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メドックワイン委員会は2022年11月2日、八芳園(東京都港区)にて、「メドックワイン マスタークラス2022」を開催した。
講師を務めたのは、日本ソムリエ協会理事で、同協会認定ソムリエ・エクセレンスの米野真理子氏。米野氏から、フランスのワイン生産地として知られるメドックの歴史やテロワール、格付け、環境保護への取り組みなどについて解説があった。
クラス後半では、メドック地区全8アペラシオンのワイナリーから寄せられた、2019年と2010年代のワインのテイスティングも実施された。
4回目となる今回の記事では、メドックの8つのアペラシオンのうち、ジロンド川の河口に沿ったAOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)で、“4つの偉大な村”と呼ばれるサン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーを紹介する。
4つの偉大な村
ジロンド川の河口に沿って位置する、サン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴー。これら4つの村名AOCは、“4つの偉大な村”と呼ばれる。
それぞれ特徴的なテロワールを有するが、4地域の共通点として、河口の水塊から保護効果を受けられること、カベルネ・ソーヴィニヨンに適した温かい砂利質の土壌であることが挙げられる。
村名AOC:サン・テステフ(Saint-Estèphe)
サン・テステフでは、コクと深みがある力強いワインが生産される。土壌は、ガロンヌ川の砂利と、一部下層にポムロール地区で見られる青っぽい粘土質を持つところがある。年間生産量はメドック全体の8%を占める。
<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 43%
カベルネ・ソーヴィニヨン 49%
プティ・ヴェルド 3%
カベルネ・フラン 4%
村名AOC:ポイヤック(Pauillac)
ポイヤックの土壌は水はけの良い砂利質で、素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンが育つため、しっかりしたボディのエレガントなワインが生まれる。メドックの8つのアペラシオンの中で、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培比率が63%と最も高い。
ポイヤックの年間生産量はメドック全体の7%で、そのうちの86%を、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・ラトゥールなどの第1級を含む格付けシャトーが生産している。
<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 32%
カベルネ・ソーヴィニヨン 63%
プティ・ヴェルド 2%
カベルネ・フラン 4%
村名AOC:サン・ジュリアン(Saint-Julien)
繊細な香りを持つ、味わい深いワインを産するサン・ジュリアン。テロワールは均質で、土壌はガロンヌ川の大きめの砂利に覆われている。ポイヤックと同様に、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高く、61%を占める。
年間生産量はメドック全体の6%で、その90%を格付けシャトーが生産している。
<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 32%
カベルネ・ソーヴィニヨン 61%
プティ・ヴェルド 4%
カベルネ・フラン 3%
村名AOC:マルゴー(Margaux)
4つの村名AOCの中では最も南に位置する。栽培面積が1500haと、格付けシャトーがある4つの村名AOCの中で最も広い。5つのコミューン(村)で構成されていることもあり、テロワールは均質ではない。年間生産量はメドック全体の9%となっている。
第1級のシャトー・マルゴーを含めて格付けシャトーが21あり、最多数を誇る。甘美なアロマの繊細なワインを生産している。
<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 39%
カベルネ・ソーヴィニヨン 54%
プティ・ヴェルド 4%
カベルネ・フラン 3%
次回以降の記事では、メドック8つのアペラシオンから寄せられたワインを、米野氏のテイスティングコメントと併せて紹介する。
【メドックワイン マスタークラス2022】
①主要ワイン産地メドックの歴史と多様なテロワール
②主要ワイン産地メドック3つの公式格付け
③メドック8つのアペラシオンから地域名AOCと西側の村名AOCを紹介