コラム

つくり手が語る! カリフォルニア・ソノマのケンウッド・ヴィンヤーズが受け継ぐレガシーとは ~「THE WINE SHOW by Pernod Ricard Japan」レポート③

ペルノ・リカール・ジャパンは2023年11月21日、東京都渋谷区のTRUNK by Shoto Galleryで、同社が日本国内で販売するワインブランドを一堂に集めた「THE WINE SHOW by Pernod Ricard Japan」を開催した。

また、ワインメーカーが登壇するマスタークラスを同時に開催。今回は、ケンウッド・ヴィンヤーズ(Kenwood Vineyards)のワインメーカー、マーク・ビーマン氏が講師を務めたマスタークラスの内容を紹介する。

ケンウッド・ヴィンヤーズは、アメリカ・カリフォルニアを代表するプレミアムワインの産地ソノマで、禁酒法を乗り越えてワインづくりを続けている歴史あるワイナリーだ。

登壇者:マーク・ビーマン氏(ヘッド・ワインメーカー)

ケンウッド・ヴィンヤーズのヘッド・ワインメーカー、マーク・ビーマン氏

マスタークラスで登壇したのは、ケンウッド・ヴィンヤーズでヘッド・ワインメーカーを務めるマーク・ビーマン氏だ。今回が初めての来日となった。

4代にわたる農家の家系で育ったバックグラウンドと、科学への愛を持つワインメーカーだ。大学で環境学と地質学を専攻した後に、アフリカのタンザニアで環境学の講師として従事。2000年に帰国した時には、アメリカではワイン産業が大きく成長している最中で、ビーマン氏はワシントンのワイナリーを皮切りに国内の各地でワインづくりに携わる。2020年からソノマのセバスチャーニ・ヴィンヤーズ・アンド・ワイナリー(Sebastiani Vineyards & Winery)でワインメーカーを務めた後、2023年6月にケンウッド・ヴィンヤーズのヘッド・ワインメーカーに就任した。

ケンウッド・ヴィンヤーズの歴史

ケンウッド・ヴィンヤーズの歴史は、1906年にイタリア出身のパガニ兄弟が設立したワイナリーに始まる。当時は、ジンファンデルを生産してボトリング、販売していた。1920~1933年の禁酒法の時代には99%のワイナリーが廃業に追い込まれ、その後も再開することはなかったが、ケンウッド・ヴィンヤーズは1970年に新しいオーナーがワイナリーを購入。名前をケンウッド・ヴィンヤーズに改名し、ソノマの中でより良い立地にワイナリーを移して、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのワイン生産をスタートさせた。

大きな転機となったのは、1976年にアメリカの有名作家ジャック・ロンドンが所有していたヴィンヤードのぶどうを使用する権利を得たことだ。そこでしかできないワインづくりが可能となり、どんどん品質は向上していった。

ジャック・ロンドンが残した畑

ジャック・ロンドンは、動物が主人公の小説や冒険小説など数々の名作を残した、アメリカ人なら誰でも読んだことがあるというほど著名な小説家だ。冒険を好み、へき地を含む世界各地を訪れた彼が、定住を決めたのがソノマだった。その地に彼が植えたのが、ぶどうとユーカリだ。

彼から受け継いだ畑では、ヴィンヤードの所々に木々が残されている。ジャック・ロンドンが植えたユーカリの木も残っており、ぶどう畑にはミントやメントールの香りが漂い、その要素はワインからもかすかに感じられる。

ここで栽培しているのは、ジンファンデルやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー。標高およそ2400フィート(約730m)と非常に高く、ぶどうの樹にとって厳しい環境だが、濃縮された果実が収穫できる。

ジャック・ロンドンからは、サステナビリティへの強い思いも受け継いでいるとのこと。自然保護に力を注いでおり、自然受粉や有益な昆虫を呼ぶために花を植え、バードボックスの設置や養蜂なども行っている。

ソノマ・カウンティとは

ケンウッド・ヴィンヤーズのあるソノマ・カウンティには、個性的な19のAVA(American Viticultural Area:アメリカ政府承認ぶどう栽培地域)がある。

太平洋と接する長い海岸線があり、冷たい海の影響で冷涼だが、内陸のエリアは温暖だ。ピノ・ノワールやシャルドネは湾岸地帯に多く、内陸は土壌や気候の特性を生かしたパワフルな赤ワインで知られている。

多様な地形のため多様な品種が栽培可能であり、隣接するナパ・バレーとは違った特性を持っている。「多くの人は、カリフォルニアワインと聞くと、ナパ・バレーを思い浮かべるかもしれません。実際に訪問すると、ソノマの方がより条件に恵まれていると感じるでしょう。しかも、ワインの価格は比較的お手頃です」と、ソノマについて語っていた。

今回は、マーク・ビーマン氏がマスタークラスで語った、ケンウッド・ヴィンヤーズの歴史やソノマについてまとめた。次回は、展示していたワインの中から、ジャック・ロンドンの畑(ジャック・ロンドン・ランチ)のぶどうでつくられる「ソノマ・ロンドン」シリーズについて紹介する。

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