コラム

日本酒酵母を使用したワインも! ヴィニャ・マーティのプレミアムワインを紹介 ~「92+チリワイン グランド・テイスティング」レポート③

Wines of Chileが主催し、2023年7月11日にザ ストリングス 表参道(東京都港区)で開催された「92+チリワイン グランド・テイスティング」。ワイン業界の関係者に向けて、世界的に注目度の高いプレミアム・チリワイン、特に国際的なワイン品評会などで92点以上の評価を受けたワインのみが出品された。

今回は、数々の最高峰ワインを手掛けた醸造家がチリに設立した、ヴィニャ・マーティ(Viña Marty)のプレミアムワインを紹介する。

ヴィニャ・マーティとは

ヴィニャ・マーティは、フランス・ボルドーの5大シャトーの1つであるシャトー・ムートン・ロートシルト(ロスチャイルド)やアメリカ・カリフォルニアワインの最高峰オーパス・ワン、チリのアルマヴィーヴァ・プロジェクトなどでエノロゴ(醸造家)を務めた、パスカル・マーティ氏が2008年に設立したワイナリーだ。

もともとはディオニソス・ワインズという名だったが、2013年に自身の名を冠したヴィニャ・マーティに変更。現在は、マウレ・バレー、コルチャグア・バレー、カチャポアル・バレー、アコンカグア・バレー、レイダ・バレー(サン・アントニオ・バレーのサブ・リージョン)、そしてマイポ・バレーでも上位に位置するアルト・マイポにヴィンヤードを展開している。

アルマヴィーヴァ・プロジェクトでチリの可能性を知ったマーティ氏は、畑ごとのテロワールを把握した上で、栽培から醸造まで一貫して監修・管理。オーナー兼醸造家として、今まで積み上げてきた経験と情熱を費やし、高いクオリティのプレミアムワインを生み出している。

ヴィニャ・マーティの92+プレミアムワイン

ヴィニャ・マーティが出品していた、プレミアムワインを見ていこう。

ぎんの雫 グット・ダルジャン・シリーズ

日本酒の酵母を使用したワイン。品種らしさと濃厚なうま味が特徴のシリーズで、幅広いペアリングが楽しめる。

低温で発酵することによって、ぶどうのアロマを保ちながら醸造できるのではないかという構想を持っていたマーティン氏だが、ワイン酵母は12℃以下では発酵できないという壁があった。しかし、日本酒酵母なら5℃以下でも発酵できることを知る。

この構想に協力したのが、「獺祭(だっさい)」の生みの親である旭酒造の桜井博志氏だ。7号酵母(通称:真澄酵母)を使用して、低温で発酵させたワインが実現した。ワイン名やラベルは、漫画『神の雫』の原作者である亜樹直氏が手掛けている。

ゆっくり発酵させることで、白なら10~20日という発酵期間が、120日以上にまで長くなった。赤は通常2~3週間の発酵期間がおよそ40日間となっている。発酵期間が長くなると酵母の世代交代が起こり、酵母由来のアミノ酸がより含まれたうま味の強いワインになったという。さらにシュール・リーにて熟成させており、ぶどうのうま味が詰まったワインが完成した。

●ぎんの雫 グット・ダルジャン ソーヴィニョン・ブラン2022

2019年に、第1弾としてリリースされたのが「ソーヴィニョン・ブラン」だ。ファースト・ヴィンテージは、チリのワインガイド『デスコルチャドス(Descorchados)』で94点を獲得。酵母を提供したことから日本限定発売となったが、世界からの注目を集める結果となった。

おすすめのペアリングに羊肉が挙げられているという、これまでのソーヴィニヨン・ブランとはまた違う魅力が感じられるワインだ。

ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン
生産地:レイダ・バレー
タイプ・味わい:白・辛口
参考上代:3850円(税別)

●ぎんの雫 グット・ダルジャン シャルドネ2022

第2弾となった「シャルドネ」には、9号酵母(通称:熊本酵母)も使用し、複雑な味わいに仕上げている。日本酒を飲む感覚でペアリングができ、デザートにも合わせられる万能な1本だ。

ぶどう品種:シャルドネ
生産地:レイダ・バレー
タイプ・味わい:白・辛口
参考上代:3850円(税別)

●ぎんの雫 グット・ダルジャン ピノ・ノワール2022

2023年4月に初リリースとなった「ピノ・ノワール」だが、日本に入ってくるのは1000本のみ。輸入元が直営している「ワインショップソムリエ」の実店舗(六本木店)のみで販売する貴重なワインだ。数量限定のため、「完売の場合は、ご容赦ください」とのこと。

ライトボディでアペタイザーや白身魚、チキンなどに合わせやすい味わいだ。

ぶどう品種:ピノ・ノワール
生産地:レイダ・バレー
タイプ・味わい:赤・ミディアムボディ
参考上代:3850円(税別)

マリポーザ・アレグレ グラン・リゼルヴァ カベルネ・ソーヴィニヨン 2019

高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出す産地のぶどうを使用し、品種の特徴を引き出したワイン。手摘みで収穫し、選りすぐった果実をステンレスタンクで醸造する。伝統的な醸しから発酵までを行い、新樽を使わずに8カ月間フレンチオーク樽で熟成させている。滑らかなタンニン、果実の凝縮感のバランスが楽しめる。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
生産地:コルチャグア・バレー
タイプ・味わい:赤・フルボディ
参考上代:3080円(税別)

カラク 2019

ヴィニャ・マーティのアイコンワイン「クロ・デ・ファ」のセカンドラベルに当たるワイン。「クロ・デ・ファ」として熟成までさせたものの、ブレンドの時点でわずかな品質の差によりはじかれた樽を使用している。「クロ・デ・ファ」と同じ畑、チーム、つくり方のワインが、3分の1ほどの価格で楽しめるとして人気が高い。

ステンレスタンクを使用して、24~26℃で30日間かけてアルコール発酵したものを、フレンチオーク樽(新樽50%)で18~24カ月間熟成させている。マーティン氏がボルドーで培った技術と経験で、チリのテロワールを表現した1本。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン45%、カルメネール35%、シラー20%
生産地:ラペル・バレー
タイプ・味わい:赤・フルボディ
参考上代:6600円(税別)

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ