コラム

メドックワイン マスタークラス2022:③メドック8つのアペラシオンから地域名AOCと西側の村名AOCを紹介

メドックワイン委員会は2022年11月2日、八芳園(東京都港区)にて、「メドックワイン マスタークラス2022」を開催した。

講師を務めたのは、日本ソムリエ協会理事で、同協会認定ソムリエ・エクセレンスの米野真理子氏。米野氏から、フランスのワイン生産地として知られるメドックの歴史やテロワール、格付け、環境保護への取り組みなどについて解説があった。

クラス後半では、メドック地区全8アペラシオンのワイナリーから寄せられた、2019年と2010年代のワインのテイスティングも実施された。

3回目となる今回の記事では、メドックの8つのアペラシオンのうち、地域名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)であるメドックとオー・メドック、西側の村名AOCであるリストラックとムーリスの4つを紹介する。

メドックの8つのアペラシオン

メドックには、2つの地域名AOCと6つの村名AOC、合わせて8つのアペラシオンがある。

【地域名AOC】
メドック/オー・メドック

【村名AOC】
リストラック/ムーリス/サン・テステフ/ポイヤック/サン・ジュリアン/マルゴー

地域名AOC:メドック(Médoc)

メドック地区の8アペラシオンのうち、最も北にある最大のAOC。5500ha以上のぶどう畑がある。西に約20kmの位置に大西洋があり、ジロンド川の河口まで約15kmと水辺に囲まれた地域だ。年間生産量は3600万本で、メドック全体の35%を占める。また、生産量の4分の1を協同組合が生産している。

メドックAOCには、ガロンヌ川の砂利やピレネー山脈の砂利、粘土、石灰質などさまざまな種類の土壌がある。そのため、色が濃く、コクがあって熟成に向いているワインや若いうちから楽しめる繊細なワインなど、多様なワインが生まれる。

<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 55%
カベルネ・ソーヴィニヨン 40%
プティ・ヴェルド 3%
カベルネ・フラン 2%

地域名AOC:オー・メドック(Haut-Médoc)

オー・メドックは北から南まで約60kmの範囲に広がり、その広大な範囲の中に6つの村名AOCが点在する。縦に長いことから、さまざまなテロワールを持ち、多様なワインを産出している。年間生産量はメドック全体の29%で、3000万本となる。

オー・メドックのワインは、年を経るごとに心地良い香りになっていく。また、コクがありつつもパワフル過ぎることはない。数年前からメルローが主流となっている。

<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 50%
カベルネ・ソーヴィニヨン 44%
プティ・ヴェルド 4%
カベルネ・フラン 3%

村名AOC:リストラック(Listrac)

標高が約45mとメドックで最も高いことから、“メドックの屋根”と呼ばれる。粘土質と石灰質の土壌をピレネー山脈の砂利が覆っており、メルローの栽培に適している。8つのアペラシオンの中で、最もメルローの栽培割合が多い。年間生産量はメドック全体の2%ほど。

<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 65%
カベルネ・ソーヴィニヨン 31%
プティ・ヴェルド 4%
カベルネ・フラン 1%

村名AOC:ムーリス(Moulis)

ムーリスは、リストラックのすぐ下(南)に位置する。栽培面積は610haで、メドックで最も小さいAOCだ。年間生産量はメドック全体の4%となっている。

ムーリスの中でも西側は冷たい土壌で、大部分がピレネー山脈の砂利。下土が粘土質と石灰質という土壌のため、リストラックと同様に、メルローが主体となる。

東側はガロンヌ川の砂利が含まれており、カベルネ・ソーヴィニヨンに適した土壌。この辺りは、カベルネ・ソーヴィニヨンの発祥の地と言われている。

<ぶどう栽培の構成比>
メルロー 52%
カベルネ・ソーヴィニヨン 40%
プティ・ヴェルド 4%
カベルネ・フラン 4%

次回の記事では、ジロンド川沿いのAOCで“4つの偉大な村”と呼ばれる、サン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアン、マルゴーを紹介する。

【メドックワイン マスタークラス2022】
①主要ワイン産地メドックの歴史と多様なテロワール
②主要ワイン産地メドック3つの公式格付け

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