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フランスやイタリアと並ぶワイン産地として知られる、スペイン。ぶどうの栽培面積は世界トップクラスを誇り、良質なワインが数多く生み出されている。
今回は、世界的に有名なサッカー選手アンドレス・イニエスタ氏が所有する、ボデガ・イニエスタ(Bodega Iniesta)の特色や名産ワインについて紹介する。
アンドレス・イニエスタってどんな人?
イニエスタ氏は、サッカーのみならず、自身のワイナリーを所有し、世界中で人気のワインを生産していることでも名高い。日本では、2011年のファーストリリースより輸入が開始され、赤、白、スパークリングワインが販売されている。
サッカー界のスーパースターとして活躍
イニエスタ氏は、スペインのカスティーリャ・ラ・マンチャ州の出身だ。2002~2018年の17年間にわたり、スペインの強豪FCバルセロナに所属。ラ・リーガ優勝を9回、UEFAチャンピオンズリーグ優勝を4回経験し、合計で35のタイトルを獲得した。また、2006~2018年には、数々の世界大会でスペイン代表に選出されている。2010年のW杯では決勝戦で決勝ゴールを決め、スペインの初優勝に貢献した。
2018年にFCバルセロナを退団後、日本のヴィッセル神戸に移籍し、大きなニュースとなったことは記憶に新しい。そして、2022年現在に至るまで、ヴィッセル神戸でプレーしている。
ワイナリーのオーナーとしての顔
このような輝かしい経歴を持つイニエスタ氏のもう1つの顔が、ワイナリーのオーナーだ。イニエスタ氏の両親の一族が、代々ぶどうを栽培していたため、幼少期から「いつか一族の畑のぶどうを使ったワインを生産したい」という思いを抱いていた。2000年頃よりプロジェクトを本格的に開始し、ついに2011年、ボデガ・イニエスタのファーストヴィンテージをリリースした。
ボデガ・イニエスタの特色とは
ボデガ・イニエスタには、イニエスタ氏自身のこだわりから生まれる特色がいくつもあり、それらが世界中で人気を集める名産ワインの生産につながっている。ここでは、ボデガ・イニエスタの特色について紹介する。
地理的特徴
ボデガ・イニエスタは、イニエスタ氏の出身地であるスペインのカスティーリャ・ラ・マンチャ州マンチュエラ地方フエンテアルビージャ村にある。乾燥した地域と、温暖なスペイン東部の地中海沿岸地域のちょうど中間にあるため、ぶどうは両方の影響を受けて育つ。
■フエンテアルビージャ村の気候
平均年間気温:12~16℃
平均年間雨量:400~600ミリ
平均年間日照時間:2800時間
ぶどうの品種と栽培方法
ボデガ・イニエスタのぶどう畑は、イニエスタの一族が代々所有していたものに加え、新たに取得した畑とワイナリーで管理している借地の畑がある。全て含めると、約300haもの面積になる。区画を分けて均一化しつつ、畑ごとの土壌を研究し、最適となるぶどうの品種を選定してぶどうの樹を植え、畑を構築していくことで、効率良く管理しやすいよう環境を整備している。
ぶどうの栽培では、化学肥料や殺虫剤を一切使用せず、全て植物由来の有機肥料を使用していることが最大の特色だ。風通しと日照を重視し、病害を防いでいる。
ボデガ・イニエスタのぶどうの樹の中で、最も長寿なのが1930年代のボバルだ。 “自然の尊重”を大前提とした生産活動によってバイオダイバーシティを守ることを目標としており、既に一部のぶどう畑はEUの有機栽培認証を取得している。
ぶどう畑の土壌は、新生代の白亜質(主に石灰石)と、礫岩、粘土、石こう、マールなどから成る堆積土壌であり、これはマンチュエラ地方の典型的な土壌だ。栽培している主なぶどう品種は、スペイン固有種のテンプラニーリョ、グラシアーノ、マカベオ、ベルデホなどのほか、国際品種のシラー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどがある。
ワインづくりの特徴
ぶどう畑だけでなく、ワイン醸造においても自然への敬意と尊重を忘れていない。除梗、破砕時には、粒上のドライアイスを混ぜて行うボレアル・システムを採用。この方法により、酸化を防止し、各ぶどう品種の特徴や味わいをそのまま表現する。
設備においても、シャルマ方式の醸造設備、可動式攪拌(かくはん)機などを導入し、技術的な品質向上への模索が常日ごろから行われている。また、専門のコンサルタントと契約したり、市場動向を見据えたボトリングを行ったりと、ワインを最も良い状態で出荷することへのこだわりが随所に垣間見える。技術チームとイニエスタ一族が、ぶどうづくりから出荷に至るまで全ての工程を統括することで、ボデガ・イニエスタのワイナリーとしての魅力がより引き上げられているといえるだろう。
地域貢献としての側面
ボデガ・イニエスタは、地域貢献にも寄与し、賞賛を得ている。敷地内にはワイナリーやぶどう畑だけでなく、レストランや宿泊施設も完備しており、「エノツーリズム」と呼ばれるワインと美食をメインに据えた観光ツアーへの観光客誘致に成功している。
また、地元の失業者をワイナリーのスタッフとして雇用することもある。これらは、イニエスタ氏の故郷を大切に思う気持ちから行われている活動で、彼自身の人柄のよさもあり、世界中からボデガ・イニエスタを訪れる人は後を絶たない。
ボデガ・イニエスタの名産ワイン
ボデガ・イニエスタでは、赤、白、スパークリングワインが生産されている。その中でも、特に人気のある代表的なものを紹介しよう。
ボデガ・イニエスタ コラソン・ロコ セレクション
「熱狂的な心」の意味を持つ「コラソン・ロコ」の名を冠したこのシリーズは、ボデガ・イニエスタの代表的なシリーズだ。その中の1つ、「イニエスタ コラソン・ロコ セレクション」は、新樽のみを使用し、12カ月間熟成させてから出荷されるプレミアムクラスのワイン。フルボディならではの、しっかりとしたタンニンの味わいが感じられ、各種ぶどうが織り成す香りは重厚そのもの。また、2013年ヴィンテージは「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards)2018」で金賞を受賞している1本でもある。
ぶどう品種:テンプラニーリョ 40%、シラー 30%、プティ・ヴェルド 20%、カベルネ・ソーヴィニヨン 10%
味わい:赤・フルボディ
料理との相性:グリル、煮込み、ジビエなどの肉料理全般。また、熟成チーズとの相性もよい
ボデガ・イニエスタ ミヌートス116 ブランコ
イニエスタ氏が2010年W杯の決勝戦で決勝ゴールを決めたのが、試合開始から116分だった。それを記念してつくられたのが、「ミヌートス116」シリーズ。白ワインの「イニエスタ ミヌートス116 ブランコ」は、輝きを感じられる麦わら色、辛口ながらも酸味は適度で、爽快な後味が長く感じられる。キャップがスクリュー仕様なので、気軽に飲みやすいのも特徴。
ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン 34%、ベルデホ 33%、モスカテル(ミュスカ) 33%
味わい:白・辛口
料理との相性:魚介料理全般によく合い、パスタや鶏肉サラダにもおすすめ
ボデガ・イニエスタ・コラソン・スプマンテ
ボデガ・イニエスタのスパークリングワインは、いずれも「コラソン・スプマンテ」の名を冠して販売している。辛口の白は、18℃で徹底管理したステンレスタンクで7日間アルコール発酵させ、シャルマ方式で醸造・ボトリングしている。色合いは淡いゴールドで、かんきつ類のフルーティーな香りと、すっきりとした後味が楽しめる。他に、ロゼや甘口の白のスパークリングワインも生産している。
ぶどう品種:マカベオ100%
味わい:スパークリングワイン・辛口
料理との相性:カキ、ホタテなどのフレッシュシーフード、食後のフルーツ、マチェドニア(フルーツの白ワインシロップ漬け)などによく合う