コラム

日本らしさが現れたプティ・ヴェルドの魅力――サントリー日本ワイン試飲会⑥

サントリーは2024年9月4日、同社田町オフィス11階のカフェ「HARBOR」(東京都港区)にて、新商品を含む日本ワインの試飲会を開催した。

試飲会では、同社ワイン本部日本ワイン部長の宮下弘至氏、ワイン本部シニアスペシャリストの柳原亮氏が登壇し、産地の異なる甲州ワインの解説とともに、これまでの甲州栽培の取り組みや挑戦について話があった。

シリーズ最後となる第6回の記事では、日本ならではのプティ・ヴェルドと同ぶどうをメインに使用した「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 プティ・ヴェルド 2020」「同 登美 赤 2020」を紹介する。

30年の挑戦が実を結んだ

プティ・ヴェルドはフランス南西部原産の赤ワイン用ぶどうで、ボルドーではブレンド用として栽培されている。このぶどうが持つ色の濃さとタンニンの強さから、ブレンド比率は数%~10%と少なく、アクセントとして使われることが多い。

柳原氏によると、雨が多い日本ではプティ・ヴェルドの特徴が程よく和らいで、赤ワインに高い比率で使用できるという。もちろん多雨だけが理由ではなく、系統ごとの特徴を見極めつつ、土壌や醸造方法、収穫に細かく気を配ることで、初の植え付けから約30年を経て、プティ・ヴェルド100%のワインをつくれるほど品質が向上した。

そのプティ・ヴェルドをメインに使用した赤ワインを2本紹介する。

SUNTORY FROM FARM 登美の丘 プティ・ヴェルド 2020

桑の実やブラックチェリーなど、黒い果実の香りがしっかり感じられる、フルボディの赤ワイン。登美の丘ワイナリーの自園産ぶどうを100%使用し、フレンチオーク樽で熟成している。

◆SUNTORY FROM FARM 登美の丘 プティ・ヴェルド 2020
色、タイプ:赤、フルボディ
産地:山梨県(登美の丘ワイナリー)
ぶどう品種:プティ・ヴェルド(自園産)100%
参考価格:1万5400円(税込)

SUNTORY FROM FARM 登美 赤 2020

「登美 赤」は、同社日本ワインブランドの最高峰「シンボル」シリーズに属する。こちらはプティ・ヴェルドを54%使用し、100%使用したワインとはまた違った凝縮感やきめ細やかな味わいが楽しめる。ブルーベリーや桑の実の香りに、針葉樹、チョコレートなどのニュアンスがあり、フラッグシップワインにふさわしい高品質で上品なワインだ。

◆SUNTORY FROM FARM 登美 赤2020
色、タイプ:赤、フルボディ
産地:山梨県(登美の丘ワイナリー)
ぶどう品種:プティ・ヴェルド54%(自園産)、カベルネ・ソーヴィニヨン46%(同)
参考価格:2万2000円(税込)

「FROM FARM」を体現したエピソード

ワインづくりの志として同社が掲げ、ブランド名にもしている「FROM FARM――すべては畑から」。このコンセプトを同社が実質的に大切にしていると感じたエピソードを最後に紹介したい。

通常、同社の事業戦略説明会や試飲会では、ぶどう栽培や醸造に関わっている担当者が現場での取り組みや畑の様子を解説してくれることが多い。今回の試飲会には現場担当者が出席しておらず、その理由について柳原氏からコメントがあった。

ワインづくりの最盛期であること以外に、試飲会の数日前に発生した大型台風による影響がないか、ぶどう畑を入念に見回る必要があるためだという。「すべては畑から」を有言実行する、つくり手の熱い思いが感じられた。


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