
バルセロナ近郊で育った歴史
カヴァは、フランス北部シャンパーニュ地方でつくられるシャンパンの流れをくんでいる。シャンパンの製法は17世紀後半に確立されているが、その製法がスペインに伝わったのは、それから2世紀ほどを経た19世紀末のこと。バルセロナ近郊カタルーニャ地方の醸造家ホセ・ラベントス氏がシャンパーニュ地方で製法を学び、帰国後の1872年にその製法を用いてつくったのが、カヴァの始まりだと言われている。
その後、カタルーニャ地方でフィロキセラの被害が発生し、もともと植えてあった赤ワイン用の黒ぶどうが壊滅。これをきっかけにカヴァ用の白ぶどうの栽培を始めたことで、カヴァの生産は飛躍的に発展した。
1959年には、法律で「カヴァ」を称するための規定が定められたのだが、非常に緩い規定だったため、あらゆる製法が認められていた。その後、1972年にスパークリングワインの原産地呼称統制委員会が設立され、シャンパンと同様に最低9カ月間の瓶内二次発酵と熟成を経たものだけをカヴァと認めるという規定に変更された。さらに1986年になると、スペインのEU加盟に伴い、D.O.カヴァの生産地域が指定されることとなった。
現在、カヴァを生産するワイナリーは、350を超える。ぶどうの栽培方法にもこだわりがあり、オーガニック認証を受けているものが増えている。
スパークリングワインとは? シャンパンとの関係性
ここで改めて、スパークリングワインについて説明しよう。スパークリングワインとは、3気圧以上のガス圧のある発泡性のワインの総称。発泡性があれば、産地を問わず、赤ワインも白ワインもロゼワインも含まれる。よって、シャンパンもカヴァも、スパークリングワインに含まれる。
ただし、シャンパンやカヴァには産地や使用するぶどう品種、発酵方法などの細かい規定があり、その規定を満たしたものだけがシャンパンやカヴァと名乗ることができる。近年は、オーガニックスパークリングワインの人気が高い。
シャンパンの定義
シャンパンの名を冠するには細かい規定を満たさなければならないが、最も重要な規定は「フランスのシャンパーニュ地方でつくられたもの」ということだろう。
その他の主要な規定として、瓶内二次発酵方式を用いること、使用できる主なぶどう品種は、白ぶどうのシャルドネ、黒ぶどうのピノ・ノワール、ピノ・ムニエといったことが挙げられる。
スパークリングワインの甘辛度は「ブリュット(Brut)」を含む7段階
スパークリングワインを選んでいる時に「ブリュット(Brut)」という言葉をよく見聞きするのではないだろうか。このブリュットという言葉は、スパークリングワインの甘辛度を示す名称の1つだ。
出荷前にはリキュールを追加するドサージュが行われるのだが、その時に追加されるリキュールの糖度によって、スパークリングワインの甘辛度に違いが出る。甘辛度は、残糖量によって7段階に分かれていて、それぞれの段階の名称は、生産国のほかシャンパンやカヴァなどの差別化されたものによって若干異なる。
なお、カヴァの甘辛度は次のようになっている。
格付けと種類は?
カヴァは、大きく分けて「カヴァ・デ・グアルダ」と「カヴァ・デ・グアルダ・スペリオール」のクラスがある。さらに、上位クラスのカヴァ・デ・グアルダ・スペリオールは、「カヴァ・レセルバ」「カヴァ・グラン・レセルバ」「カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカード」の3つで構成される。
カヴァ・デ・グアルダ【スタンダード】
最低9カ月の瓶内熟成を必要とする、スタンダードなカヴァ。
カヴァ・レセルバ(リゼルヴァ)
最低18カ月の熟成を必要とする。
カヴァ・グラン・レセルバ(リゼルヴァ)
最低30カ月の瓶内熟成を必要とし、ブリュット以下の残糖度の辛口だけが認められている。
カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカード【最高級】
最高峰のカヴァ。2016年に新設された格付け。パラヘ・カリフィカードはグラン・クリュに相当する畑で、現在12の畑しか認定されていない。その最高ランクの畑のぶどうを手摘みし、使用している。最低36カ月の熟成を必要とし、ブリュット以下の残糖度の辛口だけが認められている。
ロゼ
熟成期間に基づいて、ロゼにも上記の格付けが適用される。ただし、ぶどう果皮を漬け込んで色を抽出するセニエ法は認められているが、白ワインに赤ワインを混ぜてロゼをつくることは禁止されている。
おすすめの1本、選び方のポイント
ひと口にカヴァと言ってもたくさんの種類があるため、どれを選べばよいか悩む人は多い。どのような基準で選べばよいか、簡単にポイントを押さえておこう。
押さえておきたい主なポイントは、甘口か辛口か、産地、ぶどう品種、価格帯の4点だ。
まず、自分や一緒に飲む人が甘口と辛口のどちらを好むかを考えよう。基本的に、カヴァはすっきりとした辛口(ブリュット)が多い。ただ、ぶどうの酸味はさほど強くなく、きめ細かい泡で飲みやすいのが特徴だ。
辛口(ブリュット)が苦手な場合は、甘口(セコ)を選んでみよう。甘口(セコ)を選ぶのであれば、食事中に飲むよりも食後のデザートと一緒に楽しむのがおすすめだ。
カヴァを飲み慣れてきたら、産地による味の違いを見極めてみよう。地域が異なるだけで暑さ寒さや乾燥の度合いなど、ぶどう栽培を取り巻く環境が変わってくる。オーガニック栽培かどうかも味の違いを生む要因だろう。
ぶどうの品種や配合によっても酸味や後味が変わってくるため、自分好みのぶどう品種を見つけるのも楽しみのひとつ。使用されているぶどう品種や配合比率をチェックしてみよう。
リーズナブルなスパークリングワインとして知られているカヴァにも、高級なタイプがある。毎日の食事ならリーズナブルなもの、パーティーや記念日には高級なものを選ぶなど、使い分けるのもよいかもしれない。
初心者ならまずこれ。手頃な3本
スペインのワインで最も輸出されているというカヴァ。生産者も多く、日本でもさまざまな種類が販売されているが、ぜひ押さえておきたいおすすめのカヴァを紹介するので選ぶ際の参考にどうぞ。
フレシネ コルドン ネグロ
カヴァの二大生産者の1つ、フレシネが産する「フレシネ コルドン ネグロ」。世界150カ国に輸出され、販売量はスパークリングワイン世界NO.1の販売量を誇る。シトラスやレモンといった爽やかな香りを持ち、非常にバランスのとれた味わい。
種類:白
味わい:辛口
品種:パレリャーダ、マカベオ、サレーロ(チャレロ)
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プロジェクト・クワトロ・カヴァ プレミアム・レゼルヴァ
シャンパーニュを思わせるきめ細かな泡立ちと上品な酸味が漂う優しい飲み口を楽しめるとして、登場以来人気が高いプロジェクト・クワトロ・カヴァ プレミアム・レゼルヴァ。
和洋問わず料理の種類を選ばない、バランスの良い味わいだ。
手間がかかるシャンパーニュ製法を採用し、通常のカヴァにかける熟成期間の1.5倍~2倍をかけて作られていることが特徴。
食の都カタルーニャ地方クロ・モンブランの星付きレストランにもオンリストされるほどの実力である。
存在感ある深みを醸し出す美しいゴールドの色合いに、リンゴの蜜やナッツなどの芳醇で高級感ある香りを楽しめる。
タイプ スパークリングワイン(白)
生産者 ジョセップ・バドリ
原産国/地域名 スペイン/クロ・モンブラン
ブドウ品種 マカベオ40%、チャレッロ40%、パレリャーダ15%、シャルドネ5%
ヴィンテージ 2019年
熟成 2年半~3年
内容量 750ml
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カバ・レッソ ブリュット・ナチュレ マサックス
キレのある辛口のスパークリングワインを楽しみたい方に人気が高いカヴァ ブリュット。
すっきりとした味わいや爽快感を感じられる香りは、フレッシュなレモンやライムの皮、ハーブや青りんごなどクリアでミネラルたっぷりの雰囲気を楽しめる。
グラスに注いだ直後は泡がしっかりと盛り上がり、その後時間が経つにつれ繊細な泡に変わってゆく。変化する口当たりをゆっくり味わってみよう。
清涼感を感じるため、本場スペインでは暑い夏に飲む人が多い。しっかりとした味付けの料理や魚介料理、和食にも合うので食事のおともにおすすめ。
タイプ スパークリングワイン(白)
生産者 マサックス(MASACHS)
原産国/地域名 スペイン/カタルーニャ州ペネデス
ブドウ品種 マカベオ30%、チャレッロ30%、パレリャーダ40%
ヴィンテージ NV
熟成 18カ月以上
内容量 750ml
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ぜいたく気分のときに、高級品のおすすめ3選
コドルニウ アルス・コレクタ ブラン・ド・ブラン
カヴァの二大生産者に数えられるコドルニウが手掛ける。2016年までは最高ランクだった、カヴァ・グラン・レセルバに格付けされている高級カヴァ。
種類:白
味わい:辛口
品種:シャルドネ、チャレッロ、パレリャーダ
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サバルテス カヴァ・ブリュット・ロサド NV
食卓を美しく華やかに彩るだけでなく、満足感ある飲みごたえを求める人に定評があるロゼスパークリング。
イチゴ・チェリー・ザクロ・ラズベリーなど赤い果実の香りが漂い、甘酸っぱくもフレッシュで爽やかなワイン。
唐揚げなど、油を使用した肉や魚の料理との相性もぴったり。良く冷えたグラスで、弾ける泡の爽快感を楽しんでみよう。ホームパーティーを盛り上げるのにひと役買ってくれること間違いなし。
飲み進めるにつれて、ロゼならではのタンニンの優しい味わいが感じられることも魅力だ。
タイプ ロゼスパークリングワイン
生産者 サバルテス
原産国/地域名 スペイン/ペネデス カバ
Spain Penedes D.O. Cava
ブドウ品種 ピノ・ノワール100%
ヴィンテージ NV
熟成 ステンレスタンクで発行、瓶内熟成12カ月以上
内容量 750ml
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ペレ・ベントゥーラ グラン・ヴィンテージ カヴァ・デ・パラヘ・カリフィカード
つくり手のペレ・ベントゥーラは、高級なカヴァをつくることで知られる。このカヴァは、2016年に新設されたカヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードに格付けされている。蜂蜜やナッツのような香り、程よい酸味ときめ細かい泡を特徴とする。
種類:白
味わい:辛口
品種:マカベオ、チャレッロ
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近年までカヴァと言えば、「シャンパンと同じ製法なのに安い」「手頃な価格で飲めるスパークリングワイン」といったイメージが強かった。
しかし、スパークリングワイン市場が高品質やオーガニックを目指す気運となったこともあり、カヴァの生産者も、高品質なものや個性的なものをつくるようになった。さらに、最高格付けのカヴァ・デ・パラヘ・カリフィカードが新設されるなど、今やカヴァは、品質・実力ともに備わったスパークリングワインへと変貌を遂げている。