サントリーワインインターナショナル(SWI)は2022年6月8日、「2022年日本ワイン戦略説明会」を開催した。同年1月の記者会見で発表された事業方針の1つ、「日本ワイン 大刷新」についての詳細が明らかになった。
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説明会には、同社代表取締役社長の吉雄敬子氏、サントリー登美の丘ワイナリーから所長の庄内文雄氏と栽培技師長の大山弘平氏が登壇。日本ワインを含む近年のワイン市場動向、日本ワインの魅力をユーザーに伝えるために打ち出した新コンセプトおよび新ブランド、持続可能なワインづくりなどについて発表があった。その内容について、4回に分けて紹介する。
第1回目となる本記事では、2022年1~5月の同社販売実績と近年のワイン市場動向、国際的なワインコンクールで高い評価を受けた同社の日本ワインについて紹介する。
拡大する国内ワイン市場
2022年1~5月の同社販売実績は、ワイン事業全体では2021年比112%と総市場の101%(推定)を上回っている。背景として、同社の缶入りワイン商品が好調であること、日本ワインが同年比111%(総市場は98%)と健闘していることが挙げられる。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、外出を自粛して「家飲み」する人が増えた結果、家庭用ワインが伸びている。昨今はこうした「巣ごもり需要」は落ち着きを見せたものの、家庭用ワインの中でも、より高価格帯のワインを自分向けに探す人が増加。スティルワインのうち価格帯が1200円以上の「プレミアム」は、コロナ禍前の2019年と比較して2020年が112%、2021年が110%だった。同じく2019年比で、2000円以上の「ファイン」は2020年が114%、2021年が119%となっている(購買データを基にした同社推計値。スティルワインはボージョレ・ヌーボーを除く、国産・輸入ワインを指す)。
日本ワインの可能性
2009年以降、日本ワインの市場は年々拡大している。コロナ禍の影響を大きく受けた2020年、2021年は前年割れしたものの、基本的には右肩上がりで推移しており、同社推計では2012年からの10年間で約1.5倍になっている。
日本ワインの市場拡大の原因の1つに、ワイナリー数の増加が挙げられる。国税庁のデータによると、国内のワイナリーは直近5年で約150軒増えており、2021年には413軒に達した。
着実に成長している日本ワインだが、国内ワイン市場に占めるシェアは現時点で5%に満たない。ぶどうに影響を及ぼす気候変動、高齢化や離農による農業従事者の減少といった課題もある。しかし、逆の見方をすれば、日本ワインは、さらに品質を高めてさまざまな課題に対応していくことで、これから大きく伸びる可能性を秘めていると言える。
サントリーと日本ワインの歩み
サントリーの歴史は、創業者である鳥井信治郎氏が1907年(明治40年)に「赤玉ポートワイン(現・赤玉スイートワイン)」を発売したことに始まる。1936年(昭和11年)、鳥井氏は、マスカット・ベーリーAを生み出した川上善兵衛氏と共に「登美農園」を視察。翌年、同農園を購入して、「寿屋山梨農場(現・サントリー登美の丘ワイナリー)」を開設した。
以来、長きにわたって日本ワインに携わってきた同社のワインは、近年、国際的にも評価が高まっている。「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(International Wine Challenge:IWC) 2019」では、「登美 赤 2014」が2013年ヴィンテージに続いて2年連続で金賞を受賞。「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA) 2019」では、「登美の丘 甲州 2017」がプラチナ賞を獲得している。
最新の受賞情報
直近では、DWWA 2022において、「サントリージャパンプレミアム 甲州 2019」が金賞を受賞した。同ワインは上品な和かんきつの香りと繊細な味わいを特徴とし、だしを生かしたうま味のある和食と相性が良いそうだ。
次の記事では、日本ワインの魅力を伝えるために同社が掲げる新コンセプトや、ワインづくりの現場である登美の丘ワイナリーの刷新などについて紹介する。